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本当にそれ、ダンジョンですか?  作者: ポリエステル100%
ひよっこ冒険者の章

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第19話 バッドエンドはすぐ傍に


 夢の世界で天王寺七海の悲痛な胸の内を知った。キムタコのストーカーに苦しむ彼女はきっとボクに助けを求めたのだろう。


 悲しそうな顔をする彼女を救いたい、笑顔の彼女が見たい、恋人になれなくても良いから彼女を助けてあげたい、ボクは心からそう思った。


「ねぇホッシー、恋って何かな?」


 初恋を迎えた翌日である月曜日、今日は午前中の講義が休講になったのでホッシーと二人で暇つぶしをしていた。


 以前からホッシーが『珈琲とプリン』に行ってみたいと言っていたので、これは良い機会だと思い案内した。もしかしてホッシーは姫ちゃん狙いか? でも残念、姫ちゃんはお休みなのでした。


 メイドさんや女性の占める割合が9割を超える店内で男二人というのは気まずいかもしれないけど、ボクは自分のバイト先なので全然大丈夫です。むしろホームですよ。常連のマダムとも手を振って挨拶しちゃいます。ちなみにインテリメガネは居ません。


「どうしたんだ急に。もしかしてユウ、舞子さんとヤったのか……?」


「ち、違うよー! ボクはまだ童貞だし、お尻だって指一本入れられた事ないもん!!」


「おいおい、冗談だよ冗談。ほらみんな見てるから落ち着け、な?」


「ううぅ……恥ずかしい」


 静かな店内に流れる心地良いBGMをかき消すようにボクの告白が店内をこだました。ボクの人生に舞子さんルートは無いはずだ。エイプリルフールならあるかもしれないけど、今の時間軸では起こり得ないのだ。


 ボクは顔を赤くして店内を見渡してみた。常連の綺麗なセクシーマダムがボクを見て舌なめずりしていた。あとJDっぽいお姉さんが友達とキャッキャウフフとボクを見て喜んでいたのだ。


 くっ、これも全部舞子さんが悪い。こんな恥をかくなんて……。バイト先で叫んでしまったボクは、これからお客さんと顔を合わせる度に童貞と思われるのだろう。


 後悔していたところ店員(メイド)さんがボクのテーブル席に近付いて来た。でもおかしい、既に注文は全部届いているのである。それにあの人は…………マズい!


「どうしたのユウタ君? すっごく大きな声が聞こえたわよ?」


「こ、琴音(ことね)さん!? あのあのっ、何でもないですー」


 昼間のパートに入っている琴音さんがやって来た。琴音さんは一言でいうと美魔女である。艶々な黒髪ショートヘアが食べちゃいたいくらいに綺麗なのだ。


 あと、姫ちゃんの胸がEカップ(笑)と言われるくらいの爆乳を持つ色気ムンムンな魔女です。噂では40代らしいけど20代と言われてもおかしくない美しさです。ボクは彼女の事を内心でメイド長と呼んでいる。


 そんな琴音さんが特注品のメイド服を着てガーターベルトまで装備しているのである。ちょっと夜のお店と勘違いしてしまいそうなヤバさだけど、気配り上手な接客でお客様からの評判はナンバーワンなのである。夜の指名もナンバーワン取れそう。


 他のお客さんに配慮してなのか、ボクの隣に座って来ました。蜂蜜のように濃厚な甘い香りがボクを襲う。お胸がテーブルに乗っかっちゃってますよ? 自慢の乳袋がムニュムニュっとしてますよ? 重いから休憩ですか?


「本当ぉ? だって今『ボクもう我慢出来ない。このままじゃ風俗行って童貞捨てるしかないよ~。お尻もいいかもー?』って言ってたでしょう。ああいうお店は病気を貰ったりハズレ引いたり、せっかくの初体験が台無しになっちゃうわ。うふふ、おねーさんがユウタ君の童貞貰ってあげてもいいよ?」


「ぴゃわー! ぼ、ボク好きな人がいるので大丈夫です。あのあの、琴音さんが嫌いな訳じゃ無いですので勘違いしないでくださいね?」


「ふふ……我慢出来なくなったら言うのよ。最高の初体験をさせてあげる♡」


 ボク達にしか聞こえない小さな声でそう言った琴音さんがキッチンに戻って行った。まったく、ボクの『童貞』という言葉だけでエチエチな脳内ストーリーを組み立てるピンクに染まったサキュバスのような人だ。


「お、おいユウ。今の美人さんは何だ? ユウとどんな関係なんだ!? あの人にお願いして童貞卒業させて貰えよ」


 ポカーンとしていたホッシーが我に返りボクに詰め寄って来た。だけどやめてほしい、ボクは男に詰め寄られて喜ぶ趣味は無いのである。


 っていうかホッシーは誤解している。童貞の早期卒業に尽力しているボクが琴音さんとワンナイトラブにならない理由なんて一つだ。命が惜しいからである。それにボクは恋人と甘い感じの初体験を迎えたいのでそういうお店は遠慮しておきます。


「悪い事は言わない。琴音さんだけは絶対に触れちゃダメだよホッシー。もし我慢出来なくなったら姫ちゃんの胸にするんだ。……大きな声じゃ言えないけど琴音さんってヤの付く職業のお方と親しいらしい。これ以上は言わせないでくれ……」


「あっ……ごめん」


 ホッシーの勢いがシュンと落ちた。まるで賢者タイムに入ったかのような落ち着きである。


 このお店で働かせてもらえることになったあの日、ボクは店長さんに怖い声で言われたのだ。ガクガクブルブル。



『いいですかユウタさん。悪い事は言いません、琴音さんにどれだけ甘い言葉を掛けられても乗ってはダメですよ。もし琴音さんの甘い言葉に乗ったら男性じゃなくなってしまいます。アソコがスパーンです。これは親切心で言っているのですから、努努(ゆめゆめ)忘れないように』



 あの店長さんの言葉を聞いてからこのお店がヤバい店だと気付いた。だからボクはどんなに欲求不満になろうとも目で楽しむだけにしているのだ。だから姫ちゃんにだって指一本触れた事がないのです。


「あー、それで何だっけ? 恋だっけ? なんだろな~」


「うん、ボクも良く分からなくなってきた。何かごめんね、オススメのプリン奢るよ」


 恋っていうのは良く分からないけど、来たる日が来るまでボクはレベルを上げて強くなるしかないというのは分かった。あと魅力上げ。目指せキムタコの80(予想)を超える事! ついでにサキュバスの館! 夢の世界はあくまでも夢だから童貞卒業にならないのです。つまり予行練習ですね。


 ホッシーと食べたプリンの味は、少しカラメルの焦げ目が強くてほろ苦かった。


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