61話:両親
さて、伏線かどうかはさて置き、俺は、気になっていた。
「つーか、俺の両親って、どんな顔してるんだ?」
「いや、そりゃ、あんたの両親だからね、似てるわよ」
それはそうだろうが。
「ウタイくんのご両親ですか、確かに私も興味がありますわ」
「右に同じね」
蓮条、廿楽も興味があるようだ。
「えっと、確か、写真が、あった」
「あるのかよ!早く出せっての」
写真に写っていたのは、真っ黒な髪と真っ黒な眼を持つ女性と金髪碧眼のイケメン名男性だ。これが両親だとするなら、俺は、全体的に母親似になる。
「ぶはっ、ぶぅ、あはっ、アハハハ!」
廿楽が爆笑する。
「じょ、女装した、こいつ、そ、そのもの、プハッ、ハハハッ」
笑いすぎだが、確かに、俺にそっくりではある。ただ、男っぽいわけではない。……と言うことは何か?俺が女顔ってことか?
「ええ、本当に、お母様に似たのですね。ウタイくんは」
「うん、まあ、そっくりなんだが……。なんだろう、この違和感」
何か違和感を覚えてしまう。
「まあ、気にしないほうがいいわよ。あんたは、母親に似て美人なんだから」
美人でも嬉しくねぇよ!
「まあ、目元は、微妙に父親似だから、そこでキリッとして男っぽく見えるから大丈夫だって」
安心できねぇ……。
「ん?なんだ、その写真?」
俺は、沙綾のポケットから、もう一枚の写真がはみ出てるのを見つけた。
「ああ、これ?」
そう言って差し出した写真に写っていた女性に、俺は、見覚えがあった。既視感と言うレベルではない。面影をたっぷり受け継いでいる。
「第一と謳魏よ」
「第一?」
なんだ、その、名前っぽくないの。
「ああ、っと。狂ヶ夜緋奏と金轟謳魏。えっと、あんたのクラスの狂ヶ夜マリアって子の両親。私の知り合い」
そう、マリアとそっくりの女性。それと、柔らかい笑みを浮かべる黒髪黒目の男性。まったくもって、両親のいいところを引き継いだ感じがあるな、マリアは。
「まあ、第一典神醒存在って言ってもわかんないでしょうから、精霊ってことよ」
精霊?
「だから、マリアって子は、精霊と人間のハーフ。あんたの眼も効かないわよ。眼は、特殊な奴や異能無効化能力者、上位存在には効かないのよ」
精霊と言うだけで頓珍漢なのだが、上位存在とはなんだ?
「特殊ってのは、響のように【破魔眼】……【魔眼殺し】を持っている奴とかのこと。異能無効化能力者は、文字通りだけど、この世に数人もいるか、ってくらいの確率の存在だから。上位存在ってのは、【数列種】の第五から上とか、【神醒存在】とかの、人智の超越者……分類だと【幻種】と呼ばれる存在よ」
知らない単語がいくつか出てきた。
「で、マリアって子は、半神醒存在だから、下位異能は、一切効かないわ。それこそ、【数列種】の、それも【第六龍人種】あたりが使う攻撃なら別だけど……、あとは、所謂、神製具……神様の造った武器でもなければ、ダメージは与えられないでしょうね」
マリアってそんな凄いだったのか?
「まあ、隔絶系の魔法なら別でしょうが……」
よく分からないことを呟く沙綾はさておき、
「で、結局、俺の両親の人柄ってどんなだったんだ?」
「そうね……、謳雨は、それこそ、聖人みたいに優しい子だったわよ。まあ、時々恐いけど」
どんなトラウマが……。
「でも、あんたの父親は、……う~ん、馬鹿だった?うん、馬鹿ね、すっごく」
馬鹿だったのか!
「まあ、気にしないことよ。あ~、この話はこれで終わり。解散解散。私は、今から旦那とデート行くから。じゃ」
そう言うや否や、目の前から消える沙綾。この日は、それで終わりとなった。




