第33話 え、パパが勇者!? セーフティゾーンで厄介な人たちに絡まれたー!? 再会、《紅蓮の輪》!
第五階層
セーフティゾーン。
野球場ほどの広さがある空間には、多くの冒険者たちが思い思いに腰を下ろし、食事をとったり、装備の手入れをしたりしながら休憩している。
あちこちから聞こえてくるのは、これまでの階層の話題だ。
「第2階層、マジでキツかったわ……」
「ああ、あそこなー、帰りたくなった」
「いやー、そこよりもよー……」
冒険者たちが各階層の情報を交換し合う中――
神崎家ともっふるが、ゾーンの入口から姿を現した。
亮「おお〜っ!ここが噂のセーフティゾーンか!広いな!」
あんな「やっと休憩できるね……」
みゆ「湧き水もある。補給には最適ね」
もっふる「ピィ♪」
その瞬間――
冒険者たち「おおっ! 来たぞ!」
「神崎家じゃねぇか!」
「第五階層まで来るとは思わなかったぜ!」
ワッと冒険者たちが集まってくる。
中には、王都ギルドで顔を合わせたことのある者も混じっていた。
冒険者A「いや〜、すごいじゃないか!正直ここまで来るなんて思わなかったよ!」
冒険者B「あんなちゃん、みゆちゃん、無事で何よりだ!」
冒険者C「もっふるも元気そうで良かった!」
もっふる「ピィー♪」
亮「いやいや、みんなのおかげですよ!」
あんな「ありがとうございます」
みゆ「問題なく進行できました!」
もっふる「ピィー♪」
笑顔と歓声に包まれる神崎家。
その温かな空気に、冒険者たちの笑顔が柔らかく溶け込んでいた。
――その時だった。
「へぇ……Fランクがここまで来たんだ」
冷たい声が、場の空気を一気に変えた。
ざわめきが止まり、冒険者たちの視線が一斉にそちらへ向く。
焚き火の奥から、五人のパーティが歩いてきた。
亮「おお!紅蓮の花の人たち!」
セリナ「……は?」
リュシア「……花?」
ミレイア「……あら」
あんな「パパ、花じゃなくて"輪"だから」
亮「え?ごめんごめん!紅蓮の輪さんだったね!」
その瞬間――
セリナの表情が、一気に険しくなった。
セリナ「……ふぅん。Fランクって、パーティ名も覚えられないんだ?」
リュシア「知識がないのは仕方ないわよね。Fランクなんだから」
ミレイア「あら、でも素敵ですよね。無知って、ある意味"幸せ"ですもの」
三人の女性が、次々と言葉を重ねる。
その声には、明らかな嫌味が込められていた。
亮「え? でも、みなさんもずっとFランクって言ってませんか?」
セリナ「はーー?ワザとに決まっているでしょ!」
リュシア「嫌味よ!い・や・み!分かる?」
レオン「二人とも、そのへんで……亮さん、本当にすまない」
亮「いえ、大丈夫です。こちらこそです」
セリナ「ねぇ、あなた剣士なの?」
視線が、あんなへ向けられる。
あんな「……はい」
セリナ「ふぅん……見た目は可愛いけど、実力はどうかしらね」
リュシア「魔法使いのあなたも、きっと"基礎"すらまともに学んでないんでしょうね」
みゆ「……ご心配なく!」
リュシア「へぇ……そう。まあ、あなたがどうであれ、私たちには関係ないけれど!」
ミレイア「まぁまぁ、みなさん。初心者さんたちなんですから、優しくしてあげないと」
その"優しさ"という言葉には、どこか見下したような響きがあった。
もっふる「ピィ……」
不安そうにもっふるが亮の足元へ寄ってくる。 亮はそっと手を伸ばし、頭を撫でた。
亮「もっふるが怖がってるよ? なんでそんなにピリピリしてるの?」
ガルド「いや、別に。ただ……Fランクがここまで来るのは珍しいからな」
レオン「……まぁ、気をつけて進んでくれ」
レオンの声には、どこか申し訳なさそうな響きがあった。
セリナ「ねぇ、あなたたち。ここから先の階層、甘く見ない方がいいわよ」
リュシア「Fランクには"荷が重い"ってこと、理解してる?」
ミレイア「私たちみたいな"経験豊富"なパーティでも苦戦するのよ? 無理はしない方がいいわ」
その言葉の一つ一つが、まるで棘のように突き刺さる。
あんな「……ありがとうございます」
みゆ「……その点は問題ありません」
二人は、わずかに視線を落とした。
亮「いや〜、アドバイスありがとうございます! 気をつけますね!」
セリナ「……ふん」
リュシア「……そう」
ミレイア「……頑張ってね」
三人の女性は、冷たい視線を残したまま、踵を返した。
ガルド「それじゃ、先に行く。健闘を祈るよ」
レオン「……気をつけて」
《紅蓮の輪》は、そのままゾーンの出口へと向かっていった。
その背中が見えなくなると――
冒険者A「……はぁ。悪かったな、神崎家」
冒険者B「入口でも絡まれてたから知ってると思うが、あいつら、いっつもあんな感じなんだ」
冒険者C「いや……あのパーティ、特に“あの三人”が厄介でな」
亮「え、あれって……普通なんですか?」
冒険者A「ああ。《紅蓮の輪》は実力はあるんだが……」
冒険者B「特にセリナとリュシア、ミレイアの三人は厄介だ。プライドが高くて、他のパーティを見下す癖がある」
冒険者C「ガルドは一応リーダーだが、完全に押され気味。レオンは……まぁ、板挟みって感じだな」
あんな「……そうなんだ」
みゆ「……なるほど」
冒険者A「特に、あんなちゃんとみゆちゃんは気をつけた方がいい」
あんな「え? 私たち?」
冒険者B「ああ。セリナは剣士としてのプライドが高い。あんなちゃんみたいな"可愛くて強い"剣士は、たぶん気に入らない」
冒険者C「リュシアも同じだ。みゆちゃんみたいな"若くて優秀"な魔法使いは、ライバル視される」
亮「え……あんなとみゆが?そんなに目立つのか……ま、美人姉妹だしな!」
冒険者B「相変わらずだな!心配はいらないと思うが本当に気をつけてくれ」
冒険者C「特に、これから先の階層で鉢合わせたら……トラブルになる可能性がある」
あんな「……はい。気をつけます。ありがとうございます」
みゆ「……情報、助かります」
もっふる「ピィ……」
亮は、小さくため息をついた。
亮「……なんか、スローライフって難しいな」
あんな「パパ、今さら気づいたの?」
みゆ「統計的に、スローライフ達成率はゼロです」
亮「えーー! ゼロ!?」
冒険者たちが、思わず笑った。
冒険者A「ははっ、神崎家は相変わらずだな」
冒険者B「でも、そういうところが好きだぜ」
冒険者C「頑張ってくれよ」
温かな笑顔に包まれて、神崎家ともっふるは少しだけ肩の力を抜いた。
こうして――
セーフティゾーンで再開した厄介なパーティ《紅蓮の輪》。
神崎家はまだ知らない、これから先の"トラブルの予感"を胸に、次の階層へと向かう準備を始めた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
ダンジョンの奥でも騒がしく続いていく――。
セーフティゾーンを抜けた神崎家を待っていたのは、まさかの『床からの狙撃』!?
安全なはずの足元が光り出し、パパの悲鳴がダンジョンに響き渡る!
次回、第34話『え、パパが勇者!? 床が光って撃ってくるんだけどー!? 恐怖のタイルと必死のモグラ叩き!』
開幕です!




