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狂った世界で  作者: 桃姫
蒼空編
38/82

38話:到着

 タクシーが走ること一時間。都道府県を跨ぎ、千葉県まで来てしまった。そういえば、千葉県の高校の事件を見たとき、「姉さんのところ」って言ってたか。

「で、何で俺が遠方遥々千葉なんかに着てんだ?」

「そりゃ、こっちの台詞だっつーの。何で、あたしと君がタクシーに乗ってるわけ?」

 つい先ほど目を覚ました勇音は、しばらく状況を理解するのに時間が掛かっていた。

「警備員に文句言えよ。勝手に勘違いして、無理矢理押し込まれたんだから」

「ったく。まあいいわ。でも、家に着いたら何て説明しよう。姉さんにも弓月姉にも」

 弓月(・・)、だと。いや、姉ってことは、女だ。落ち着け。

「同じ生徒会だから付き添いとでも言っとけ。ついてすぐに、俺は引き返すし、もしかしたら、会わないかもしれないしな」

「いんや、会わないってことはないわ。絶対に迎えに出てくるから」

 絶対なのか。


 さらに三十分ほどが経過した。丁度、千葉県型の犬のマスコットで言う眼の辺り。空港が有名なところから少し離れたところ。

「この辺ね、うち」

 長閑なところだ。住宅街はあるものの、畑や田んぼが多い。

「田舎」

「うっさい」

 そんなやり取りをしながら、住宅街を数分走行し、止まった。

「着きました」

 タクシーの運転手が声をかけ、ドアが開く。

「あ~。これで」

 俺は、金を渡す。

「はい、おつりです」

 運転手は、にこやかに降りろと笑っている。ちなみに、有り金の大半を今渡したため、学園まで帰れないことに気づいた。やれやれと、肩を竦めながらタクシーを降りた。


「ありぃ、迎えに着てない」

「出迎えなし、と。つーか、お前、どのくらいにつく、とか言ってないんだたら来ねぇんじゃね?」

 俺の当たり前の質問に、

「そりゃそうか」

 と笑い、玄関のドアを開けた。

「君も、そのまま入りな。外いられてもめーわくだし。ただいま~!」

「お邪魔します」

 シーンとした家の中。

「誰もいないんじゃないの?」

「両親は別として、姉さんがいないのはおかしい、かも」

 俺は、とりあえず、勇音の部屋に通された、が。

「汚っ!」

「うっさい、ほっとけ!」

 寮の部屋もかんな感じなのか。道理で修理に集中できないわけね。螺子とかなくなるし。なのに、何で漫画とかは綺麗に並んでるんだよ。

「あたしの部屋だから、どんなんでも勝手でしょ。って、何、勝手にベッド寝転んでんのよ!」

「眠いんだよ。お前の所為で疲れたし」

 俺は、そう言って、寝た。


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