第二十一話 あなたの正体は?
「伊藤楓です」
そう名乗った彼女は、この前真二に突っかかってきた女の人にそっくりだった。
でも、あのときの紅い髪はとても綺麗な色で、とても染めたとは思えない不思議な感じだった。
それが今は真っ黒で私達となんら変わらない。
おじさんの話ではあの人も楓という名前だったはずだから同一人物には違いないと思うんだけどなぁ。
私は疑問を抱えたまま授業を受け、昼休みになった。
真二は一時限目のあとから見かけない。
どうせ屋上かどっかで昼寝でもしてるんだろうなぁ。
「咲ちゃん、飯食おうぜ」
「あれ?悠樹くんは真二と一緒じゃなかったの?」
「おいおい、俺はちゃんと授業受けてたぜ?」
「そうだった?ごめん、気付かなかったよ」
どうも伊藤さんのことが気になって他のことに頭が回らない。
「真二は戻ってくる気配もないし、先に食べちまおうぜ」
「・・・そうだね」
弁当を開き、ご飯を口に運ぶ。
そして咀嚼。
悠樹くんは私に話しかけようとしたのか、口に入れたものをほとんど噛まずに飲み込んだ。その次の瞬間、急に苦しそうに胸の上の辺りを叩き出した。
どうやら喉に詰まらせたらしい。
「だ、大丈夫!?ほ、ほら、お茶!」
とっさに机に置いてあったペットボトルを渡す。
なんとかお茶で食べ物を流し込んだ悠樹は「ふぅ」と息をつく。
「もうっ、ちゃんと噛まなきゃダメだよ!」
「はい・・・。でも、間接キスありがとう」
「え?」
ふと自分が手渡したペットボトルを見ると、それは私が朝買ってきた物だった。
「・・・エッチ」
「なんで!?」
悠樹君は即座に突っ込んできた。
「もう高校生なんだからそれくらい気にするなよ」
「初めに意識してたのはそっちだもん」
「・・・・・すみませんでした」
どうやら観念したらしい。
何に謝っているのかよく分からないけど。
そして食事再開。
「ところで夏休みはどうだった?」
「うーん、始めはちょっと緊張したけど、楽しかったよ」
「緊張?なんで?」
「えーっと・・・」
しまった。
つい口走っちゃった。
真二があんまり人に言いふらすなって言ってたけど、悠樹くんなら別に良いよね。
「真二がずっと私の家に泊まってたから」
「は?高校生にもなってか?」
「なんか真二と私のお母さんたちが4人とも家を空けちゃったから、真二がうちに泊まらされたんだ」
「え、ってことは・・・夏休みの間ずっと2人っきりで過ごしてたってこと!?」
「うん」
「な、なんてことだ・・・」
悠樹くんは頭を抱えてプルプルと震えている。
「真二・・・羨ましすぎるぞぉぉぉぉ!!!!」
「!! も、もうっ、あんまり大きな声出さないでよ。びっくりするじゃない。」
「あ、悪い。で、真二とはなんか進展はあったのか?」
「え?・・・別に、何もないけど」
真二が私を大切に思ってくれてることがわかったっていうのはあったけど、魂霊絡みの話だからこの話はやめてほうがいいかな。
「えぇ~?一緒に、しかも二人だけでいたのに何もないとか・・・あいつはヘタレなのか・・・」
「ハハハ・・・」
確かにそろそろ私の気持ちにも気づいて欲しいかも。
「ったく、こんなに可愛い娘に想われているのになんで分からねぇかなぁ。・・・なあ、咲ちゃん」
「・・・自分のことを言われると恥ずかしいかも。・・・・ん?」
さっきまで呆れ顔だった悠樹くんが急に真面目な顔をしてきた。
「俺と付き合ってください」
「ごめんなさい」
なんか告白されてしまった。
もちろん私はそれを断る。
「くっ、即答かよ。冗談とはいえ、けっこう緊張したのに・・・」
「やっぱり冗談だったんだ」
「はあ、お見通しか」
「だって、私と真二の関係を誰より知ってる悠樹くんが本気で言うとは思えないもん。私たちの親友だからね」
「お、嬉しいこと言ってくれるねぇ」
「まあ、少し幻滅したけど・・・」
「やめて~。そんな蔑むような目でみないで~」
私達はそんな風に他愛ない話をしながら昼休みを過ごした。
□■□■□
そして放課後。
真二が男子たちに連れ去られていったあと、教室に残った私達は一斉に伊藤さんの周りに集まった。
「えっ、な、なに!?」
「大谷くんと伊藤さんってどういう関係なの!?」
伊藤さんはみんなに説明し始めたけれど、それが嘘だってことはすぐにわかった。
小学生のときには伊藤さんの話なんか聞いたことないのもそうだけど、何よりこの間の赤髪の伊藤さん(?)は真二と初めて会ったようだったもの。
「待って!」
「仮に小学生のときにあなたが真二に会っていたとして私が知らないはずはないわ。幼なじみの私が知らないはずがない」
「たとえあなた・・・桜井さんだっけ?幼なじみでも、話したくないことはあるんじゃないかな」
「でも、あの頃の真二が名前で呼びあうような仲の良い友達の話を私だけじゃなく、誰にもしていないとは思えないの」
そこまで言うと伊藤さんは諦めた様子で本当のことを話し始めた。
一通り説明が終わったところで、私は質問をした。
彼女が霊術関係者なのかを確かめる質問を。
「変な質問で悪いんだけど・・・真二は強かった?」
真二は赤髪の女の子と戦ったって言ってた。
だったらこの質問に食いついてくるはず。
「ッ!?」
彼女の反応を見る限り、どうやら私の予想は当たっていたらしい。
「・・・・そうね。まあ、けっこう強いんじゃないかな。男の子だし。まあ、これといった理由はないけど」
「そう・・・。ごめんね、変なこと言って」
「誤解を解いてもらえたならそれでいいわ」
そのあと、伊藤さんはいくつか質問に答えてクラスの女子はみんな教室から出て行った。
私と伊藤さんを除いて。
「伊藤さん・・・・あなた、霊術師なんでしょう?」
「あなた・・・どこまで知っているの?・・・桜井さん」




