臆病者②
訓練場。
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巨大な炎の魔法陣。
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ロベルトの最大火力。
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観客席が静まり返る。
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「終わりだ!!」
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ロベルトが咆哮する。
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魔力が流れ込む。
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炎が膨張する。
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さらに膨張する。
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誰もが思った。
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終わった。
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レオンは動かない。
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逃げない。
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避けない。
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ただ立っている。
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「諦めたか」
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ロベルトが笑う。
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観客席。
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マルクも立ち上がる。
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「終わりだな!」
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ダリウスもそう思った。
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アルフォンスだけは違った。
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何か。
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何かがおかしい。
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その時。
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レオンが一歩だけ動く。
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右。
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たった半歩。
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それだけ。
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次の瞬間。
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炎の魔法陣が揺れた。
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「……?」
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ロベルトの眉が動く。
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違和感。
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ほんの僅か。
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だが。
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魔法陣がズレた。
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あり得ない。
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完成した魔法陣は安定する。
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普通なら。
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ロベルトが魔力を流し込む。
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さらに流し込む。
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修正しようとする。
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しかし。
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ズレる。
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またズレる。
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観客席はまだ気付いていない。
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アイリスだけが目を細めた。
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「……何?」
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レオニスも異変に気付く。
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魔法陣。
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歪んでいる。
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だが理由が分からない。
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その時。
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ロベルトが叫ぶ。
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「動けぇぇぇ!!」
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無理やり発動。
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巨大火炎砲。
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訓練場中央へ放たれる。
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轟音。
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爆発。
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熱風。
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砂煙。
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生徒達が歓声を上げる。
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「決まった!」
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「終わった!」
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しかし。
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煙の中。
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レオンはいない。
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避けていた。
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紙一重で。
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そして。
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ロベルトの顔から血の気が引く。
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「なっ……」
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魔法陣。
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まだ残っている。
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消えていない。
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暴走。
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魔力が逆流していた。
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「ま、待て」
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遅い。
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レオンが逃げ回った軌道。
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柱。
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壁。
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地面。
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無意識にロベルトが撃ち込んだ炎。
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その全てが、
魔法陣の魔力循環を狂わせていた。
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誰にも分からない。
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証明もできない。
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だが。
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レオンは最初からそこへ誘導していた。
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次の瞬間。
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轟ッ!!
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魔法陣が爆発した。
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ロベルト自身を巻き込んで。
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会場騒然。
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バルトが立ち上がる。
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防御結界展開。
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爆風を抑える。
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煙。
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静寂。
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やがて。
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ロベルトが倒れているのが見えた。
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戦闘不能。
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レオンは少し離れた場所に立っている。
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無傷。
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沈黙。
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誰も理解できない。
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何が起きた?
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なぜ勝った?
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マルクが口を開ける。
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「は?」
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ダリウスも固まる。
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アルフォンスは目を細める。
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アイリスは笑っていた。
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面白い。
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初めて。
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本当に面白いと思った。
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バルトが宣言する。
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「勝者」
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「レオン・クロイツ」
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歓声は起きない。
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困惑だけ。
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レオンは軽く頭を下げる。
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そして。
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そのまま訓練場を降りた。
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アイリスが呟く。
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「何したの?」
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レオニスも頷く。
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「分からん」
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屋上。
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カイルが笑っていた。
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「最低」
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リヒトが首を傾げる。
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「褒めてます?」
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「うん」
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カイルは楽しそうだった。
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「めちゃくちゃ褒めてる」
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誰にも聞こえない声で、
小さく付け加える。
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「絶対やりたくない相手だ」
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そして、
交流戦代表選抜二回戦の組み合わせが発表される。
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その名前を見て、
学園中がざわつくことになる。
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レオン・クロイツ
VS
エルナ・ノクス




