表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パパ、またやらかしてる! 〜50歳天然パパ、娘2人ともっふるで挑む最強Fランク家族の無自覚無双スローライフ〜  作者: Kou
第十二章 海底編〜完璧主義を打ち砕け! 迷える家族を救ったのはパパの愛⁉〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/147

第109話 え、パパが勇者!? 騎士道の教本をポイして火魔法が大暴走!? 救出ついでに街をキャンプファイヤーにしちゃう、爆裂お嬢様(ベアトリス)のパニック試練ー!?

ベアトリス「……ここは、一体どこかしらですわ」


ベアトリス・グラーディオが重い瞼を持ち上げた瞬間、視界を焼き尽くしたのは、海底王国の穏やかな蒼ではなかった。

鼻を突く熱風。

爆ぜる火の粉。

そして、鼓膜を劈くような無数の悲鳴と、獣の咆哮。


ベアトリス「きゃあああああ!! 燃えてますわ! 街が、街がキャンプファイヤー状態ですわ!」


反射的に叫んだ彼女の目の前には、崩壊しつつある市街地が広がっていた。

逃げ惑う人々、瓦礫の下で助けを求める掠れた声、そしてそこかしこで牙を剥き、暴れ回る小型の魔物たち。


ベアトリス「……はっ、落ち着きなさいベアトリス。これは試練、試練ですわね」


すっと背筋を伸ばし、愛剣の柄に手をかける。

その表情には、名門グラーディオ家の娘としての、そして騎士見習いとしての凛とした光が宿っていた。


ベアトリス「ならば――騎士として、神崎家の一員として、この窮地に応えるのみだわ!」


火災、魔物、要救助者。

情報の濁流が押し寄せる。

ベアトリスの脳内では、幼い頃から叩き込まれた「騎士道の教典」が高速でページを捲られていた。


「騎士とは、常に冷静沈着であれ。個別の情に流されず、全体の利益を優先し、最適なる正義を執行せよ」


その時、目の前の幻影に二人の姿が重なった。


あんな(幻影)「落ち着いて、順番に対応すれば大丈夫よ。一人で抱え込まないで」


みゆ(幻影)「最適解は、全体避難の誘導です。個別の事象に囚われるのは、全体の生存率を下げる非合理な行為です」


ベアトリス「お二人とも……! ああ、なんて完璧な判断ですの……! 左様ですわ、私はまだ未熟。ならば、お二人が示される『正しさ』を、そのままなぞれば良いのですわ!」


ぐっと拳を握り、彼女は喉が張り裂けんばかりの声で叫んだ。


ベアトリス「聞きなさい! 全員、騎士の誘導に従って落ち着いて行動するのですわ! 順番に避難を開始しなさい! 魔物は私が食い止めますわ!」


だが、現実は無情だった。


「無理だ、子供がまだ中にいるんだ! 見捨てられるか!」


「順番なんて待ってられるか! どけ、邪魔だ!」


「騎士様なら、今すぐこの火を消してくれよ!」


ベアトリス「そんな……手順通りに、正しく導いているはずなのに……っ!」


混乱は収まるどころか、パニックとなって拡大していく。


マニュアル通りの「正解」が、目の前の混沌に一切通用しない。

焦燥がベアトリスの心を蝕む。


(……どうして? 私は『正しい騎士』の振る舞いをしているはずなのに。なぜ、誰も救われないのですの?)


その時、轟音とともに目の前の商店が崩落した。


バキッ――!!


舞い上がる土煙の向こう、瓦礫の山に一人の女性が閉じ込められる。

伸ばされた手、絶望に染まった瞳。


ベアトリス「……っ! 規律を守って全体を避難させるべきか、それとも目の前の一人を……。ああ、教本には……教本にはなんて書いてありましたかしら……!」


思考が空回りし、足がすくむ。


『一人のために全体を危うくする者は、騎士にあらず』


頭の片隅で、厳格だった父の声が響く。

けれど、あんなならきっと駆け寄るだろう。

みゆなら瞬時に救出ルートを計算するだろう。

「正しい騎士」であろうとすればするほど、彼女の体は重鉛のように動かなくなる。

自分が信じてきた「正しさ」が、今、目の前の命を殺そうとしていた。


ベアトリス「私は……私は、どうすればいいのですわ……!」


立ち尽くす彼女の耳元で、呆れたような、しかしひどく安心する声が響いた。


亮「……お前さ。難しく考えすぎじゃね?」


振り向くと、そこにはいつもの、笑顔の亮が立っていた。


ベアトリス「パ、パパ!? いつの間に……! ここは危険ですわ、下がっていてくださいですわ!」


亮「全部ちゃんとやろうとしてるだろ。……無理だって、そんなの」


亮は、燃え盛る炎を眺めながら、事も無げに言った。


亮「俺、難しいことは分かんないけどさ」


ベアトリス「で、でも! 正しいやり方を選ばなければ、私は立派な騎士になれませんわ! 神崎家の一員として、ふさわしい人間にならなければ……っ!」


亮「ふさわしいとか、どうでもよくないか?」


亮は肩をすくめて、ベアトリスの目を真っ直ぐに見据えた。


亮「正しいかどうかよりさ。――今、助けたいかどうかだろ」


ベアトリス「……っ!」


その一言が、彼女を縛り付けていた


「借り物の正義」


という名の鎖を、粉々に打ち砕いた。


瓦礫の中の人。

伸ばされた手。

震える吐息。


自分は、誰かに認められるための「完璧な騎士」になりたかったのか?

