表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Get the Dream   作者: nora
22/39

第二十二話 理解の果てに

教室には私と伊藤さんだけが残った。


「あなた、霊術師なんでしょう?」

「・・・どこまで知っているの?桜井さん」

「真二が霊術師で、魂霊っていう化け物と戦っているってことくらいかな。」

「それは真二から聞いたの?」

「ううん。真二のお父さんから聞いたの」

「どうして・・・」


伊藤さんはとても不思議そうな顔をしている。


「私と真二は初めて魂霊を見たのが同じときだったの。そのときは真二も魂霊の存在を知らなくて、二人で怯えていたの」

「嘘っ!霊術師の家に生まれた子供は物心つくころから霊術師の知識を教え込まれるのものなのに・・・」

「でも、真二はそんなことは全然知らなかった。そのまま私は魂霊に掴みあげられてもうダメかと思ったとき、真二が助けてくれたの」


今思えば、あのときから私は真二のことを好きだと思うようになっただよね。


「助けてくれたって、どうやって?」

「なんだかいきなり白く光だしたと思ったら、一瞬で移動して、魂霊の手が切り落とされたと思ったら、たった数十秒のうちに魂霊が倒されちゃてたかな」

「え!?修行無しで霊術を使って魂霊を倒しちゃったってこと!?」

「たぶん、そういうことだね」

伊藤さんはじっと私を見つめている。


「でも、その後、高熱で倒れちゃってね。その間にあの化け物は何だったのかってことを全部、教えてもらったの」

「・・・それ、いつの話?」

「えーっと小学校3年生くらいだったかな」

「・・・そう、なんだ」


伊藤さんは明らかに動揺している表情。

真二の話が全く信じられないといった風だ。

驚きと焦りが滲み出ている。


「えっと、伊藤さん?」

「あ、ごめんなさい。次は私のことを話さなきゃね」


ハッと表情を一転させ、話を始めた。


「桜井さんの言う通り、私は霊術師よ。でも、普通の霊術師ではないわ。

私は御六っていう霊術師の中の名家の跡継ぎなのよ。あっ、だからって私を特別視はしないでよね。そういうの苦手だから。それで、この地区で霊術師増員の要請があったものだから、修行がてら私が派遣されてきたってわけ」


伊藤さんは自分の動揺を隠すように一気に捲し立てた。


「そ、そうなんだ」

「私と真二の関係は夜、一緒に戦うだけ。あなたから真二を奪うなんてことはしないから、その点は心配しなくて良いわ」

「え・・・なんで私の気持ちを知っているの?」

「そんなのあなたを見てればすぐ分かるわ。それで真二が気付いてないなんて・・・予想以上に鈍感なのね。真二って」

「はははは・・・」


どうやら伊藤さんは別に私の恋敵ってわけではないみたい。


「じゃあ、桜井さん。今日はもう帰りましょうか」

「あ、えっと、その前に・・・」

「まだ何か?」

「私のこと『桜井さん』じゃなくて、『咲』でいいよっ」


伊藤さんはちょっとポカンとしていたけど、すぐに笑顔になって、


「そうね。それじゃあ、私のことも楓って呼んでよね。咲」

「うん!よろしくね、楓ちゃん!」


今の会話だけで本当にお互いにわかり合えたのかな?

分からないけど、名前で呼び合えるくらいには仲良くなれたってことだよね。



□■□■□



異空間の修行場に来てみたのは良いものの、俺は途方に暮れていた。


「覚醒の修行って何すりゃいいの?」


楓は身体の内面に霊力を向けるって言ってたけど、イメージが全くつかめない。

第一、今まで霊力を外側に向けてきたっていう感覚自体無いからなあ。

親父も今はいないし・・・・。


「とりあえず、瞑想的なものでもするか」


俺は自分の身長ほどもある大きな石の上に座って、目を瞑った。


集中しろ。

霊力を内側に向けるんだ。

内側に・・・内側に・・・内側に・・・・・・。


・・・・・


・・・・・


・・・・・


・・・・・


「ムリだぁぁぁぁぁぁ!!!!」


どうやるんだよこんなの!?

っていうか俺覚醒って見たことなくね?

いやでも、楓は髪が赤くなってたから既に覚醒の力を使ってったってことなのか?

・・・・・・。


「ああああ!!!もう、わからん!!!今日はやめだ!!」


うだうだ考えていてもしょうがないので、覚醒は後回しにした。

親父が帰ってきてから聞いてみればなんとかなるだろ。

そのあとは、いつも通り適当に修行して汗を流した。




家に帰ると既に7時を過ぎていて、リビングのテーブルには2人分の夕飯と1人分の空の皿が置かれていた。


って、え?空の皿?


視線をずらすと、その皿の前には満足げに背もたれにもたれかかって座っている親父がいた。

どうやら、1人で先に夕飯を食べてしまったらしい。


「親父、もう食ったのか?」

「ああ、なんだか無性に腹が減ってな。どうしても我慢できなかったんだよ」

「・・・・」


どうせ、もう夕飯なんだからちょっとくらい待っとけよ・・・・。


「ふわ~。食ったらなんか眠くなってきたし、俺はもう寝るわ。じゃあな、真二」


欠伸をしながら親父がなんかダメな人な発言をしている


「食ってすぐ寝ると牛になるぞ~」

「そんな子供だましを大人に言ったところで意味ないんだよ~」


そういって、親父は自室へと戻っていった。

はあ、全くなんてダメな親父なんだ。

俺はそのまま椅子に座って夕飯を食べ始めた。


しっかし、なんか忘れてるような気がするんだよなあ。

う~ん・・・・なんだっけ?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