79話:調整
階段を降りた先には社があった。意外と広い。
祠の入り口は二つ。
「これが、扉……」
扉にかかれた言葉。
「武神の直系よ、扉の前に立て」
武神の直系?疑問に首をかしげていると、刃奈、いや、初妃が、
「武神、天辰流の家系と言うことですので、私ともう一人の篠宮です」
その言葉と共に、こちらでは匡子さん。向こうでは刃奈が扉の前に立つ。
――カチャンと何かがはずれ、扉に書かれた文字が落ち、奥から、新しい文字が出てくる。
「武神の分家よ、扉の前に立て」
分家とは、本家(本元)から分岐した別の家。
「篠宮の分家である東雲か西野の人間です」
初妃の言葉と共に、こちらでは信也。向こうでは紀乃が扉の前に立つ。
――カチャンと再び何かがはずれ、扉に書かれた文字が落ち、奥から、新しい文字が出てくる。
「希望咲く一族の者よ、扉の前に立て」
その言葉と共に、こちらではキリエ。向こうでは哀子が扉の前に立つ。どうやら自分達で理解していたらしい。まあ、読んで字の如く、希ぼう咲くから希咲だが。
――カチャンと何かがはずれ、扉に書かれた文字が落ち、奥から、新しい文字が出てくる。
「死の一族の者よ、扉の前に立て」
その言葉と共に、こちらでは俺。向こうでは姫夜が扉の前に立つ。残った鍵は、俺たちだけだから、当然といえば当然だ。
――カチャンと何かがはずれ、扉に書かれた文字が落ち、奥から、新しい文字が出てくる。
「残念だが、真の鍵穴は、この先だ。三つの扉を同時に壊せ」
その言葉に、俺たちは驚愕する。入り口は二つ。そして、戦力も二つ。俺たちには、もう一つの扉は壊せない。どこにあるかも分からない。でも、諦めない。
『あきらめて、たまるかよ(ものですか)!』
俺と姫夜の声が重なる。
二人の眼、【死染眼】と【血染眼】が二つの扉を塵一つ残さず消す。
「おめでとう。三つの扉は開かれた」
その言葉に、驚く。確かに扉は、三つ。消えた二つの扉に、綺麗に刻まれた一つの扉。先ほど、一瞬だが、俺と姫夜には見えた。俺たちの禍々しい紅の力とは真逆の神々しい蒼い力、剣光が。
「ありがとう、我が神の末裔……」
初妃がそんなことを呟いた気がした。
「マリア」
俺の呼びかけにマリアが寄ってくる。
「はい!」
マリアが扉の奥に踏み込む。三つの扉に囲まれた中心。そこに人が立てる円柱の台があった。マリアはその上に立つ。
「マリア、これを」
俺は、狂った世界を正常に戻すための、最後の歯車をマリアに渡す。
「ええ」
マリアは、歯車を直した。
――そして世界は正常に動き出す。
「あっ、あたしの【縛鎖】の眼が消えてる」
廿楽の言葉。
「ええ、消えたのは、おそらく貴方の力だけでしょうね。この世界でできた模倣の異能は、全て消えたはずよ。でもここに集まったほとんどのメンバーは、異界の本物の異能を持った人間。消えなくて当然よ」
沙綾の言葉。そうか、俺たちの異能は消えないのか……。
「ええ、【死染眼】も【血染眼】も【七夜】も【氷天奏々】も。全て、元は、血のつながりから遺伝した能力。だから、歯車とは関係ないわ」
ほぼ、完結です。まあ、最後のほうが雑ですが……




