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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第五章 ベルザーグ、既存シナリオを破棄する
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先制攻撃


 ブレイブハートの定めを持つシャロンは、魔法学校の制服とよく似た私服姿で、夜空に浮遊している。

 広げた翼はヴァレリーと同じく「ファントムウィング」という飛行用のスキルなのだが、ヴァレリーの翼が漆黒なのに対し、彼女は純白である。


 魔法学校でついたあだ名の「アークエンジェル」は、まさにこの姿に由来するものだ。

 なぜ彼女がここへやってきたかというと、魔族を信じてなかったからだし、きっと創造主との約束を違えるだろうと疑っていたためだ。


 ちなみに、シャロンがベルザーグから聞いた話は、以下の通りである。




『ヴィルゲリア帝国は今後、西と東に分けて分割統治することになる。帝国西部は魔王のヴァレリー、そして帝国東部はおまえに委ねる』


 頭の回転の速い彼女は、「魔族が帝国を半分支配するなんてっ」という危惧はその場で一応置き、すかさずこう質問した。


「ベルザーグ様、それでは帝都エグランデルは? あそこは地域的に見れば、西部にも東部にも所属しないはずですわ」と。


 実際、彼女の指摘通りで、帝都は帝国にとって「神聖不可侵な皇帝直轄領であり、いずれの地方にも所属しないのが原則」とされている。

 そしてこの鋭い質問に対し、ベルザーグはなんの気なしにこう答えたのである。



「うん、帝都は当面、私の代理であるグレイアードという男が政務を見るよ」と。


 

 ベルザーグ的にはその返事で間違いはないのだが、本来なら補足的な説明として「しかし、支配者の交代を帝都の民に明らかにするためにも、ヴァレリーが先に帝都で皇帝の首を獲るのだよ」と教えてあげるべきだったろう。

 ただ、中の人である相馬一郎は、そこまで説明せずに済ませてしまった。

 

 つまり、グレイアードはあくまで皇帝が討たれた後から帝都を代理支配するのであり、ベルザーグとしては帝都の臣民達には「自分達の帝都は魔王に支配されている」と、わざと誤解させておくつもりでいるのである。


 もちろん、東部は完全にシャロンにゆだねるが、実際は西と東を治めるヴァレリーとシャロン、それに帝都を影から治めるベルザーグという、ややこしい三者支配ということになるだろう。

 ヴァレリーに広大な帝国全てを押しつけるのは、逆に彼女の負担になると心配したためだが、この決断が本当に正しいかどうかは、実はベルザーグにも絶対の自信はない。


 むしろ彼は自分でも「しかし、魔王とブレイブハートに(東西に分かれるとはいえ)同じ国を任せるってのは、少し危険かもしれないよなぁ」という危惧は持っていた。

 だが今は大陸そのものに危機が迫っている時である。

 中原を含む広大な面積を占めるこのヴィルゲリア帝国は、どうしても有能な者に預けたくて、迷いを押し切って決断した。


 今の状況だと、ヴァレリーやシャロンのように、戦いも政治も任せられるような人材に任せるのが正解だと考えたのだ。

 政治の方はシャロンが未体験だが、彼女の実力に不安は持っていなかった。

 ただし、シャロンはそもそも魔族を快く思っていない。

 まさかそれが原因で、ちょっとした誤解から、いきなり彼女が魔王に挑むとは、さすがにベルザーグの予想を超えていたのである。


 帝都の扱いについて不完全な説明を受けたシャロンから見れば、魔族が帝都を襲うのは、立派な裏切り行為に当たるのだ。






 不機嫌そうなシャロンが見下ろすので、もちろん魔族軍達もざわめきはじめている。

こちらを指差して上官? らしき者に命令を請う者もいて、騒然とし始めていた。

 シャロンが全く怯えた様子もなく、至近から一万の軍勢を見下ろすので、腹立たしいのだろう。


「あの女、なんでこっちを睨んでるんだっ」

「俺が知るか! だいたい、殺しちゃ駄目なのか?」

「……相手が先に手出しもしないうちにか? おまえ、陛下に解体されたいのか?」

「むううっ」


 シャロン自身の耳にもそのような会話が洩れ聞こえたが、彼女は全く気にしない。

 自分の敵はこいつらではないと思っているからだ。


 心残りはあるが、そいつらは無視して急降下し、王宮前の中庭に降り立つ。途中、魔法防壁があったが、入る分には全く問題なかった。





「ファントムウィング解除!」


 純白の翼が、その瞬間に光の粒子となってシャロンの背中から消えた。

 そのまま、いざ王宮へ駆け込もうというところで、先に目指す相手が出てきてしまった。しかも……手には男性の首をぶら下げているっ。


 その瞬間、上空で待機中の魔族軍から、帝都全域を揺るがすほどの大歓声が湧き起こった。

 魔王らしき女は、軽く片手を上げて応えつつ、早くもシャロンに気付いて眉をひそめていた。

 もう一人、赤ら顔のいかにも人外の男が彼女に付き従っているが、シャロンはそっちは完全無視で、マント姿の魔王のみを見据えている。


「たとえ皇帝を打倒しようが、本当の戦いはこれからですわよっ」


 いい気になっているに違いない相手に、シャロンは宣戦布告代わりに大声で叫んだ。


「我が怒りを知りなさい、この神聖なる光と共にっ」


 言下に、たちまちシャロンの身体がまばゆい魔力のオーラで包まれる。




「――むっ」


 魔王が身構えようとしたが、一瞬早く、シャロンが魔法攻撃を放った。


「受けてみるがいいわ、ブラインドフューリー!」


 シャロンの命令と同時に、白光を放つ特大の光剣がまっしぐらに飛び、まともに魔王を襲った。


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