それとも、この温かな家族の側にいたいと願った、ただの「自分」になりたかったのか。


ベアトリス「……左様、ですわね。パパのおっしゃる通りですわ」


小さく、憑き物が落ちたように微笑む。

これまで彼女を支えていたのは、教本に書かれた冷たい文字だった。

けれど、今彼女を突き動かしているのは、胸の奥で燃える、熱いほどの我儘だ。


ベアトリス「規律も、手順も……確かに大事ですわ。立派な騎士ならば、それらを守るべきですわ。でも――」


一歩、踏み出す。


ベアトリス「今の私には、そんなものより大事なものがありますの!」


走り出す。


重い甲冑の音を響かせ、彼女は「正解」を捨てて「意志」を選んだ。

瓦礫の前に立ち、全魔力を指先に集中させる。

あんなのような包容力も、みゆのような計算力もない。

ベアトリスにあるのは、不器用なまでの真っ直ぐさと、制御不能なほどの情熱だけだ。


ベアトリス「待ってなさい! 今助けて差し上げますわ! 私の魔法は……少々賑やかですわよ!火魔法、出力最大……いや、これでは焼き尽くしてしまいますわね。制御……制御を……ああ、もう、面倒ですわ!」


勢いそのままに


ベアトリス「ええい、ままよ! いきますわよ、火魔法・爆裂――!!」


ドゴォッ!!


ベアトリス「きゃあああああ!? 燃えすぎましたわー!? 街が余計にキャンプファイヤーですわー!!」


瓦礫は一瞬で塵も残さず消し飛んだ。

だが、同時に周囲の木々や、隣の空き家まで景気よく燃え上がった。


ベアトリス「ちょ、ちょっと待ちなさい! これは想定外ですわ! お水、お水をどなたかー!!」


慌てふためき、右往左往しながらも、彼女は瓦礫の中から無傷で救い出した女性を抱き上げ、炎の渦から飛び出した。

女性は呆然としながらも、ベアトリスの煤けた顔を見て、小さく「ありがとう」と呟いた。

その瞬間、ベアトリスの胸に、教本を百回読んでも得られなかった充足感が広がった。

肩で息をしながら周囲を見渡せば、試練の光景が砂のように崩れていく。


天の声「……非効率。無計画。他者への被害を考慮しない力。騎士としての資質、皆無なり」


虚空から降ってくる冷たい声に、ベアトリスは煤けた顔を上げ、堂々と胸を張った。


ベアトリス「ええ、そうですわ! 私は完璧でもなければ、計画的でもございませんわ! 失敗もいたしますし、火加減も間違えますわ!」


ゆっくりと、息を吐く。


ベアトリス「でも――それでも、私はこの方を助けたいと思ったのですわ! 誰に言われたからではなく、私が、私自身で決めたことですわ! それが私の『正義』……いいえ、私の『心』ですもの!」


その瞬間、ベアトリスの体から眩い光が溢れ出した。

借り物の言葉ではない、自分自身の魂から出た言葉が、世界のシステムを塗り替えていく。


気づけば、元の海底王国。

頬を撫でる冷たい水の感触が、夢の終わりを告げていた。

ベアトリスはその場にへたり込んだ。


ベアトリス「……はぁ、はぁ。……難しいこと、考えすぎていましたわね」


少しだけ情けなく、けれどどこか清々しい表情で、彼女は自分の手を見つめる。

あの燃えるような熱さは、まだ掌に残っている気がした。


ベアトリス「でも……少しだけ、本物の『家族』に近づけた気がいたしますわ」


立ち上がり、前を向く。


あんな「ベアトリス、おかえり。なんか……ものすごく熱苦しい顔してたわよ」


みゆ「……精神的オーバーヒートを確認。冷却を推奨です」


ベアトリス「お二人とも! さすがですわ、すでに試練を終えられていたのですわね!」


あの騒がしくも温かな輪の中へ。

パパを、そしてこの家族を守り抜く。

その誓いだけを胸に、彼女はパパが戻る時を待った。


こうして――

ベアトリスは、自ら選び、自ら責任を取る「自分だけの強さ」を手に入れた。

ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、

破壊的すぎる火力調整という新たな課題を抱えつつ、より一層賑やかに続いていく。

「水、大っ嫌い!」な弱虫もっふるが、絶体絶命の浸水パニックで覚醒!?

海底王国の試練が突きつけたのは、逃げ場のない「暗黒の水たまり」。

本能的な恐怖に震え、短い足をフル回転させて逃げ回るもっふるを、無慈悲な水の質量が飲み込もうと迫りくる!

「脆弱なり」と切り捨てられた絶望の淵で、もっふるの脳裏をよぎったのは……いつも優しく毛を撫でてくれる、パパの大きな手のひらだった!


「逃げないピィ!」——涙目のまま踏み出した一歩が、深海の理を打ち砕く!


次回、第110話 え、パパが勇者!? 震える足で踏み出した、もっふるの小さくも偉大な一歩!? 家族の笑顔を守るため、恐怖を越えた真の「勇気」を見せつけろー!?


びしょ濡れのふわふわ、プライドを懸けた大ジャンプ!

娘たち三人が見守る中、最後に残されたのは……

「試練の部屋でピクニック始めてそう」なパパただ一人!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