31話:求める者
意味不明すぎる。いと蒼き空、一羽の鳥が羽を広げ、天を突くとき、透明な影に色が戻る。いと蒼き空は、とっても青い空。そのあとは、そのまんまの意味だし。わけ分からん。
「一羽の鳥って言うのが、何かの比喩か?」
「ええ。そう思っています」
マリアが、俺の問いに答えた。
「でも、そんなん、何の比喩?ぜんぜんわっかんないんだけど」
勇音の言葉にも一理ある。
「はい、それで、私、考えたんですけど、」
マリアが一拍置いて言う。
「もしかして、異能が関わっているのではないか、と」
と言ってから、ハッとした表情をする。
「え、っと、その、あの、い、異能と言うのは」
どうやら、勇音のことを思って、「異能」と言うのを誤魔化そうとしたらしいが、
「ん?ああ、あたしは、別に異能について知ってから気にしなくていいよ」
「え?知っていらっしゃるんですか?」
驚くマリア。
「うん。まあ、盗み聞きだけどね」
あっけらかんと笑う勇音。
「盗み聞きってのは、ちょっと違うか」
「意図的じゃねぇしな」
コイツは、あくまで偶然聞いてしまっただけだからな。
「まあ、詳しいことは知らんけど、あたしの知らないことがいっぱいあるってことだけは、わかったんだよね~。まあ、面白そうってことは、確かじゃん」
面白そう、か。
「言っておくがよ、勇音。面白そうってだけじゃなくて、危険で、死にそうで、命がけで、普通の人間なら触ることの許されない【扉】なんだぜ?」
そう、そして、
「その【扉】に触ってしまった者は、二つに分かれる。【扉】を開けられる者と、開けられない者。その二つの差は、歴然としている。開けられた者には、地獄が。開けられなかった者には、死が。どちらであろうと最悪の道。あなたは、そのどちらになるかは、あなたしだい。――世界真理って本の一節だよね」
そう、俺の言葉は、ある人物の書いた本の文を抜き出したものだ。
「知ってるから、あたしは、その【扉】に触れたいのよ。凡人は、未知を欲する。それは、知らないから欲し、そして、知って絶望をする。『こんなはずではない』。それをいくら繰り返すのやら。これも、同じ本の一節」
「わかってんじゃねぇかよ。自分が、『こんなはずじゃない』って言うのがよ」
俺の言葉に、勇音は、
「でも、それが分かっても、やっぱり未知を求めるんだから、あたしってドМなのかな~」
なんて、のんきなことを言った。




