第163話 え、パパが勇者!? ギルドへ行ったら娘たちの親衛隊とおっさん空間に完全同期!?
王都冒険者ギルド。
ギルド内は、今日も大勢の冒険者達で賑わっていた。
依頼がびっしりと貼られた掲示板の前。
賑わう受付の前。
あちこちから豪快な笑い声と荒っぽい怒鳴り声が飛び交う、いつも通りの活気あふれる空気。
そして神崎家も、すっかりそのいつもの光景の一部になっていた。
亮「なんか落ち着くなぁ……」
あんな「パパ、完全に常連のおっさんみたいになってるよ」
亮「常連みたいな感じだろ。このざわめきが妙に心地いいんだよ」
みゆ「いつもの席空いてる」
亮「ほんとだ」
ベアトリス「素晴らしいですわ!我が主の席が常に確保されているなど、さすがギルドですわ! 」
もっふる「ピィー♪」
「おっ、亮さん達だ!」
神崎家が姿を現した途端、近くにいた若手冒険者達が親しげに手を振ってきた。
「この前の訓練、騎士団ですげぇ話題らしいっすね!」
「団長が本気だったって聞きました!」
亮「なんで冒険者側まで広がってるんだよ……」
あんな「情報収集は冒険者は得意としているよね」
みゆ「肯定。不確定要素の排除。情報収集能力は命に関わる場合もあります」
ベアトリス「皆さまがパパの偉大さに気づくのは、当然のことですわ!」
もっふる「ピィー♪」
ギルドの奥の席から、数人の若手冒険者がガタッと勢いよく立ち上がった。
なぜかやたらと姿勢が良い。
そして、一糸乱れぬ動きでこちらへ突進してきた。
「あんなさん、お疲れ様です!」
あんな「え?」
「今日も可愛いです」
「あ、荷物持ちます!」
「席空いてます!」
亮「なんだこれ!?」
若手冒険者達は、キラキラした目であんなを見ていた。
あんな親衛隊だった。
あんな「いや、自分で持てるから……」
「さすがしっかりしてる……!」
「現実感覚が違う……!」
「あんなさんに憧れて、俺、家計簿つけ始めました!」
どうやら市場でのやり取りや節約話が、冒険者達の間でも妙に刺さったらしい。
「あんなさんの“無駄遣いは敵”って言葉、心に響きました!」
あんな「言ったかな……」
その一方。
ギルドの別の一角を見てみると、みゆ親衛隊がみゆを囲んでいた。
「みゆ様……!」
「今日も尊い……」
「分析してー」
みゆ「親衛隊はいりません」
「その冷静な言い方が、最高だー!」
ギルド隅のソファでは、女性冒険者がもっふるを膝に乗せていた。
ふわふわの毛並み。
気持ちよさそうな表情。
それを周囲の冒険者達が、ありがたいものを見る目で眺めている。
「今日も疲れが浄化される……」
「生きてて良かった……」
「もっふる様ぁ……」
完全にギルドの癒し空間だった。
一方で、亮はギルド奥のおっさん冒険者達に捕まっていた。
「おう亮さん!」
「座れ座れ!ちょうどいいところに来た! 」
「おい、この前の話の続きを聞かせてくれよ! 」
亮「この前の続き?どんな話だった?」
完全におっさん空間だった。
「だからよ、忘れたのかよー」
「やっぱ保存食は味がなぁ……」
「あー、分かる分かる。携帯食料の味気なさはテンション下がる」
「若い頃は無茶したよなぁ!」
「分かる」
いつものように異常に馴染んでいる。
あんな「パパ、相変わらずだよね」
みゆ「肯定。パパのおっさん適応率は常に上限を突破しています 」
リーナも笑っていた。
リーナ「亮さん、冒険者向いてますよね」
あんな「今さら。これでも一応、うちの大黒柱なんだけどな」
みゆ「一応、冒険者」
その一方で、受付前では、職員達が依頼書を整理していた。
いつもの騒がしい雰囲気の中に、どこか少しだけ、ピリピリとした緊迫感が混じりはじめている。
あんな「最近あわただしくなってきてるね」
リーナ「そうなんですよ、南方方面の依頼が急増してるんです」
あんな「南方?」
リーナ「火属性系魔物の討伐ですね。護衛依頼も増えてまして……」
ベアトリス「火属性ですの?」
みゆ「……偏っています」
亮「南と言えば米だな」
もっふる「ピィー♪」
こうして――
王都での日常は今日も騒がしく、そして少しずつ“異変”の気配を飲み込みながら続いていくのであった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
平和な日常の中で、火属性の異変という小さな波紋を静かに広げ始めていた。
王都の南方で突如巻き起こる、火属性魔物の異常活性化パニック!?
ギルド中が前代未聞の不穏な空気に包まれる中、パパのレーダーがまさかの「幻の主食・米」の噂を大感知。
世界を揺るがす危機的兆候を完全無視して暴走するパパの米欲を、みゆが秒速でデータ分析し、あんなの鋭いツッコミがギルドの空気を切り裂く!?
次回、第164話 え、パパが勇者!? 暴走寸前のパパの米欲をみゆが冷静にデータ分析してあんなが鋭く突っ込む、最強姉妹の日常連携!?
不穏な異変の足音が迫る中、米を求めて動き出す神崎家特有のズレまくった大冒険(?)が幕を開けるー!?




