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再会した先輩は心が壊れていました。~執着が止まらないなんて聞いてません~  作者: piyo
第一章 出会い編

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1.私と先輩のはじまりは、一つの魔法でした。

一気に五話投稿します。

「……少しだけでいい。このままで」


彼はそう言って、私の身体を抱き寄せた。


私がこのセリフを聞くのはこれで二回目。

そして、壊れかけた彼を見るのも――これが二回目。


前回と違うのは、私も彼を二度と離したくないと思ってしまったこと。

求められることに、私がどれほどの喜びを感じているか、この人は知ってくれているのだろうか。


ぎゅっと、力を込めて痩せた彼の身体を抱きしめる。


――次は決して離さない。


灰混じりの地面に小さな野花が咲き乱れる。

それは私が彼と最初に出会ったときに見た魔法と同じくらいに儚くて――


そしてどこか、

私たちのように危うかった。





「ねえ~ネモ。そろそろ休憩したら? というか寝ないの?」


ルームメイトのカタリナが欠伸をしながら私のことを机の横から覗き込んでくる。

気付けば寮の消灯時間。私だってそろそろ眠い。


「うーん……あとちょっとだけ……。もう一回……」


集中力なんてとっくに切れていたけれども、ほぼ意地になって机の上で魔法を試みる。


――ひゅん。


「あー! もうっ!」


これで何度目の失敗なんだろう。今ので気力も魔力も尽きてしまい「今日の私もポンコツ……!」と頭を机に突っ伏した。


「こんな初歩の課題の魔法ですら上手くいかない……

そろそろ留年か転科を勧められちゃいそうだよ……」


初級魔法に絶賛大苦戦中の私、ネモフィラ・フィリアスは、ローズ王国国立ローズシティナ魔法学園の生徒だ。

高等部の魔法学科に進学して、早二ヶ月。もう二か月も過ぎているというのに、課題で出る魔法は毎日失敗続きで、そろそろ心が折れかけている。


(明日は補習で居残り確定かな……ああ、憂鬱過ぎる)


いま私が失敗し続けている今日の課題――それは炎属性の魔法。

テキストどおりの手順で、呪文も間違っていないはずなのに……まったく全然これっぽっちもうまくいかない。

どうやっても炎が定着せず逃げていってしまい、その先へ進めない。本来は温度調整の課題のはずなのに……。


「はぁ……今日も寮の夕食、食べそびれちゃったよ……ひもじい……お腹すいた……」

「だから私が食堂に行こ、って誘ったときに一緒に行けばよかったのに~。ここ最近のネモ、スレンダーを通り越して貧相だよ」

「ひどい」


貧相とまで言われてしまったけど、事実なので何も返す言葉がない。学園に入学してから、確実に痩せ細っていってる気がする……


「ほんと、魔法学科は大変だよね~。魔法薬科の私の課題なんて、すぐに終わるようなやつばっかだし、そもそも宿題なんて頻繁に出ないし」

「言わないで。羨ましくなるから」


ゆるい調子で話しかけてくるカタリナは、私と同じ一年生だ。

けれど、彼女の所属する魔法薬科は、課題があったりなかったりと、かなり緩い。


対して、魔法学科は実技中心。

つまり、魔法で躓けば普通に詰む。

それでもって、課題の量はめちゃくちゃ多いという『厳しい学科』だったりする。

この学科の生徒の進路としては、王国軍の魔法部隊に行く人が大半らしいけど……正直なところ、私には関係ない話だと思っている。

だって、魔力はそこそこあるくせにセンスは壊滅的……体力も普通。

どう考えても軍隊向きではない。


「今からでも遅くないよ。うちに転科する?」

「やだよ」


ここは間髪入れずに否定させてもらう。


だって――


「あー! 負けるな私! 折れるな私!!

"憧れのあの人"みたいに魔法を使えるように、意地でも魔法学科にしがみついてみせる!」


机に顔を伏せたまま、今日も今日とてやけくそ気味に根性論を口にする。

この光景に慣れっこのカタリナは、「はいはい」と適当に受け流し二段ベッドの上へと登っていった。


(ああ、今日も私をおいてもう寝るんだね……)


少しばかり寂しい気持ちになっていると、カタリナがくつろいだ状態で、「そういえば」とベッドの上から話を切り出してきた。


「明日、"前・第四学年の先輩方"が学園に戻って来るんだっけ?」


カタリナのひと言に、疲れていたはずの体が息を吹き返したように瞬時に反応した。


「そう、戻って来るんだった!!! うわっ」


伏せていた顔をがばりと上げ、彼女の方へ勢いよく向き直ると、興奮のあまり椅子が倒れそうになった。


「いや、いきなりテンション上がり過ぎでしょ」


カタリナは呆れたように言うけど、こればっかりは仕方がない。"あの人"のことを思うだけで、心が一気に弾み出す。


(――うまくいかない課題に萎えてすっかり忘れてた。明日は待ちに待った、『あの日』なんだった!)


「だって、ついにだよ!? やっと“エンデ先輩"を学園で拝める日がやって来るの!

私、楽しみで仕方ない!」


――私が、向いてないのに無理して魔法学科に進学した理由。


すべては――"あるきっかけ"で私の憧れとなった、"ダリオ・エンデ先輩"と、その魔法にあった。



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