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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第六章 創造主(父)を愛する娘達
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私をお呼びくださるのでしたら

 仰け反りそうになったし、腕を両手で掴まれてちょっと怖かったが、ベルザーはうんうんと頷いた。

 というより、ここで否定すると刺されそうな迫力である。


「欲しい、とっても欲しいです!」


 今度は、切なすぎる声音でねだるエレナである。

 ……おまえつい十秒前に、俺からもらうならなんでもいい的なことを言っただろうにっ――と思わないでもなかったが。


 若い番号を狙うのは、レアアイテム好きのベルザーグとしては理解できる。

 とはいえ、そういうこだわりは自動的に課金地獄の一丁目が約束されるので、本当はお勧めはしないのだが。




「では、二番でいいかな?」

「……え」


 切ない顔から、今度はどっと暗くなった。

 中の人である一郎ですら、「むう……トップナンバーは手元に温存という個人的なこだわりは、今回は諦めるか」と即座に思ったほどに。


「よしよし、可愛い娘のためだ。ナンバリングにこだわりがあるなら、おまえにはトップナンバーをあげよう」

「あ、ありがとうございますっ、ありがとうございます!!」


 ……なんという、よい返事。

 ベルザーグは辛うじてため息を我慢し、エレナから指輪を取り返した。

 代わりにまたマジックボックスに手を入れ、シリアルナンバー1を探し出し、渡してあげた。


「一番一番……うふふ」


 機嫌の計測メーターがあれば、おそらくマックスまで振り切れていそうな声音で、エレナが独白した。


「ははは、よほどトップナンバーが好きと見えるな」


 まあ……うん。ここまで喜んでくれるなら、これでよかったか。

 おうおう、俺に任せてくれ。

 一番から十番まで、全部持ってるしな!


 唐変木なベルザーグは、ドヤ顔の上に内心で自慢たらたらだったせいか、先程新たな指輪を探している間、エレナが感激のあまり涙ぐんでいたことに気付かず仕舞いだった。

 




 

 紆余曲折を経て、ついにもらったシリアルナンバー1のピュアハートを、エレナは一瞬の迷いもなく左手薬指にはめた。

 すると、魔法効果でアームの部分が瞬く間にサイズを変え、ぴたりとエレナの指に最適なサイズ変換がされた。


「ぴったりです!」


 眼前にかざして嬉しそうに微笑する。


「……そうなる仕組みだからな」


 一郎が非モテだったために、指輪についての恋愛知識が皆無であるベルザーグは、朴念仁な返事をして快活に笑う。

 ちなみに、この指輪問題のせいで忘れた頃に騒ぎが勃発するのだが、もちろん彼はそんなこととは知らずにいる。


「さて、今日はこれから各地の支配状況も見に行かねばならない」


 最後にとびきりの笑顔を見られたので、機嫌よく立ち上がった。


「ファニールに会えなかったのは残念だが、また近々寄るとしよう」

「ぜひそうしてくださいませ! 私達もハイランダーへちょくちょく寄りますからっ」


 慌ててエレナも立ち上がった。

 ……片手でまだ薬指の指輪を弄りつつ。


「あ、それで思い出しましたっ。ファニールちゃんが冒険者登録したいと言ってました。あの、私も」

「ほう?」


 エレナはともかく、フェニールは危なくないか?

 しかし、あの子も立派な神官職だし、むしろ実地訓練は必要か。素早く考えを巡らせ、ベルザーグは頷いた。


「わかった。おまえと二人で仕事を受けるなら、構わないとも。アリオンに伝えておこう」

「ありがとうございますっ」

「そうだ、エレナ。最後に訊いておこう」


 肝心なことを思い出し、ベルザーグはエレナの肩に手を置いた。


「私にとってはファニールもおまえも大事な娘だ。だからおまえにファニールと共に暮らすことを強制する気はない。今は魔獣もついていることだし、おまえがなにか考えがあるなら、好きな道を選んでも大丈夫だぞ」

「ファニールちゃんは大好きだし、私も一人よりはファニールちゃんと一緒の方がいいです」


 エレナは笑顔で答えてくれて、ベルザーグは内心でほっとした。


「そうか!」


 しかし、すぐにエレナがそっと続けた。


「でも、もしも創造主様が私をお呼びくださるのでしたら――」


 そこまで口にして、エレナはあたかも顔を隠すかのように深々とお辞儀した。


「うん、そうだな。近々、実際におまえの力を借りることになるかもしれない」


 娘が発した言葉の深遠な意味には気付かず、ベルザーグは大仰に頷いた。 

 


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