第136話 え、パパが勇者!? 娘たちの「圧倒的高み」に騎士団が心酔ー!? 王都の精鋭を全員ファンに変えた直後、パパが特大の爆弾発言を投下したんですがー!?
王都の訓練場は、独特の緊張感を孕んだざわめきに包まれていた。
砂地の中央を囲むように、銀の甲冑を纏った騎士たちが壁のように立ち並び、その視線は一点へと注がれている。
あんな「……人、多すぎない?」
みゆ「分析。見学者を含め、通常時の150%以上を計測。注目度は極めて高いです」
ベアトリス「すごいですわ! 皆様やる気に満ち溢れていますわ!」
もっふる「ピィー!」
亮「なんかお祭りみたいだな」
あんな「違うわよ、パパ。みんな真剣なんだからね」
視線の先、中央には威風堂々と腕を組む騎士団長ライオネル・グランバーグ。
その隣には、魔術師団長マルティナが控えていた。
ライオネルは、のんびりと近づいてくる亮たちを認めると、不敵に笑みを浮かべる。
ライオネル「来たか、神崎。待っていたぞ」
亮「呼ばれたからな」
あんな「遅くなりました」
みゆ「遅刻ですね」
ライオネル「遅刻ではないぞ。時間までは決めていなかったからな」
ルーク「亮さん、来てくださってありがとうございます。皆、この日を心待ちにしていたんですよ」
案内役のルークが爽やかな笑顔で亮に歩み寄る。
ライオネルが一つ頷くと、周囲の若手騎士たちが一斉に背筋を伸ばした。
ライオネル「これより神崎家を交えた模擬戦を行う。今回は我ら騎士団側からの強い要望だ。若手ども、今日お招きしたのは貴様らが容易に胸を借りられる御方ではないということを、その身に刻み込め。貴様らの熱意に免じて、特別にお時間をいただいたのだからな」
その言葉に、騎士たちの視線がさらに鋭さを増し、熱を帯びる。
あんな「……なんか、ハードルを上げられたような…」
みゆ「期待値大です。ですが、訓練目的ですので通常で大丈夫です」
ベアトリス「わたくし、お役に立てるなら光栄ですわ!」
亮「よーし、じゃあ……」
真っ先に名乗りを上げたのは、気合十分のベアトリスだった。
ベアトリス「まずはわたくしが参りますわ!」
あんな「パパは大人しく見学しててよね。下手に手を出すとまた何が起きるかわからないから」
みゆ「パパの『やらかし』は計算外の変数が多すぎます。大人しく待機を推奨」
亮「はい……。じゃあ、応援してるよ」
ベアトリスが砂地の中央へ進み出ると、騎士団側から一人の若手騎士が前に出た。
騎士「よろしくお願いします!」
ベアトリス「お手柔らかに、お願いしますですわ!」
もっふる「ピィー♪」
互いに剣を構えた瞬間、先ほどまでの穏やかな空気とは変わり、静寂が場を支配した。
次の瞬間、騎士が弾かれたように踏み込む。
その一撃は若手とは思えぬ速さだったが、ベアトリスの動きはそれを遥かに凌駕していた。
剣先が触れ合うかという刹那、ベアトリスは最小限の動きで相手の剣を弾き飛ばすと、一気に間合いを詰めた。
騎士「っ……!?」
鋭い連撃に防戦一方となった騎士は、体勢を崩され、寸止めの一撃がその喉元に向けられたところで勝負は決した。
みゆ「終了。勝者、ベアトリス。所要時間、わずか32秒です」
あんな「早いわね。ベアトリス、王都に来てからさらにキレが増してる?」
亮「おおー、いい動きだったな。ベアトリス、すごいぞ」
ベアトリス「ありがとうございますですわ! 良い汗をかきましたわ!」
もっふる「ピィー!」
騎士は茫然自失といった様子だったが、深く頭を下げた。
騎士「……負けました! 非常に勉強になりました!」
その後も次々と血気盛んな騎士たちが名乗りを上げる。
ベアトリスが、そして途中から交代したあんなが、それぞれのスタイルで騎士たちを圧倒していった。
訓練場に広がるのは、恐怖ではなく純粋な驚きと尊敬の賑やかさだ。
ライオネルは腕を組んだまま、静かに口を開いた。
ライオネル「……変わらんな。むしろ以前よりも動きが洗練されている。ルーク、どう思う」
ルーク「ええ。あんなさんは更に磨きがかかっているようですし、ベアトリスさんは…さすが、亮さんと旅をしているだけあります。彼女たちは自分たちの力を完全に制御し、相手のレベルに合わせていますね」
ライオネル「十分だ。そこまで!」
ライオネルが手を上げると、戦いの動きがぴたりと止まった。
亮「二人ともカッコよかったぞー」
ベアトリス「あー、楽しかったですわ!」
あんな「いい運動になったね」
みゆ「データの蓄積完了。有意義でした」
そこへ、ライオネルがゆっくりと歩み寄る。
ライオネル「あんな殿、疲れているところ申し訳ないのだが、最後にルークとも対戦してもらえるかな。本人たっての希望なのだ」
あんな「ルークさんと? 構わないですけど……」
ルーク「今の自分が、あんなさんにどこまで通用するか。お願いします」
場に、今日一番の緊張が走る。
亮「ルークさん、気合入ってるな。強いのか?」
ライオネル「亮、貴様の娘にどこまで食らいつけるか……本人なりに精進してきたようだからな。見守ってやってくれ」
亮「ふーん、頑張れールークさん」
みゆ「パパ、関心なさすぎ。温度差が激しいです」
ベアトリス「あんなおねー様、頑張ってくださいですわ!」
もっふる「ピィー!」
あんなとルークが相対する。
ルーク「行きます、あんなさん。全力です!」
爆発的な踏み込みと同時に、
キィィン!
