ラ○ュタは本当に(以下略)
(これは……驚きだな。いや、驚く以前に、密かに睨んだ通り、ここで待機していると自然と創造主様にお会いできるようだ)
アリオンを先頭に皆でぞろぞろ移動しつつ、ヴァレリーはベルザーグと頻繁に会えそうな場所を知ったことを、大いに喜んだ。
同時に、最初の自己紹介で聞いた限りでは、実際に龍族のエステルとアリオンが頻繁に創造主様とお会いしているようなので、めちゃくちゃ羨ましかった。
魔王たる身で、領土と部下達を放ってちょくちょくあのお方にお会いできないのは当然だとわかっているが、それでも。
(だが……今後は今までとは変わるはず。なにしろ、私は今の帝国西部、つまり魔族の旧領に戻るのだからな。そうだ、魔族の帝都はここの至近に定めるか)
超個人的な理由で、ヴァレリーはそう決心した。
考えているうちに、アリオンは奥の奥の壁際にあった通路を先へ進み、鍵を使って正面のドアを開けた。
……中は狭い上、そこにあったのはただ床を四角く切り取ったような、地下へ移動する階段である。
階段はまっすぐ下に続いてるようだが、奥になにがあるかは見えない。
しかもこれは――
「こちらは、結界になっているのですね?」
「……強大な結界魔法を感じる」
エレナというポニーテールの女武人みたいなメイドと、ヴァレリーの呟きが奇しくも重なった。思わずそちらを見ると、彼女は優雅に一礼した。
「失礼しました。私とファニールさんも、ここを下りるのは初めてなのです」
「そうでしたか!」
この二人の詳細はまだ知らないが……ということは、自分と同じく、ここへ来て間がないということだろう。
我ながらせこいと思ったが、人知れず安堵してしまった。
ただ、気になることもあるが。
「アリオン殿、我々を地下へ案内してくれるのは大変嬉しいが、ベルザーグ様は不快に思われないだろうか?」
その点が心配になって問うと、アリオンは笑って首を振った。
「それはないですね。そもそもベルザーグ様は、『近々、ヴァレリーやファニール、それにエレナもあそこへ連れていってあげないとな』とお話しでした。だから、僕がご案内しても問題ないですよ」
「そ、そうか……それはよかった」
連れて行くという言い方が少々気になったものの、ヴァレリーは大いにほっとした。
ヴァレリーよりやや薄い色の金髪をしたアリオンは、にこやかに言う。
「申し訳ありませんが、お三方は、僕の肩などに触れて頂けませんか? 後日正式なキーをお渡ししますが、今日のところはそうしないと下りられませんので」
言われて特に異存なく、ヴァレリー達はアリオンの肩に手を置いた。
地下への階段は広いので、それでも特に不自由はない。
エステルを最後尾にして、アリオン以下四名は、ひとかたまりになって階段を下りていった。
驚いたのは、暗がりだと思った階段はすぐに途切れ、次の瞬間、見えない壁をすり抜けたような感触があり、いきなり開けた場所に出たことだ。
(これは……地下室なのか、本当に!? いや、違うぞっ)
ふかふか絨毯が敷かれたその開けた場所には、左右に大きな窓があったのだが……なんと、そこから見えるのは、眩しいほどの青空である!
しかも、ヴァレリー達が手近な窓へ駆け寄って下界を見ると、遙か下に雲の群れが見えるっ。
「こ、ここはっ。まさか、空中でしょうかっ。天上界!?」
大人しかったファニールという神官が、驚いたように声を上げる。
やや内股で、両手を胸の前で合わせていた。
「少なくとも、空の上ではありますね……」
さすがにエレナの声にも、かなりの驚きが滲んでいる。
無論、ヴァレリーも例外ではない。自力で空は飛べるものの、まさか空の上にこんな建物があるとは知らなかった!
さっきの階段が転移魔法だったということか!?
だいたい、本当に空なのかここはっ。幻像ではあるまいな!
立ち尽くしたヴァレリーが思ったところで、アリオンが悪戯っぽい顔で声をかけた。
「ヴァレリー様、ファニールさん、そしてエレナさん」
こちらの名を呼んだ後、大仰とも言えるアクションで大きく一礼する。
「ようこそ、『空中都市ハイランダー』のエントランスへ。未だに建設途上ではありますが、この空中都市は現在、高度一万メートルの空をゆっくりと飛行中です」
アリオンとエステルを覗く三人の口から、感嘆の声が洩れた。
同時に、奥にあった巨大な両開きの扉が重々しく自動で開き、メイド服を着た女性達が数名、しずしずとやってきて整列した。
『お客様方、ようこそハイランダーへ』
声を合わせた後、先頭のリーダー格らしい一人がアリオンを見る。
「今日のご予定はいかがなさいますか? お食事のご用意を致しましょうか? それとも、入浴などの娯楽をお望みでしょうか?」
「軽食で構いませんので、お願いできますか」
アリオンが笑顔のまま答える。
「エステルはね、前に食べた、星がてっぺんに載ったケーキが食べたいですっ」
便乗してエステルが声を張り上げていた。
(す、凄い!)
ヴァレリーは他の二人と同じで、呆然としてやりとりを眺めるのみだった。
ご感想を下さった方達、ありがとうございます。
なるべくエタらないよう、がんばります(汗)。




