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狂った世界で  作者: 桃姫
狂聖編
77/82

77話:集まった調律者

 俺は、マリアを含め、七人を連れ、朱野宮の家にたどり着いた。大きな門や指紋、声紋、網膜、様々な認証に驚きながらも、何とか入れてもらえた。

「着たか?お前等で最後だ」

 信也の言葉。その奥には、ゾワッとする感覚で分かる。姫夜だ。

「何度会っても、不気味なものね」

「しょうがないッスよ。【死染眼】と【血染眼】。どちらも【四】の眼の派生系。似た力は反発するんスから」

 今は、刃奈が起きているようだ。初妃の気配は微塵もない。

「まあ、それに関しては諦めよう。俺も似た感覚を味わってるんだ。文句はいいっこなしだぜ」

 俺は、鳥肌を摩りながら、何とか話をつける。

「とりあえず、この世界を正常に戻すためだ。仕方がない」

「ええ、そこが妥協のしどころね」

 俺と姫夜は軽く視線を交えると、俺が信也に話しかけた。

「おい、信也。祠ってのは?」

「こちらだ。付いてこい」

 信也に続いて、後ろを行く。

「結局よく分からないまま、こうなったけど、どう言うことなの?雨月くん?」

 紀乃は、どうやら、信也からあまり説明を受けていないようだ。

「事情はあとだ。今は、行動が最優先だ」

 俺は、紀乃を諭す。しかし、信也は、

「いや、謳。お前から姉さんや他の奴等への最終説明を頼む」

「チッ」

 俺は舌打ちすると、紀乃の方を向き、説明を始める。

「まず、この世界に異能が出現しだしたのは、二十数年前。【死の結晶】の話が出だしたのもそのころらしい」

「まあ、それは【PP】の奥にあった情報が元なんだけどね」

 匡子さんの補足。

「朱野宮の地下にある祠は、それよりも随分前から放置された状態だったらしいが、そこが世界の特異点だと分かった【焉】は、そこで【死の結晶】の活動を始めた。そのころから、【焉】に影響され、特異点が異質になりだした」

 俺は、ここで一区切りつける。

「異能が、世界に現れだしたのも、このころだ」

 信也の補足。

「ああ、その通り。そして、数年前の信也たちと【焉】との一戦で、【焉】が倒された時、半壊状態だった歯車がはずれ、一部が、欠片として日本中に散り、【穹】を【機関】が。それ以外を不知火家が保持した。そして、これが完成した歯車だ。これと、鍵が八つがあれば、どうにかなるはずだ」

 そしてそれが、

「そうすれば、この狂った世界が元に戻る。実験や収容されていた異能使いも全員自由になれる」

 そう、そうなるはず。だから、俺は、一刻でも早く、この世界を正したい。

「じゃあ、なるべく早く、この世界を元に戻さないとね。てゆーか、早く直してもらわないと、私たち【PP】も異能事件忙しくなっちゃうのよね」

 紀乃の冗談めいた言葉に、匡子さんが

「まったくよ。でも、紀乃は関わってないでしょ!あたしか、信也の仕事になるじゃないの!」

 などと憤慨していた。

「ついたぞ」

 信也が、ふと、足を止める。そこは、

「小屋?」

「ああ、この奥だ」

 小屋にカモフラージュした階段などではなく、本当の小屋だ。

「本?」

「朱野宮関係の歴史書だ。高価なものもあるから気をつけろよ」

 そうは言うが、あちらこちら、足の踏み場もないくらい散乱していたりするので困る。

「あら、これは、懐かしい名前が……」

 いつもの「~っス」口調ではない、おそらく初妃になっていると思われる刃奈が歴史書を取り、呟いていた。

「おい、刃奈、どうした?」

 匡子さんの言葉もガン無視の初妃。

「こ、これは。……バレテル」

 ポトっと落とした本を見る限り、家系図のようだが、「蒼刃家家系図」とあることから、その蒼刃家に何かあるのだろう。と、上から眼をやってみると、すぐに、「篠宮初妃」の文字を見つけた。しかし、彼女からは、二方向に線が引っ張ってあり、「蒼刃蒼天」なる人物が主軸だが、もう一方に「天海空李」と引かれている。そういえば、「不倫」とか言ってたか。

「おい、お前等、何やってんだよ」

「ああ、悪い」

 ボーっとする初妃を置いて、信也の下へと向かった。


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