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パパ、またやらかしてる! 〜50歳天然パパ、娘2人ともっふるで挑む最強Fランク家族の無自覚無双スローライフ〜  作者: Kou
第十二章 海底編〜完璧主義を打ち砕け! 迷える家族を救ったのはパパの愛⁉〜

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第111話 え、パパが勇者!? 10年越しの誓いと、娘たちへ贈る「変わらない笑顔」!? 定義不能な家族の愛で、海底の闇を光に変えろー!?

光がほどける。

気づけば、亮は静かな部屋に立っていた。

白い壁、消毒液の匂い。

聞き覚えのある、規則的な機械の音。


亮「……ここは」


分かっている。

忘れるはずがない場所だった。

視線の先、病院のベッドの上には一人の女性。


妻「……久しぶりね」


穏やかな声に、亮は動けなかった。


亮「……ああ」


それだけが、やっと喉を突いて出た。


妻「変わらないのね」


亮「そっちもな」


軽口のつもりだったが、声が少しだけ(かす)れた。

妻は、やわらかく笑った。


妻「ちゃんとやってるみたいね」


亮「……まあな」


短く答える。

言葉は少ない。

でも、それで十分だった。

しばらくの沈黙。

不思議と、嫌な静けさじゃない。

ただ――懐かしい。


妻「ねえ。もう、いいのよ」


亮「……なにがだよ」


分かっているのに、亮は聞き返す。


妻「頑張りすぎなくていいの。十分よ。あなた、ずっと笑っていたでしょ。無理してでも」


亮「……」


妻「もう、楽になっていいのよ」


その一言が、静かに、深く刺さる。

10年前、あの日から。

亮は、娘たちの前で一度も弱音を吐かなかった。

自分が折れれば、あの子たちまで折れてしまう。

そう信じて、がむしゃらに「明るい父親」を演じ続けてきた歳月が、どっと肩に伸しかかる。


亮「……ああ。そうかもな」


小さく、息を吐く。

認めるように言うと、全身の力がふっと抜けた気がした。

このまま、この穏やかな時間に身を委ねてしまいたいという誘惑。

だが、亮はその重みに一度だけ揺れ――

そして、自らの足でぐっと床を踏みしめた。


亮「でもさ」


大きく目を開ける。

そこにあるのは、諦めではなく、静かな決意だった。


亮「俺、決めたんだよ」


視線を上げ、妻をまっすぐに見つめる。


亮「あの時、俺はお前に何も出来なかった。それは消えない。……でも、今は違うんだ。笑顔でいる、そう決めたんだよ」


あんなと、みゆの顔が浮かぶ。

泣き顔じゃない。

怒った顔でもない。

夕飯の献立に文句を言いながら、それでも幸せそうに笑ってる顔。


亮「泣かせるのは、もう十分だからな。……俺はあの子たちの、父親なんだ」


亮は、少しだけ目を細めて笑った。

それは、無理やり作った笑顔ではなく、この10年を戦い抜いた男の、静かな自負だった。

妻は、しばらく黙っていた。

そして、慈しむような眼差しで亮を見つめ、10年間のすべてを報わせるように言った。


妻「いいお父さんだったわ」


亮「……過去形やめろ。まだ現役だ」


少しだけの間。


亮「……ありがとな」


妻「ふふ」


小さく笑うその笑顔は、昔と同じだった。

だが、その瞬間――

カチリと景色が歪んだ。


白い病室が溶けるように崩れ、見慣れた日本の神崎家のダイニングへと書き換わる。

西日の差し込む窓際に、幼い姉妹が座っていた。


あんな「パパ、お腹すいた」


みゆ「ごはん。早く」


亮「……お、おぉ? 了解、了解。今作るからな」


気づけばエプロン姿でキッチンに立っていた。

手が勝手に動く。

包丁を握り、野菜を刻み、コンロに火をつける。

チチチッ、ボッという音。

油の跳ねる音。

それはあまりに「正しい日常」だった。


だが、亮の手が止まる。

振り返れば、やはり同じ光景。

同じ言葉。


あんな「パパ、お腹すいた」


みゆ「ごはん。早く」


感情の読み取れない、ガラス玉のような瞳。

三度目、亮は包丁を置いて、首を横に振った。


亮「……なんかさ。これ、違くない?」


その瞬間、部屋から色彩が失われた。


