普段の日々。
(ああ、身体が重い……)
ちょっと休憩だと、家事の合間に椅子に腰掛ける。
別に疲れているから重いのではない。
物理的に、だ。
最近ますます大きくなってきたお腹を撫でる。
撫でている手も、自分じゃないくらいにぽちゃぽちゃしてて、はぁと、思わずため息が出てしまう。
こちらへ移り住んでからというもの、痩せ型だったのが標準体型に、その内に標準体型を通り越してぽっちゃりへ、そして妊娠後はそのぽっちゃりにも歯止めが利かなくなっていた。
(軍の人たちが今の私を見たら、私だって気付いてくれるかな――)
それくらいに、見た目が変わってしまった自覚があった。
そして、変わってしまった身体が自分に定着しつつあって、そのことに地味に恐怖している。
出産を終えたら、元に戻る――その「元」というのは、ネモフィラ時代ではなく「ネモ」として過ごしてる期間のことだとしたら――
(ポンコツネモは、ぽっちゃりネモになります)
せめてぽっちゃりで留めたい。太っちょネモは勘弁だ。
さて、そろそろ休憩を終えて掃除に戻るかと立ち上がろうとしたとき、庭にいたはずのエッディさんが中へやって来た。
「あれ、どうした? お腹張ってる?」
「ううん、ちょっと休憩してただけだよ」
そう言うと、エッディさんが私の前に来て、私の丸いお腹に手を添える。
「うん、かわいい」
「え、透視でもしたの」
時折、この人は相変わらず私には逆立ちしても出来ない魔法を生み出しては、こちらの度肝を抜く。
「ううん、ネモのお腹が」
「お腹がかわいいって、中々言われたことないかも……」
おそらく、私のお腹も生まれてから初めて褒められたに違いない。
「ねぇエッディさん。もし私が出産を終えてもぽっちゃりのままだったらどうする?」
思い切って、最近の不安をぶつけてみた。
だって、こんなに体型が変わってしまったのに……彼は今までそのことに何にも触れてこなかったから。
「なんも。かわいいだけだろ」
「うぇ」
眉根を寄せて、何を言ってんだという顔を向けられ、思わず変な声が出てしまった。
「貧相でも、ちょっと太めでも、おまえはかわいいよ」
彼はそう言いながら、私の頭にキスを落とす。
――こうやって甘やかしてくるから、太ったままでもいいって思うんじゃないか。
「あ、甘やかさないで」
「? なんで?」
「だって――」
ううん、なんでなんだろう。
キレイな私を見て欲しいから?
「今が、一番キレイだよ」
「うぅ、頭の中を読まないでー!」
彼はどこまでも私に甘くて、優しい。
だからこそ、誓う。
(子供が産まれたら、ぽっちゃりは卒業しよう)
結局、その後すぐに二人目、三人目――そして最終的に五人もの妊娠と出産を繰り返し、太っちょネモが定着するのは、このときはまだ誰も知らない。
(おわり)
これで完全に完結です。
後日談までお読み頂きありがとうございました!
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