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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第五章 ベルザーグ、既存シナリオを破棄する
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遅すぎる到着

 明らかに、先程を上回る轟音が響き渡り、そして大地が激震で揺れまくった。


 コンマ数秒後には、荒れ狂う破壊の余波となる衝撃波が広がり、ヴァレリーが急いで自分達のためにシールドを展開したほどだ。

 ヴァレリー的には、敵との間には十分な距離があったと思ったのだが、あいにくそうでもなかったらしい。

 ここまで強大な攻撃魔法を使う機会が皆無に等しかったので、被害を見積もり損ねた。


 不気味な亀裂が四方に走っている部分はまだマシな方で、中庭の広範囲――それころ、遥かに離れた城壁の近くにまで達する、巨大なクレーターが生じている。

 もちろん、シールドを張った直後のあのシャロンを中心点にしてだ。

 敵の生死はまだ不明だが、濛々たる土埃のせいで、とてもではないがどうなったか確認できない。


(あいつ、寸前でシールドに頼らずに飛び退こうとしたようだ。それは褒めてやってもいいが……まあどのみち、無駄だったな)


 別名、虚無の刃とも呼ばれる攻撃魔法であるブラックブレイド・オブ・ダークネスは、飛来スピードも速いが、基本的にロックした敵に追従する。

 つまり、飛び退いたところで簡単に避けることはできない。


 どうしてもダメージを回避したいなら、あの魔法を使える最低レベル――つまり同じくレベル90クラスのシールドが必要なはずだ。





「ただ、命中した直後に、なにやら奇妙に空間がブレたように見えたが……」


 ヴァレリーが考え込んでいると、バーンズが満面の笑みで寄ってきた。


「お見事です、陛下!」


 思わず肩をすくめた。


「おまえが思うほど弱敵じゃないぞ、あいつは。少なくとも私のレベルシールドが突破されたということは、レベル50以上……あのブラインドフューリーとやらの攻撃魔法からして、おそらく本人のレベルは80を越えていたはずだ。こうまで近い実力の持ち主に出会ったのは、初めてのことだな」


 そこでヴァレリーは、ふと嫌な予感がした。

 それほどの実力を持つ相手となると……創造主様の関係者ということは考えられないだろうか? 


「……しかし、それなら私を攻撃する理由がないはずだ」


 思わず独白すると、バーンズがこれに答えた。


「我々に退かせたかったようですが……」

「なぜだ?」

「そこは謎ですな」


 バーンズも、彼女と初対面なのは同じなので、首を振るしかなかった。


「だいたい――むっ」


 言いかけたヴァレリーは、大きく息を吸い込む。

 ようやく収まりかけた土埃の向こうから、ふらふらと女が近付いてくる。体型からして、あの女に間違いないだろう。


「生きていたか!」


 さすがに多少は驚いて声に出すと、相手は押し殺したような声で言い返した。


「あ、当たり前……ですわ。だいたいわたくしには、大神のご加護により、戦死を回避する『デスイベージョン』のスキルが備わっています。簡単に倒れませんわよ! しょ、勝負は……これからですっ」


 言葉とは裏腹に、満身創痍のせいで足がガクガク震えていた。

 それは置いて、こいつの言い草に、ヴァレリーの嫌な予感はにわかに増大した。


「そのスキルは知らぬが、大神のご加護だとっ。貴様の言う大神とは誰の――」


 問いかけようとした瞬間、なぜかギチッと敵が固まった。

 固まったというのは、そのままの意味で、今まで荒い呼吸を吐いて左手で右肩を押さえていたあの女が、そのままの姿勢で静止している。


 しかもバーンズの方をさっと見ると、忠実な臣下の巨体も、同じくその場で静止した……というより、世界全体が動きを止めている!


「案ずるな、ヴァレリー。これは私のトランセンダンスマジックの、タイムストップによるものだ」

 

 その声に、今度こそヴァレリーは飛び上がりそうになり、振り向く。

 予想通り、彼女が崇拝する創造神が立っていた。


「ベルザーグ様!」






 このタイミングのよすぎる光臨に、ヴァレリーは恐れていた危惧が現実になったのを知った。

 焦って跪き、真っ先に尋ねた。


「まさか、彼女はっ」

「いやいい、いいんだ。シャロンもスキルのお陰で無事だったんだし、喜ぶべきだろう」


 ベルザーグはちらっと辛うじて立つ敵の女を見て、首を振った。

 どうやら、ヴァレリーが言おうとしたことを察したらしい。


「あの子の出現については、ついさっき、ハイランダーのアリオンから連絡がきた。全ては誤解が招いたことであり、私の責任だ。おまえには、苦労かけたな」

「……そのようなことは」


「いいから、立ちなさい。シャロンも後で診るとして、まずはおまえだ」


 遠慮しようとしたヴァレリーより先に、静かに歩み寄ったベルザーグが両手を握ってくれ、彼女の冷静な思考はたちまち吹っ飛んでしまった。

 尊敬する創造主は、手を握ったまま軽々と引き起こしてくれた。


「おまえのやってくれたことに感謝する。必要なこととはいえ、汚れ役をやらせて悪かった。怪我などなかったか?」


 その言葉に、ヴァレリーは夢見心地になり、慌てて首を振っていた。

 ぼおっとしていると、ベルザーグが見つめてふと首を傾げ、スーツのポケットからハンカチを出して顔を拭いてくれた。


「少し砂埃がついていた。魔法の方が早いけど、味気ないからな」


 照れたように笑う。


「ほら、これで綺麗になったぞ」

「お、畏れ多いことです……ですが、ありがとうございます!」


 私はこの方のためになら、いつでも死ねる!

 ……いつも思うことだが、この時のヴァレリーも夢中でそんなことを考えていた。

 



いつもありがとうございます。

ご感想を下さった中名加奈様が、↓で本作を紹介してくださいました。


http://ncode.syosetu.com/n9884dh/


本当にありがとうございます!




○ついでに、知らなくても困らない用語

デスイベージョン(スキル)

死亡確率高い攻撃を浴びた瞬間、その効果を半減させる。

ファニールのリザレクションリングと違い、連続二回まで有効。

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