30話:視れる者
そして、再び勇音と二人きりになった部屋で。
「へぇ、君、モテるんだ~」
何か、いい得物を見つけたかのような顔だった。
「お前のほうがよっぽどモテると思うが?」
「あたしは、気づかれないから」
確かに、今気づかれなかったしな。
「テレビつけていい?いいっしょ?」
そういって、俺が答える前に、テレビをつけた。
「おい、今の質問の意味は?」
「千葉県、鷹之町市で、原因不明の事件が起きました」
テレビでニュースが流れた。
「およ?ここ、姉さんのとこだ」
どうやら、勇音の姉のいるところあたりで事件が起きたらしい。
「詳細は不明ですが、空間が抉られかのような、不可解な跡が残っているとのことで、警察は、慎重に捜査を行うとのことです」
ほう、奇怪だな。こりゃ、【PP】が出張ってくるんだろうな。
「面白そう~。ちょっ、行ってくる!」
「って、待て」
俺は、飛び上がる勇音を制した。
「特別外出以外は、学園敷地内から外へ行くことは禁止だろ」
そう、この学園では、特殊な事情がない限り、滅多なことでは出られない。なので、世に言うゴールデンウィーク(良介に聞いてはじめて知った)と言う数日間に亘る休暇もほとんどの学生が学園内で過ごすらしい。その間、学食(学園内食堂)は休みがないのでむしろ、学食が大変である。また購買部(あくまで部活動)も運営される。皆が学園を離れるのは、夏期休暇と冬期休暇くらいで、あともう一つあげるとすれば、春期休暇くらいである。
「チッ」
舌打ちしやがった。なんなんだよ、こいつ。
と、再びチャイムがなる。
「誰だよ」
ドアを開けると、まず、巨大な胸が眼に入った。そして、徐々に顔を上げると、黒い髪と綺麗な顔。
「マリアか」
「あっ、はい。一緒にお茶でもどうかと思いまして」
そう言って、微笑むマリア。
「お茶か。もう一人いるがいいか?」
「あっ、はい。どなたですか?」
俺は、部屋の奥に呼びかける。
「おい、勇音。お前もお茶飲むだろ?」
「うぃ~」
短く気だるい返事が返ってきた。
「マリア、上がれよ」
マリアを部屋に入れて、三人で茶を飲むことにした。
「えっと、あの、はじめまして?狂ヶ夜マリアです」
「あ~、あたし、勇音透」
勝手に自己紹介を始めた二人。
「つーか、マリアは勇音を普通に認識できるんだな」
「はい?それは、どう言う……、もしかして、幽霊なんですか?」
真顔で聞くマリア。
「いや、違うが」
マリアって意外と天然ボケだな。




