78話:プラス2
信也は、突き当りの奥の壁まで来ていた。
「この先だ」
信也が、そう言って軽く壁を押すと、板が上半分だけ、カタンと置くに倒れこんだ。
「これは、」
俺は、その残った板と倒れた板の接合部を見て、
「長刀で切ったあと、か?」
「え?のこぎりとかじゃなくて?」
透の問いに俺は、答える。
「あまりにも綺麗に切れている。のこぎりは、押し引きを繰り返して切るため、断面に凹凸ができやすい。しかし、この板は、一回で、綺麗に切られたことがよく分かる。こんなことができるのは、刀。それも相当長い。そして、こんな狭い空間で振ったんだ。相当な腕の持ち主だと思うぜ」
俺の言葉に信也が笑う。
「いや、これを斬ったのは俺だ。まあ、腕はあまりよくなかったがな」
冗談か、はたまた本当か。まあ、どちらにせよ、信也が只者ではないことは分かっていた。
「この先だ。暗いが、階段になっている。気をつけろよ」
「ああ、分かった」
俺たちは、信也について、階段を降りる。俺は、終始そわそわしていた。理由は一つだ。一応言っておくが、鍵は八つだ。今、ここにいる鍵は七つだ。
俺、姫夜、信也、紀乃、匡子さん、刃奈、哀子。ではキリエは?
俺が、部屋に集めた時、キリエは、既にいなかったのだが、今、どこに居るのだろうか。
「雨月くん。やはり、ここにいるメンバーは、凄い人たちばかりなのね」
「うぉあああああああああああ!」
びっくりした。驚きすぎて思わず会談を踏み外しそうになった。
「どうした?」
信也の声。
「何をそんなに驚いているのかしら」
やれやれと言うように肩をあげ溜息をついている。
「いや、お前が急に出てくるからだ!」
煌く銀髪。深い紫の眼。
「お前は?」
「八つの鍵のうちの一人。桐谷……、いえ、希咲霧愛よ」
信也は、納得したように頷く。
「そうか。ちなみに、ここにはどうやって?」
「壁を乗り越えたわ」
アホみたいな回答にうしろで、匡子さんと紀乃が笑う。
「大変だったでしょ?あそこ足掛けるとこすくないし」
体験者かよ。
「そうでもないわよ。むしろ、超特急で、来てあげた私が疲れたっての」
と呟いたのは、いつの間にか信也の前にいた沙綾だった。
「やっほ、東雲の縁者さん。祠はこの先よ」
流石に、これには驚く。
「何を驚いているのかしら。私は【時空間の詐欺師】よ」
まだ、そのネタを引っ張っていたのか。
「さあ、行きましょうか。階段は、あと、もう少しよ」
無理矢理引っ張っていくように信也と俺を連れ、沙綾が階段を下っていく。