あんな「違わないよ。パパは、こうして私たちのために『普通』でいてくれた」


みゆ「ごはんを作って、そばにいる。それがパパの定義です」


亮「……うーん」


亮は少し黙って、いつものように後頭部をポリポリとかいた。


亮「まぁ、それもそうなんだけどさ。でもさ。それ“だけ”じゃないだろ? 俺たち」


あんな「……それ以外に、何があるの?」


みゆ「定義してください」


亮は、あっさりと言った。


亮「知らん」


空間が、みしりと音を立ててきしむ。


亮「正解とか、立派な父親の定義とか、俺にはよく分かんねぇよ。勇者になれって言われても、何していいか分からなくて娘に怒られてばっかりだしな」


亮はゆっくりと一歩、前に踏み出した。


亮「でもな。腹減ったって言われたら、たとえ異世界でも飯は作るし。泣いてたら、理屈抜きで隣に座るし。困ってたら、死ぬ気でなんとかする。……それが普通かどうかなんて、どうでもいいんだよ。俺が、お前たちのパパでいたいから、そうしてるだけだ。それで、よくないか?」


世界が音を立てて砕け散り始める。


天の声「……曖昧。非効率。定義不能。存在価値の証明に、失敗しています」


海底王国のシステムが下す冷徹な声に、亮はどこまでも楽しそうに頷いた。


亮「うん、そうだな。俺、昔から通知表に『計画性を持ちましょう』って書かれてたしな。でも、計画通りにいかないから、面白いこともあるだろ?」


亮は、ふっと表情を緩めた。


亮「……今行く」


亮は、躊躇なく光の中へと足を踏み出した。

その瞬間、世界が音を立てて砕け散った。

幻影の娘たちが消え、真っ白な闇が光に変わる。


次の瞬間。

亮は、元の場所に立っていた。

周囲には、心配そうに駆け寄ってくるあんな、みゆ、ベアトリス。

そして足元でピィピィと鳴いているもっふる。


亮「……ん? あれ、終わりか?」


何事もなかったかのように鼻をかく亮の背後で、海底王国のシステムが静かに、しかし決定的な「未定義エラー」を吐き出していた。


女王(……試練を、一顧だにせず通り抜ける人間がいるなんて……)


玉座で全てを観測していた女王の指先が、わずかに震えていた。


あんな「パパ! パパが最後だよ」


みゆ「全員揃いました」


亮「俺が最後か、待たせたな」


亮の屈託のない笑顔に、娘たちは顔を見合わせた。

あんなは深い溜息をつき、みゆは静かにデータを閉じ、ベアトリスは「やはりパパは底知れませんわ!」と感動している。

結局、彼が何を見たのか、その内側でどんな決断をしたのか。

それは誰にも語られない。

ただ、神崎亮は神崎亮のまま、何の迷いもなく、愛する家族の先頭を歩いていく。


こうして――

何が正解かよく分からないまま、それでも「自分」であることを一度も疑わなかった父は、海底王国の最高難易度の試練を、文字通り「散歩」するように越えてしまった。

ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は

いよいよ試練を終えた一家への、女王による「最終評価」が下される。

海底王国編、ついにクライマックスへ!

それぞれの「強さ」を見せた家族に、女王が告げる言葉とは――!?


試練の報酬は「徒歩」での強制送還!?

女王様、うっかり術式を忘れてスローライフ(物理)が開幕!?

海底王国の深淵で、家族それぞれの「弱さ」を「強さ」へと昇華させた神崎家。


「支える力」「見通す力」「選ぶ意志」「踏み出す勇気」


そして——システムさえもさじを投げた「定義不能なパパの愛」!


バラバラな個性がパズルのように噛み合い、絶望の試練を「家族の思い出」に塗り替えた一行に、女神様も思わずニッコリ!


「あ、送り届けるの忘れた……」——頬を染める女王様の天然ミスで、深海から地上まで決死のハイキング決定!?


次回、第112話 え、パパが勇者!? 女王が認めた「バラバラで最強」な家族の絆!? 試練の先の長い帰り道、五人で歩けばそれもスローライフの1ページー!?


「お腹空いたー!」と叫ぶパパを先頭に、暗い海底の帰り道さえも賑やかな遠足に変えてしまう。

絆を深めた五人と一匹、次なる目的地は……やっぱり「地上のお米」!?


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