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再会した先輩は心が壊れていました。~執着が止まらないなんて聞いてません~  作者: piyo
第五章 すれ違い編

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41.ポンコツ仲間ユリシスとの距離にドキドキしました。(1)

「今日はペアで協力し合って、二匹のリス獣を捕まえましょう。

利用する魔法は昨日教えた捕獲魔法のみとします。

それ以外の方法で捕まえても単位は与えないので、みなさん注意してください」


ハイマー先生の言葉に、クラスのみんながしっかりと頷いて返す。


「制限時間は一時間。それまでに二匹捕まえてここに戻ってくること。

それでは……開始!」



今日は朝から魔法生物学の実習授業で、学園のはずれにある魔獣生物を飼っている庭園に来ていた。


この庭園には空間魔法がかかっており、ときに小さく、ときに大きくなる、という仕掛けが施されている。


今回、リス獣を魔法で捕まえるということで、とんでもない広さに敷地が拡大されている。

生徒たちが一箇所に偏らないようにするための配慮らしい。


(広げすぎでしょ。迷子になりそ~……。そして時間内に終わりますように……)


目標達成を一人こっそり祈っていると、隣にユリシスがやってきた。


「ネモ! 昨日はおつかれさま」

「おつかれさまー。ユリシス、筋肉痛じゃない? 大丈夫?」


今日の私のペアはユリシスだ。

私の問いかけに、ユリシスは途端に拗ねた顔をした。


「あれくらいで筋肉痛になるくらいひ弱じゃないよ」


「はは、ごめんごめん。私は肩こりがまだ残ってるから、ユリシスもかなって思っただけ」


昨日は前屈みで片付け作業を何時間もやっていた。

終わった頃には肩がカチコチ凝り固まり、一日たってもまだ違和感を拭いきれないままだった。


「どれどれ」


「お」


ユリシスが私の後ろに回り、何の前触れもなく肩をモミモミと揉んできた。


「うわー……めちゃくちゃ固いね……」


一瞬びっくりしたけれど、ユリシスの手の大きさと強さがちょうどよくて、されるがままになってしまう。


「やっぱり凝ってる? ああ、そこ! めっちゃ気持ちいい! あ、その下と、肩甲骨あたりも! 首の後ろもあとでお願い!」

「注文多いなぁ……」


ユリシスは文句を言いながらも指定した部分を全部揉みほぐしていく。


(ああ、天国……)


「ありがとう、もういいよ。ユリシスも揉んであげようか?」

「あ、いや、俺はいいかな。満足したし……またやってあげるよ」

「? そう?」


何に満足したのかわからないけど、本人がいいなら無理強いはしないでおく。


「それじゃ、早速リス獣を見つけに行こうか」

「うん! 私ちゃんと予習してきたから、生息地もバッチリだよ!」


教科書に載っていた内容によると、リス獣の巣は木の幹の穴の中。

もしくは木の枝を集めて、背の高い木の上に巣を作る。


餌を探し求めて巣から降りてくるが、中々にすばしっこくて、人間にも慣れてないから見つけるとすぐに逃げてしまう。今回の授業の趣旨は、逃げられないよう工夫して、捕獲魔法で捕まえることだ。


ユリシスも知ってることだろうけど、お互いの復習として内容を共有する。


「オッケー。じゃあ、先に巣を探して、彼らが出てきたところを狙って捕獲魔法で捕まえるようにしようか」

「いいね。無理に追いかけないってことだね」

「うん、そう。たぶん、俺らが追いかけたら、何かしら事件が起きる気がするし」

「はは、だね……」


否定出来ないのが悲しい。

ポンコツの私たちは、何もやらかすことなく授業を終えることができるのか……


(いや、二回までは許容範囲だ!)


周りを見渡すと、もうリス獣を見つけて足で追いかけてるペアや、私たちと同じように巣を探そうと木登りしてるペアの様子が見える。


「ネモ、ここは激戦区だから、もっと奥に移動しよう」

「そうだね。穴場を探しに行こうか。思い切って庭園の端のほうまで行っちゃおう」


集合場所付近は混みあってるため、広く拡張された庭園の端を目指して歩いていく。


「似たような風景が続くね……迷子になりそう」

「大丈夫だよ。もし迷っても、制限時間が過ぎたら先生が見つけてくれるでしょ」


「……」

「……」


そこまで言って、二人して黙り込む。


「いま、めっちゃフラグ立ったよね」

「あ、ユリシスもそう思った? まぁ、最悪クロを呼び出すから安心して」

「契約獣って本当便利だね……俺も誰か契約しようかな」

「ぜひぜひ。でも、クロはダメだよー」

「わかってるよ、ネモのフェンリルが俺と契約するはずないし……」

 

話し出したら止まらない。

リス獣探しをそっちのけで喋りながら足を進めていく。


ユリシスと一緒だと気が楽だ。

キアラと喋ってるときのように、遠慮なく雑談ができるから。


おそらく、高等部に入ってから出来た異性の友人の中で、一番気兼ねなく話せるのは彼なのではないだろうか。


――先輩の場合……

気兼ねなく話せるというより、もっと話を聞きたいし、聞いてほしいという気にさせる。


(今日は会って話せるかな)


僅かな期待を胸に、そのためにはまずこの授業をなんとかしないと、と頭を切り替えた。



ずんずんと庭園の奥までやって来て、辺りが静かになったところでようやく足を止める。


(こ、これは……!)


太い木の根元に、小さな穴が開いてるのが見えた。


「ねえここ、木の根元のところに穴があるよ! 隣の木には巣も見える。ここで待機しようよ」


指を差して巣穴の場所を教えると、ユリシスもすぐに気付いて「お、当たりっぽいね!」と言ってくれた。


少し離れたところで、二人地面へと腰を下ろす。

静かにしてたほうがいいだろうと、二人とも一度お喋りを止めた。


とん。


肩に隣にいるユリシスの身体が当たった。

身体を横にずらすと、ユリシスも一緒に横にずれてくる。


(いや、ユリシスがこっち詰めたら意味ないじゃん)


抗議の意味を込めて、顔を向けてユリシスを見るも、彼は巣穴から目を逸らさない。


どうやらリス獣が出てくるのに集中しているらしい。


「……」


彼の集中を邪魔してはいけない。

私も見習って巣穴に目を向けるが――


(めっちゃ当たってる……)


ユリシスがさっきよりも徐々に身体をくっつけてくるから、そっちに意識がいってしまってどうにも集中できない。


たまらず、


「わ、私、巣穴覗いてくる!」


とその場を立ってしまった。


「え、気を付けて。あいつら意外と凶暴だよ」

「大丈夫大丈夫。それより、捕獲魔法の準備しといて」


平気だと手を振りながら、巣穴へとゆっくりと一歩ずつ近付く。

けれども、内心は平気ではなかった。


(……変に意識し過ぎちゃったかな)


無意識に胸に手を当てる。


ユリシスの身体が当たっていたことにドキドキしていたのか、リス獣を確かめることにドキドキしているのかはわからない。


ただ、いつもより確実に鼓動が早くなっているのを感じていた。



続きは水曜日の12時ごろ

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