携帯と冬休み--2
「おぉ・・・」
「こりゃまた、まるっきり違う感じだな」
「わぁぁ」
冬休みになり何日か部活をこなして1週間の休みに入った日。
ユタくんの車で山の中腹辺りにある『新しく買った家』に着いた。
おじさんおばさんの家からは20分くらいで来れるそうだけど、ここは山の中だし俺達の家から直接来たから道が違いすぎて感覚がわからない。
新しい家は主役の家と比べると数倍も広い庭に、たくさんの木や花が植えられていて散歩道みたいなのも何本かある。石造りの動物の置物があちこちに置かれてて可愛い感じだ。
家はアッチの家に比べたら半分もない、俺達の家より少し小さいくらいのこじんまりした洋風な外観で庭とも合ってる。
大きめなテラスに煉瓦造りの煙突が見えた。
「なんか可愛いお家!煙突もある!庭広い!」
ユタくんが車を庭先に停めて、車から降りて3人で歩いてる間もユミカはあちこち見てははしゃいでる。
アッチが家も庭も全部純和風だったのに比べると、この家は全部が純洋風になってるみたいだ。
アッチは平家の一階建て、この家は外から見て二階建てっぽいのも大きく違って見える。
「アッチの家とこの家、同じおじさんおばさん達が住んでると思えないよね」
ユミカがあっちこっち庭をウロウロし始めたから、近くにいたユタくんに話しかける。
「まるで別物にして、直したかったんじゃねぇか?会社のイメージもあるし、親父もお袋も特別洋風好きでもないのにここまでやるとはねぇ」
俺とユタくんが立ち止まってユミカを見てると、テラスの横にある大きいガラスの扉が開いた。
家の中から久しぶりに見るおじさんとおばさんが出てくる。
2人はユタくんを見たようで、ユタくんが腕を伸ばしてユミカの方を指差した。
ユミカも扉の音が聞こえたのか、振り返って2人を見てる。
優しく微笑んでる2人に対して、チラチラ2人を見ながらモジモジモゾモゾしてるユミカ。
「早く飛びつけばいいのにな。寒くない?」
「ユタくん黙って。ほんとそういうところ良くないよ」
口ではそんなこと言ってても、ユタくんはとても嬉しそうにユミカから視線を外さない。
俺もユミカに視線を戻す。
「「ユミカおかえり」」
「お庭可愛いでしょ?」
「家の中も変わってて面白いぞ」
ソロソロと2人の前まで歩いてきたユミカが、おじさんおばさんの手を握る。
「・・・ただいま。お父さん、お母さん」
2人がユミカを抱きしめてあげてる。
「「新しいお家、気に入った?」」
「うん、お父さんお母さんの家」
あぁ、良かったねユミカ。帰ってきたね。
「いいから家入らせてくんない!?寒いんだよ!俺薄着なんだよ!話は家ん中でしようぜ!?」
空気をぶち壊す発言をして、他の全員が唖然としてるのにその場で震えながら足踏みを始めたユタくん。
え?この空気でそれ言う?とか、薄着なのはユタくんのせいだよね?とか、もう、なんか、笑えてきて。
ユミカと俺が吹き出して爆笑して、それにつられておじさんおばさんも笑ってた。
2人と繋いでた手をギュッと握って笑ってから離したユミカが俺のところに走ってくる。
「ほら!タダタカ行くよ!ユタくんが寒いって!」
「待って待って俺達荷物降ろしてないんだよ」
俺と繋いだ手をグイグイ引っ張るユミカにそう声をかける。
ユタくんと2人で話して、荷物は降ろさないでおこうってしてたから。
ユミカがどうなるかわからなくて、今回は会っただけでそのまま帰ることも頭に置いてた。
だからユタくん薄着だったのかな。さすがにアホかなって思う。
「荷物はあとでいいよぉ!ユタくん帰る時にしよ!」
「はいはい」
結局グイグイされながらおじさんおばさんの前に立つ。
「お久しぶりです。1週間、またお邪魔します」
挨拶した俺を、2人は上から下までしげしげ眺めたあと。
「やっぱり、タカ君・・・なのねぇ」
「大きく・・・なったなぁ」
はい。俺です。




