49話:始まりの異能
俺は、蓮条からの疑問に答える。
「【血の走狗】は、金持ちを狙った強盗集団でな、まあ、盗んだところで、あんま使わないで、保管したり、爛……メンバーの一人が、児童施設に寄付したりして活動してた十人たらずの組織だ。かなりの額巻き上げたな」
俺の言葉に、全員がぽかんとしてる。
「それで?何で捕まったのよ?そんな悪いことしてないじゃない」
「メンバーの一人が、ある組織の勧誘を受けて、政治家の娘を誘拐したんだよ。しかも、その融解は失敗。【PP】に捕まり、【血の走狗】諸共全員逮捕」
そう、それがなければ、さしずめ、
「平成の鼠小僧みたいですよね」
黒羽に思っていたことを先に言われてしまった。
「ふうん、それにしても、あんたの仲間にちょっかい掛けた組織みたいなあくどい組織っていっぱいあるの?」
廿楽の疑問に俺が答える。
「いや、基本的に、そう言ったあくどい組織は、政府側の組織ばかりだから、数はわからんが、でき始めたのはここ十年くらいだ。俺の仲間に勧誘してきたのは、それより前にあった謎の組織。【死の結晶】って言うらしい」
「【死の結晶】……?」
そう。そして、
「【焉】。そう名乗ってる奴が、リーダーだって聞いたことがあるが、その【焉】も死んだらしいからな。まあ、もう、潰れただろうし。今は関係ないと思うがな」
俺がそう言った瞬間に、別の声が、
「そうでもないかもな」
男の声。この声は、確か……
「会長!来ていたんですか?」
廿楽が声を上げる。この間、黒羽の暴走の時にあった青年だ。
「ああ、まあな。廿楽、だが、今は、俺じゃなく、お前が会長だぞ」
「あっ、すみません癖で」
笑う青年と恥じる廿楽。いつもとは違う廿楽の一面に少し笑いそうになるが、堪える。しかし、透は、堪える気が無いようで大笑いする。
「ちょっ、勇音さん!」
声を荒げ、怒鳴る廿楽。
「また会ったな」
「ああ、また会ったみたいだな。つくづく縁のある」
俺と青年が話を始める。
「ん?あんた、かいちょっ……信也先輩と知り合いなの?」
「信也?佳美弥じゃないのか?」
紀乃の呼び方からして、名前は佳美弥だと思っていたが、
「ん?ああ、俺は、東雲佳美弥だ。ただ、【PP】の仕事の時は、漣信也って名前を使っててな。学園にいた頃の自己紹介は、信也でしちまったもんだから信也で定着してんだ」
ぎ、偽名かよ。
「それで、そうでもないってどう言うことだ?【死の結晶】は瓦解したんじゃねぇのか?」
「ああ、瓦解したはずだ。主要メンバーの【焉】、【神道】は、いなくなった。【真海】や【群青】なんかは、こっちについたからな」
あれ、じゃあ、何で、
「だが、【焉】は、俺たちが見た、最初の異能だ」
最初の異能……。
「俺の仲間に、異能に近い存在が複数いる。そいつらを含め、異能にカテゴライズされるものの中で、最初に確認されたのは、多分、【焉】だ。そして、俺や咲耶、【焉】と戦った連中は、ほぼ、この学園の生徒だ」
最初の異能とこの学園の生徒。
「その二つに因果関係があるのか?」
「さあな。ただ、姉さん曰く、俺や君に因果関係があるらしいがな」
俺と、この人に?
「どう言う意味だ?」
「さあな。ただ、稀に世界を動かすほどの事象の中心に、【終わり】と【始まり】がいるらしい」
いる?表現としておかしいだろ。
「まあ、この世界が狂ったのは、それが原因かもしれない、と言うことだ」




