38話:到着
タクシーが走ること一時間。都道府県を跨ぎ、千葉県まで来てしまった。そういえば、千葉県の高校の事件を見たとき、「姉さんのところ」って言ってたか。
「で、何で俺が遠方遥々千葉なんかに着てんだ?」
「そりゃ、こっちの台詞だっつーの。何で、あたしと君がタクシーに乗ってるわけ?」
つい先ほど目を覚ました勇音は、しばらく状況を理解するのに時間が掛かっていた。
「警備員に文句言えよ。勝手に勘違いして、無理矢理押し込まれたんだから」
「ったく。まあいいわ。でも、家に着いたら何て説明しよう。姉さんにも弓月姉にも」
弓月、だと。いや、姉ってことは、女だ。落ち着け。
「同じ生徒会だから付き添いとでも言っとけ。ついてすぐに、俺は引き返すし、もしかしたら、会わないかもしれないしな」
「いんや、会わないってことはないわ。絶対に迎えに出てくるから」
絶対なのか。
さらに三十分ほどが経過した。丁度、千葉県型の犬のマスコットで言う眼の辺り。空港が有名なところから少し離れたところ。
「この辺ね、うち」
長閑なところだ。住宅街はあるものの、畑や田んぼが多い。
「田舎」
「うっさい」
そんなやり取りをしながら、住宅街を数分走行し、止まった。
「着きました」
タクシーの運転手が声をかけ、ドアが開く。
「あ~。これで」
俺は、金を渡す。
「はい、おつりです」
運転手は、にこやかに降りろと笑っている。ちなみに、有り金の大半を今渡したため、学園まで帰れないことに気づいた。やれやれと、肩を竦めながらタクシーを降りた。
「ありぃ、迎えに着てない」
「出迎えなし、と。つーか、お前、どのくらいにつく、とか言ってないんだたら来ねぇんじゃね?」
俺の当たり前の質問に、
「そりゃそうか」
と笑い、玄関のドアを開けた。
「君も、そのまま入りな。外いられてもめーわくだし。ただいま~!」
「お邪魔します」
シーンとした家の中。
「誰もいないんじゃないの?」
「両親は別として、姉さんがいないのはおかしい、かも」
俺は、とりあえず、勇音の部屋に通された、が。
「汚っ!」
「うっさい、ほっとけ!」
寮の部屋もかんな感じなのか。道理で修理に集中できないわけね。螺子とかなくなるし。なのに、何で漫画とかは綺麗に並んでるんだよ。
「あたしの部屋だから、どんなんでも勝手でしょ。って、何、勝手にベッド寝転んでんのよ!」
「眠いんだよ。お前の所為で疲れたし」
俺は、そう言って、寝た。




