27話:屋上の少女
屋上には、銀色の髪の神々しい女子がまた、いた。
「あら、また会ったわね。雨月くん」
何事もなかったかのような、無表情に近い顔。
「ああ、そうだな。また会ったな」
「先ほどの奔流。光の波状は、貴方のもの?」
やはり、あのときには、ここにいたらしい。
「いや、俺じゃない。俺は、それを止めたほうだ」
「そう」
無関心といった感じか。
「そういえば、俺は、名乗ったが、お前の名前、聞いてなかったな」
俺は、聞いていなかった彼女の名前を聞いた。
「名乗るほどのなじゃないわね。と言うか、下賎な下民如きに名乗る名はないわ」
急に高圧的だな、おい!
「それで、下衆で、貧民で、貧困な発想しかできない雨月くんが、高貴で傲慢な私に名前を聞くとは、いったいどう言うつもりかしら?」
無表情で淡々と悪口を言われた。
「つーか、傲慢は、自分に対する褒め言葉じゃねぇと思うけど」
「そうね」
何なんだ、コイツは。
「まあ、名乗りたくないなら名乗らないでもいいんだが……」
「ええ、あなたに名乗る名などないわ。私の名前は、桐谷キリエよ」
名乗らねぇのか、名乗るのか、どっちなんだよ!
「って、お前、あの【響乃四大美女】の桐谷キリエか」
「あら、知らなかったの?この美貌。この美しさは、まさしく美女でしょう?」
なんて言うか、変な奴だな。
「確かに美人だな」
俺は、率直な感想を述べた。
「綺麗だと思うぜ。肌も白いし。俺が知る限り、お前ほど綺麗な女は、数人しか知らない」
「数人?貴方は、お世辞を知らないの?」
いや、お世辞とか使わん。施設では使うことがない。科学者に世辞言って何になんだよ。
「そういう時は、お前が世界一美しいとか、そういう風に言うものよ」
俺がげんなりした顔をすると、
「いえ、それではお世辞にならないわね。本当のことだもの」
コイツ、ウゼェ……。口調や言葉だけならまだしも、それを無表情に淡々と語ることでウザさが膨れ上がる。
「それで、雨月くん。貴方に聞くわ。貴方は、」
「いや、その話は、後にしよう。それより、あそこのネズミを狩るほうが優先かな?」
俺の言葉に、キリエは、給水タンクのほうを見上げる。
「あれのことかしら?」
「ああ。そうだ。あれのことだ」
俺とキリエが見る先で、濁った青色が見えた。それは、
「あ~、ちょい待ち。あたしは、その、別に盗み聞きしていたわけじゃないって!偶然、偶然だって!」
青く染めた髪を長い三つ網にし、マフラーのように首元を覆っている少女。おそらく、勇音透だろう。
「勇音、だな」




