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はじめての異世界転生、ステータス補正で無双する!  作者: 若菜みかん


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手紙を届けるだけの簡単なお仕事

翌日。


四人はいつものように、王都の冒険者ギルドへ来ていた。


「さて、今日は何にする?」


レナが依頼板を眺める。


王都のギルドだけあって、貼られている依頼の数は多い。


魔物の討伐。


商人の護衛。


素材採取。


街中での雑用まで、内容はさまざまだ。


「これなんてどうですか?」


サクラが一枚の依頼書を指さした。


「手紙の配達?」


カズキが読み上げる。


依頼内容は単純だった。


指定された手紙を、王都の中にいる人物へ届ける。


ただ、それだけだ。


「簡単そうね」


「王都の中なら危険もなさそうですね」


ニーナも頷いた。


カズキは依頼書をじっと見る。


「でも、なんか変じゃないか?」


「何が?」


「時間まで指定されてる」


依頼書には、受け渡し場所だけでなく時刻まで細かく記されていた。


――午後二時。


――旧市街、時計塔前。


「手紙くらい、いつ渡しても同じじゃないのか?」


「相手にも都合があるんじゃない?」


レナは気にした様子もない。


「まあ、そうか」


報酬も悪くない。


危険な依頼でもない。


四人はその依頼を受けることにした。



午後二時少し前。


四人は旧市街にある古い時計塔の前へ到着した。


人通りはそれほど多くない。


石畳の道を、時折馬車が通り過ぎていく。


「相手は?」


カズキが周囲を見回した。


「依頼書には、灰色の外套を着た男って書いてあるわね」


「……あれじゃないですか?」


サクラが指さした。


少し離れた場所に、一人の男が立っていた。


灰色の外套。


深くかぶったフード。


男は落ち着かない様子で、何度も周囲を確認していた。


「怪しくない?」


カズキが小声で言う。


「怪しいわね」


「怪しいですね」


「怪しいですわね」


「全員一致じゃねーか」


それでも依頼は依頼だ。


カズキたちは男の元へ歩いていった。


「ギルドの依頼で来たんだけど」


男がこちらを見る。


「……手紙は?」


「これ」


カズキが封のされた手紙を差し出した。


男は素早く受け取り、封を確認する。


そしてカズキたちを一人ずつ見た。


「お前たち……依頼人から何か聞いているか?」


「何かって?」


「この手紙についてだ」


「いや。ここであんたに渡せって言われただけだけど」


男はしばらくカズキを見つめていた。


「……そうか」


それだけ言うと、男は手紙を懐へしまった。


「依頼は完了だ」


「ああ」


男は足早にその場を離れていく。


路地へ入り、その姿はすぐに見えなくなった。


カズキは男が消えた方向を眺めていた。


「……なんだったんだ、あいつ」


「さあ?」


「俺たちが手紙の中身を知ってるみたいな聞き方だったよな」


「そうでしたね」


サクラも少し気になったようだった。


「しかも、ずっと周りを気にしていましたわ」


ニーナが言う。


レナは腕を組んだ。


「まあ、訳ありなのは確かでしょうね」


「大丈夫なのか、この依頼」


「もう終わったんだからいいんじゃない?」


「適当だなぁ」


「ギルドを通した依頼なんだから、何かあったらギルドに聞けばいいでしょ」


「……それもそうか」


考えても仕方がない。


手紙は渡した。


依頼も完了した。


「じゃあ、ギルドに戻って報告したら今日は自由時間ね」


レナが言った。


「自由時間?」


カズキが反応する。


「そうよ。今日はもう大きな依頼を受ける時間でもないし」


「なるほど」


ギルドへ戻り、依頼完了の報告を済ませる。


報酬を受け取ったところで、レナが振り返った。


「それじゃ、今日はここで――」


「じゃあな!」


カズキが走り出した。


「ちょっと!」


レナの声を背中で聞きながら、カズキはものすごい勢いでギルドを飛び出していった。


三人はしばらく、その後ろ姿を見送った。


「……どこ行ったんでしょう?」


サクラが首を傾げる。


レナはため息をついた。


「なんとなく分かるわ」



しばらくして。


三人は例のカフェの前にいた。


「まあ、せっかくだしね」


「そうですね」


「疲れた時には甘いものですわ」


扉が開く。


「お帰りなさいませ、お嬢様方」


三人は店内へ入った。


そして。


「あ」


サクラが声を漏らす。


いつもの席。


そこには、予想通りの人物がいた。


「旦那様。本日もお疲れ様でございます」


「ああ、ありがとう」


カズキは優雅にコーヒーを飲んでいた。


テーブルには、小さな焼き菓子まで置かれている。


レナが眉をひそめる。


「あんた……」


カズキが振り返った。


「お。遅かったな」


「遅かったな、じゃないわよ!」


「なんだよ」


「あんた完全に入り浸ってるじゃない!」


「入り浸ってない」


「昨日も来てたでしょ!」


「昨日は昨日だ」


「一昨日も来てたわよね?」


「一昨日は一昨日だ」


「毎日じゃない!」


サクラがくすくす笑う。


「もう常連さんですね」


「旦那様には、いつもご贔屓にしていただいております」


執事が穏やかに答えた。


「ほら」


カズキが得意げに言う。


「何が『ほら』よ!」


「客として認められてる」


「そこを誇るな!」


ニーナが優雅に椅子へ座った。


「まあまあ。居心地が良いのは事実ですわ」


「ニーナまで……」


「レナ様。本日のケーキは木苺を使ったものとなっております」


執事が告げる。


レナの動きが止まった。


「……それください」


「かしこまりました」


「即落ちじゃねーか」


カズキが笑う。


「うるさい!」


その後。


四人はいつものように、穏やかな時間を過ごした。


昼間の奇妙な依頼のことなど、いつの間にか頭から消えていた。



同じ頃。


王都の外れ。


薄暗い部屋で、一通の手紙が開かれていた。


「……間違いないな?」


低い声が響く。


「はい」


灰色の外套を着た男が答えた。


「冒険者が四人、手紙を運びました」


「中身は?」


「封はされていました。しかし……」


男が言葉を濁す。


「しかし?」


「こちらについて、何か聞いている可能性は否定できません」


しばらく沈黙が続いた。


やがて、部屋の奥から声がした。


「ならば確認しろ」


「確認……ですか?」


「知っているなら、生かしておく必要はない」


男は静かに頭を下げた。


「承知しました」


机の上には、開かれた手紙が置かれていた。


そこには短く、こう記されていた。


――器の準備は整った。


――残るは三つ。


――邪竜復活の時は近い。

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