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狂った世界で  作者: 桃姫
狂聖編
78/82

78話:プラス2

 信也は、突き当りの奥の壁まで来ていた。

「この先だ」

 信也が、そう言って軽く壁を押すと、板が上半分だけ、カタンと置くに倒れこんだ。

「これは、」

 俺は、その残った板と倒れた板の接合部を見て、

長刀(ながもの)で切ったあと、か?」

「え?のこぎりとかじゃなくて?」

 透の問いに俺は、答える。

「あまりにも綺麗に切れている。のこぎりは、押し引きを繰り返して切るため、断面に凹凸ができやすい。しかし、この板は、一回で、綺麗に切られたことがよく分かる。こんなことができるのは、刀。それも相当長い。そして、こんな狭い空間で振ったんだ。相当な腕の持ち主だと思うぜ」

 俺の言葉に信也が笑う。

「いや、これを斬ったのは俺だ。まあ、腕はあまりよくなかったがな」

 冗談か、はたまた本当か。まあ、どちらにせよ、信也が只者ではないことは分かっていた。

「この先だ。暗いが、階段になっている。気をつけろよ」

「ああ、分かった」

 俺たちは、信也について、階段を降りる。俺は、終始そわそわしていた。理由は一つだ。一応言っておくが、鍵は八つだ。今、ここにいる鍵は七つだ。

 俺、姫夜、信也、紀乃、匡子さん、刃奈、哀子。ではキリエは?

 俺が、部屋に集めた時、キリエは、既にいなかったのだが、今、どこに居るのだろうか。

「雨月くん。やはり、ここにいるメンバーは、凄い人たちばかりなのね」

「うぉあああああああああああ!」

 びっくりした。驚きすぎて思わず会談を踏み外しそうになった。

「どうした?」

 信也の声。

「何をそんなに驚いているのかしら」

 やれやれと言うように肩をあげ溜息をついている。

「いや、お前が急に出てくるからだ!」

 煌く銀髪。深い紫の眼。

「お前は?」

「八つの鍵のうちの一人。桐谷……、いえ、希咲霧愛よ」

 信也は、納得したように頷く。

「そうか。ちなみに、ここにはどうやって?」

「壁を乗り越えたわ」

 アホみたいな回答にうしろで、匡子さんと紀乃が笑う。

「大変だったでしょ?あそこ足掛けるとこすくないし」

 体験者かよ。

「そうでもないわよ。むしろ、超特急で、来てあげた私が疲れたっての」

 と呟いたのは、いつの間にか信也の前にいた沙綾だった。

「やっほ、東雲の縁者さん。祠はこの先よ」

 流石に、これには驚く。

「何を驚いているのかしら。私は【時空間の詐欺師(タイムマジシャン)】よ」

 まだ、そのネタを引っ張っていたのか。

「さあ、行きましょうか。階段は、あと、もう少しよ」

 無理矢理引っ張っていくように信也と俺を連れ、沙綾が階段を下っていく。



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