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再会した先輩は心が壊れていました。~執着が止まらないなんて聞いてません~  作者: piyo
第七章 彼の失踪編

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60.先輩を捜索します。クロを使って。

一度思い込んだら、もう止まらない。


「アリアごめん! おっきいクロは、ちょっと遠くまでお出かけしなきゃいけないんだった!」

「おでかけ??」


<ぬ。初耳だ>


きょとんとした顔でアリアとクロに見つめられ、「うん」と大きく頷きを返す。


「アリア、私のオレンジジュース飲んでていいから、ちょっと待っててね。クロとお話するから」

「やったぁ!」


アリアをジュースで釣って、椅子から降りクロに用件を伝える。


「クロ。お願いがあるの。ダリオさんの所まで行って、様子を見て来てくれないかな。もう二週間くらい連絡が取れなくて、音信不通なんだ。ちょっと顔見るだけでいいから」


<主よ、場所は?>


「たぶん……寮か学園の研究室、もしくは図書室にいると思うんだけど……」


前に聞いたスケジュールだと、とっくに寮に戻っている頃だ。

であれば、卒論を仕上げたいと言っていたので、自室か学園内のどこかにいるはず。


「もし、会えなかったら、ラース先輩のところへ行って、どこにいるか聞いてくれない?」

<できればそれは避けたい>


クロから食い気味に断られ、どれだけラース先輩と関わりたくないんだと苦笑してしまう。


「じゃあ、研究室の人なら誰でもいいや。聞いてみて」


<承知した>


クロは返事と共に、一瞬で姿を消してしまった。


「わ! おっきいクロ、きえちゃった!」


その様子を隣で見ていたアリアが、びっくりした様子で叫んだ。


「ねー。きえちゃったね!」


正確には消えたわけではなく、とんでもない速さで駆けて行っただけなのだが、きっとまだうまく理解できないだろうと話を合わせる。


(ダリオさん、元気にしてますように)


「よし、ネモはもうごちそうさまだよ。 私が歯を磨き終わったら、お外いこうか」

「うん! いく!」


クロが帰って来るまで気持ちが落ち着かない。とりあえず何も考えずに、全力でアリアの相手をすることにした。





クロが戻ってきたのは、お昼も過ぎた頃。

アリアがお昼寝をしに行って、ちょうど暇になったタイミングでこっちに帰ってきていた。


<会えなかった>


「え……。寮も、学園の中も探したの?」


開口一番に告げられた言葉に、肩透かしを食らった。


<もちろんだ。寮も学園も全館回ったが、気配すらなかった。それに――>


クロが珍しく口ごもる。


「それに?」


<寮のダリオの部屋は、もぬけの殻だった>


「!?」


(――どういうこと)


<研究室も同じだ。以前あそこへ行ったときにダリオの匂いがした机が、きれいさっぱり片付いていた>


「なにそれ……。え、誰かに話を聞いたりした?」


<いや。室内や廊下をうろうろしてみたが、誰にも会わなかった。念のためシャノンの姿も探したが、奴も寮にも学園内にもいなかった>


おそらく、ラース先輩は帰省してしまったんだろう。

研究室の面々もそうかもしれない。

けれど――


(なんで……? 出発前に片付けていったの? それとも帰ってきてから?)


そこで、もう一つの可能性に思い当たる。


――それとも別の誰かの仕業?


「ッ」


居ても立ってもいられなくなり、急いで伝書鳥の魔法を展開する。

絶対に届くようにと念じながら、一つ一つの呪文を、丁寧に、力強く。


『ダリオさん、ネモです。一言でいいです、連絡をください』


現れたのは、オウムサイズの大きな緑の鳥。

ここ一番で大成功の出来栄えだったのだが――


『受信先不明』


「なっ、」


そう言い残して、伝書鳥は羽ばたくこともせずに、煙と共に姿を消した。


<――主よ。落ち着け>


「なんで……」


ぐるぐると自分の中で何かが渦巻いていく。


「なんで……一体、どこにいったの?」


部屋の中だというのに、外からひゅるひゅると蔦が這って来る音がする。

けれど、私の頭の中は先輩の行方のことだけしか考えることができない。


伝書鳥が"受信先不明"というときは、受信できない場所にいるか、



もしくは――



受取人が死亡した場合。



ガクガクと手が震え出す。


(落ち着け私。入隊試験で事故が起きたなら、新聞にも載るはずでしょ。でもそんな記事、ここ数日見たことが無かったもん、そんなこと起きるわけない)


閉めていた窓が軋み出す。

ガタガタと窓ガラスを揺らし、隙間から蔦が部屋へと入って来る。


「オオンッ!!!」


大きな咆哮に、ハッと意識を取り戻す。


<……主よ、暴走している。魔力を鎮めろ>


「あ……ごめん、ありがとう、クロ……」


クロに冷静に窘められ、震えながら彼に手を伸ばす。

柔らかな毛並みをぎゅっと抱き締め、最悪の事態を考えていた自分を反省した。


「ダリオさん、生きてるよね?」


<……>


クロは返事をしない。

代わりに、私へ一歩近づき、私の顔をぺろぺろと舐めだした。

――自分でも気が付かない内に、涙が頬を伝っていたらしい。


"何か"が先輩の身に起こった。


わかっているのは、ただそれだけ。


――怖い。


何が起きているのかわからない、言い知れない恐怖が身につきまとう。



……不安しかない私の心の中を、

思いっきりぶち壊したのは、家族。


「ね~も~っっっ!!!!」


ご飯の支度をしていたであろう母親と義姉が、とんでもない形相で部屋に飛び込んできた。


「あんたまた窓ガラス壊す気っ!? 一階と二階の窓が全部蔦で覆われたの元に戻すまで、晩御飯は抜きだからねっ!!!」

「ええええ、待って、お母さんも手伝ってよ! 私無意識でやったし、枯らし方なんて知らないよ! 燃やしてもいい?」

「ネモちゃん、それじゃ二次被害よ。地道にハサミで切っていきましょう。……とても硬かったけど」

「やだー、絶対今日中に終わんないじゃんっ!」


自業自得とはいえ、あんまりだ。

暴走させたのは致し方ないことだと思う。


ただ。


(クロや家族がこの場にいてよかった)


心の底から、そう思った。


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