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はじめての異世界転生、ステータス補正で無双する!  作者: 若菜みかん


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3/21

Fランク判定なのに、貸し出し用の鉄の剣が折れた

「とりあえず、街まで来なさい」


オークを倒してから少しして。


レナにそう言われ、カズキは街道を歩いていた。


「いいのか?」


「何が?」


「その、盗賊なんだろ?」


「職業が盗賊なだけ。手あたり次第に盗んでるわけじゃないわよ」


「そういうものなのか」


「そういうものよ」


この世界の常識は、まだよく分からない。


しばらく歩くと、遠くに石壁が見えてきた。


その向こうには、いくつもの屋根。


「街だ」


ようやく人のいる場所まで来た。


門を抜けると、道の両側に店が並んでいる。


人も多い。


荷車。

露店。

剣を腰に下げた冒険者らしき男たち。


「ちゃんと異世界だな……」


「今さら何言ってるの?」


レナは呆れながら、少し大きな建物の前で足を止めた。


入口の上には、剣と盾を組み合わせたような看板がある。


「ここが冒険者ギルド」


「おお」


「その反応だけは普通ね」


中へ入る。


受付まで行くと、若い女性が顔を上げた。


「新規登録ですか?」


「ああ。たぶん」


「たぶん?」


レナが横から口を挟む。


「こいつ転生者」


受付嬢の表情が変わった。


「転生者の方ですか!?」


周囲にいた冒険者たちも、ちらりとこちらを見る。


「え、そんなに珍しいのか?」


「珍しいけど、いるにはいるわよ」


受付嬢は少し嬉しそうに水晶球を取り出した。


「では、まず能力測定をしましょう。転生者の方でしたら、特殊な能力をお持ちの可能性もありますので」


「特殊な能力……」


カズキはちらりとレナを見る。


レナも同じことを考えたらしい。


「絶対なんか出るでしょ」


「だよな」


カズキは水晶球へ手を置いた。


しばらくして、数字が浮かび上がる。


STR:12

VIT:10

AGI:11

INT:9


特殊スキル:なし。


受付嬢の笑顔が止まった。


「…………」


レナも止まった。


「…………」


受付嬢は一度だけ水晶球を確認した。


それから、にこりと営業用の笑顔を作る。


「Fランクからですね。頑張ってください」


「急に塩対応になったな」


「なるでしょ普通!」


レナの声がギルド中に響いた。


「ちょっと待って!」


レナが受付台に身を乗り出した。


「こいつ、さっき小石でオークぶち抜いたのよ!」


受付嬢は一瞬だけ目をぱちくりさせる。


「小石で?」


「そう!」


「……オークを?」


「そう!」


受付嬢はカズキを見る。


カズキも頷いた。


「たぶん」


「たぶんって何よ!」


受付嬢は少し困った顔をした。


「転生者の方は、ご自身の能力を高く見積もられることもありますので……」


「私まで疑われてる!?」


「まあまあ」


「アンタは黙ってなさい!」


レナに怒鳴られた。


受付嬢は咳払いを一つする。


「では、念のため簡単な実技試験もしておきましょうか」


「実技?」


「はい。あちらの訓練用人形を、一度だけ攻撃してください」


壁際に、木でできた人形が立っていた。


その横には貸し出し用らしい剣が何本か並んでいる。


「剣、使っていいのか?」


「もちろんです」


カズキは少しだけ安心した。


木の枝は壊れた。


小石も飛んでいった。


でも、今度はちゃんとした鉄の剣だ。


さすがにこれなら大丈夫だろう。


一本手に取る。


思ったより重い。


「おお……剣だ」


「そこから?」


レナが呆れた声を出す。


カズキは訓練用人形の前に立った。


「軽く斬ればいいんだよな?」


「はい。能力を見るだけですので」


「分かった」


今度こそ。


本当に軽く。


カズキは剣を振った。


バキィィン!!


木人形が真っ二つになった。


同時に。


手にしていた鉄の剣も、根本から折れた。


「…………」


ギルドが静まり返る。


カズキは折れた剣を見る。


受付嬢を見る。


もう一度、折れた剣を見る。


「……すみません」


受付嬢の頬が引きつった。


「はい」


「これ、いくらですか?」


その横で。


レナがゆっくり頭を抱えた。


「だから言ったでしょぉぉぉ!!」


「弁償……ですよね?」


カズキが恐る恐る聞く。


受付嬢は折れた剣を見た。


それから、真っ二つになった木人形を見る。


「……確認します」


「お願いします」


受付嬢が戻ってきた。


「貸し出し用の鉄の剣なので、銀貨三枚です」


「銀貨三枚」


高いのか安いのか分からない。


そもそも、この世界の金の価値を知らない。


「俺、金持ってないんだけど」


「でしょうね」


レナが即答した。


「転生したばっかりなんでしょ?」


「ああ」


「はぁ……」


大きなため息。


それからレナは受付台に銀貨を三枚置いた。


「これで」


「え?」


カズキがレナを見る。


「いいのか?」


「よくないわよ」


「だよな」


「だから返して」


「どうやって?」


「稼いで」


レナは当然のように言った。


そして、カズキの胸元を指さす。


「アンタ、今日から私と組むから」


「……はい?」


「その力、放っておいたら絶対また何か壊すでしょ」


否定できない。


「私が見張る」


「見張るって」


「ついでに稼ぐ」


「ついでなんだ」


「アンタは私に借金があるの」


銀貨三枚、どのくらいの額なんだ?


「正体分かるまで離さないから」


レナはそう言って笑った。


受付嬢が横から小さく手を挙げる。


「でしたら、お二人で受けられる依頼がありますよ」


「依頼?」


カズキが振り返る。


受付嬢は掲示板を指さした。


「街の外で、最近魔物が増えているんです」


レナの表情が少しだけ真面目になる。


「どの辺?」


「北の森です」


カズキは嫌な予感がした。


北の森。


さっき、少し壊した気がする。


「……俺、そこ知ってるかもしれない」


レナがじっと見る。


「何したの?」


「いや」


カズキは目を逸らした。


「ちょっと木が減っただけ」

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