という高い金属音が響き渡った。
これまでの模擬戦とは明らかに次元の違う速度で、剣と剣がぶつかり合う。
あんな「早い……!」
ルークの剣は鋭く、重い。
続けざまに放たれる連撃の音が、
キン、カン
と訓練場にこだまする。
騎士たちは息を呑み、ライオネルもまた、その鋭い眼光で二人の動きを追っていた。
ルーク「あんなさん、本気になってください!」
加速するルークの猛攻。
しかし、あんなはその場で一歩も動くことなく、最小限の剣捌きだけで全ての攻撃をいなしていく。
ルークの剣があんなの防陣を突破できず、自分との力量の差を悟った時、勝負は決した。
そして、一瞬の静寂。
ルーク「……参りました。ありがとうございました」
あんな「ありがとうございました」
場が静まり返る中、ライオネルがゆっくりと拍手を始めた。
それに呼応するように、騎士たちからも一斉に拍手が湧き起こる。
ライオネル「ルーク、良い勉強になったな。若き騎士たちよ、これがお前たちの目指すべき高みだ。己の実力を過信せず、明日からも精進せよ!」
騎士たち「はっ!」
一斉に頭を下げる騎士たちに、あんなは少し照れたように笑った。
あんな「……これ、完全に教官扱いだよね」
みゆ「肯定。実質的な指導的立場の確立を確認」
亮「いいじゃん、あんな。先生みたいで似合ってるよ」
ベアトリス「皆様の尊敬の眼差し、最高ですわ!」
もっふる「ピィー!」
騎士たちの視線は、もはやただの「お客さん」を見るものではなかった。
そこには明確な
尊敬と、目標としての情熱が宿っていた。
――その時、亮がのんびりと首を傾げた。
亮「ところでさ、ライオネルさんは参加しないの? せっかくだし、団長さんとも一戦どう?」
あんな「ちょっとパパ! 何を言い出すのよ!相手は一国の騎士団長なのよ!? 」
みゆ「パパ、不敬罪レベルの暴言。相手は国家の重鎮です」
ベアトリス「でも……わたくしも気になりますわ。ライオネル様の実力、見てみたいですわ!」
もっふる「ピィ……ピィッ!」
亮の無邪気な一言に、ライオネルの瞳が怪しく光った。
こうして――
実力を見せつけた模擬戦は、亮の「余計な一言」によって誰も予想しなかった方向へと加速していく。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
騎士団長の闘争心に火をつけてしまった戦慄を乗せて、さらなる波乱へと突入するのだった。
もはや「可愛い娘」の域を突破!?
王立魔術師団が「みゆ様」の一挙手一投足にひれ伏す、前代未聞の崇拝事態が発生!?
初級魔法一発でエリート集団を戦慄させ、放たれる言葉はすべてが「神の啓示」!
パパが「授業参観みた〜い」と鼻の下を伸ばしている間に、娘たちは国家の存亡を左右する「特別教官」へ祭り上げられ――!?
親バカ全開の亮をよそに、一家の社会的地位が天井知らずのストップ高!?
勘違いと尊敬のインフレが止まらない!
次回、第137話 え、パパが勇者!? 娘が「生ける魔導書」として崇拝対象に格上げー!?
パパが授業参観気分でニヤけている間に、一家の立場が「国家顧問級」に爆上がりですかー!?
パパ、次はあなたの番ですよ?
王国最強のライオネル団長が、抜き身の闘志を抱いて手ぐすね引いて待ってますー!




