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狂った世界で  作者: 桃姫
睡蓮編
56/82

56話:謳の香り

Scene透

 謳(未だ呼びなれない)がシャワーを浴びにいってから、あたしは、ベッドに顔を埋めた。

「あいつの匂いがする……」

 いい匂い。

「……………………ハッ!あたしは、何を!」

 思わず、しばらくの間顔を埋めてにおいを嗅いでしまったが、あたしはいったい何を。でも、いい匂いだなぁ。

 何故か体温が向上してきている。身体の奥で何かが疼くような、ジュクジュクと湧くような。

「はぁ、はぁ……」

 呼吸が早まっている。

「んんぁっ」

 熱い。身体が熱い。手が、自然に、自分の身体に向かい、

「ん?どうした」

「ひゃああああああああ!」

 突然の声に悲鳴を上げる。

「うおっ!何だよ」

「ななななっ、何だよは、こ、ここっ、こっちの台詞よ!」

 意味わかんねぇ、みたいな顔すんな!

「あ、あた、あたしもフロは入ってくる!」

 あたしは、駆け出した。


 シャワーを浴びながら考える。すっかり火照った体。汗やらなんやらでベタベタしている。それを洗い流すように少し冷たいシャワーを浴びる。

 沸騰した頭には、これくらいが丁度いい。

「ああ、もう、あたしは」

 気分は、酷く落ち込んでいた。壁に頭を打ちつけたい気分だけど、そんなことして、あいつがやってきたら、余計酷いことになるから止めておくわ。

「まったく、う、謳は……」

 体と心が熱い。なんだろう、この感覚。

「やっぱり、好き、なのかな」

 などと乙女チックに呟くが、自分でも既に分かっているのだ。心の内なんてものは。

「しっかしなぁ~」

 あたしは、自分の慎ましやかな胸を触る。そして、青く染めた長めの髪。普段は、大きな三つ編みにしている髪はほどくと、腰の長さほどになる。顔は、自分でも悪くないほうだと思う。

 いやいや、控えめな反応で、普通より可愛いであって、自分の気分としては、世界一可愛い女の子気分なんだけど。


 フロから上がり、いつものシャツとパンツ(下着の意味のパンツではなくズボンの意味のパンツ)を着て、フロをあがった。


キャラの安定しない透と出番の安定しない黒羽……

は、さて置き、蓮条崇音の話だったはず、なんですが……

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