65話:現実Ⅰ
【現実Ⅰ】
そして、謳くんと離れ離れになってから、数年が過ぎました。その今、祖父、不知火古十郎も亡くなり、私は、はれて次期当主から当主へとなりました。その関係で、祖父が懇意にしていた、蓮条グループ。その長女と次女の二人に会うこととなりました。
蓮条グループのお屋敷は、不知火家とさほど変わらない、大きな家でした。流石、蓮条グループ、と言ったところでしょうか。通された場所は、話し合いをするための部屋。普段は、重役会議などに使われているのでしょう。
そこに居た二人の女性。女性と言っても、私よりも少し年下の、そう、一人は二、三歳下。もう一人は、謳くんと同じくらいの年。とても綺麗な二人。
「はじめまして、蓮条クレアよ。よろしく」
赤髪の女性は、クレアと名乗ります。
「えと、はじめまして。蓮条崇音です」
黒髪の女性は、崇音と名乗っています。
「はじめまして。不知火家、当主を拝命いたしました、不知火爛です」
私の自己紹介も終わり、三人で話を始めます。と、言っても、話すことは、事前に決まっており、それを確認しあうだけなのですが。
「そういうわけで、今度、不知火、朱野宮、うちが主催のパーティーを開きます。ここにいる三人と朱野宮のお嬢で四人。その四人が主催で、来るのは、えっとなんちゃら重工やら株式会社なんちゃらやらと、政治家。そして、崇音の知り合いの人。数十名のパーティー」
「そうですね。大河内重工や株式会社偵光物産なんかは、うちと懇意にしてもらってますし、境出議員は朱野宮と親しいようですし」
境出議員と言う名を聞いて、私は、前のこと、郡上さんのことを思い出していました。彼らは、今も、牢屋の向こうでしょう。
「それじゃあ、話し合いは、この辺でいいかしら。それにしても不知火さんにお孫さんがいたのは、昨日知ったんだけど」
「ええ、まあ、私は捨て子のようなものでしたから」
急なクレアさんからの疑問に答えます。
「それでも見つかり次第、こちらにも連絡を入れるものでしょ?」
「いえ、まあ、やんちゃな孫がいることを知られたくは無かったんじゃないですか?」
私の解答に、首を傾げたのは崇音さん。
「やんちゃ、ですか?そうは見えないですけど」
「いえいえ、これでも、昔、牢屋の向こうにいた身ですから」
私の解答が意外すぎたのか、二人は、目を見開いていました。
「流石に笑えないジョークね」
「ジョークじゃありませんよ。私は、昔、ある少年に誘われて、強盗集団に所属していたんですよ。そうですね、いうなれば、平成の鼠小僧でしょうか。たった十人の小さい組織でしたが、お金を巻き上げては、孤児院や児童保護施設に送り、その繰り返しだけの生活を送っていたんです」
私の言葉を聞いた崇音さんが、「最近聞いたような」と首を傾げますが、私は続けます。
「それで、牢屋の向こうにいた私の元に万次郎さんが、いらっしゃって、不知火家に連れて行かれたのです。そうして、次期当主になった私は、今、こうして、当主に鳴ることになったのでした」
クレアは、「ほぉ~」と興味なさそうにしているだけでした。
「それじゃ、今度のパーティーの件、忘れないように」
それで、今日は、解散となりました。




