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20.領都への道


(影の者の視点)


モノマスの魔術師の使いで、ウィクラシア王国まで派遣された。

目的は、とあるハーフエルフの男を尾行し、魔力や手札を知るため。


しかし、我輩がせっかく運んできた魔力箱は光の矢で破壊され、さらに我輩自身も傷つけられた。


もう駄目だ。引き返そう。


我輩が、モノマスの魔術師に伝えられることはただひとつ。


「あいつに手を出すべきじゃない」


(怜樹の視点)


さすがはアロニアだ。


「おいらは錬金術師の端くれだから、車軸なら直せるよ」


その言葉の通りに、曲がってしまった車軸に魔力で熱を伝えながら、圧力をかけている。

風魔法で少し浮かべており、ジャッキアップ代わりになっている。


「よいしょっ、と。こんなもんかな?」


作業を終えて、馬車の下からアロニアが出てくる。


これで馬車に分乗して移動することができる。

良かった。




領都までの道は、森が続くそうなので、索敵範囲の広い俺が、ミランダとダイエリアナの乗る馬車の御者台に乗ることになった。


ミランダが、恐怖心の残るダイエリアナを励ますように言っている。


「このお兄さんは強いんです。光の矢もすごく速いから、この馬車はもう大丈夫ですのよ」


「そうなのね。なら安心ね……」





道中は特に何もなく、平穏に進んだ。

いや、背後の双子がささやいていたある話題だけが気になったが。


「あの耳……」


「ええ。柔らかそうに見えますわ」


「触らせてもらえないかしら?」


「ミラビリス叔母さまから頼んでみましょうか……」



俺のエルフの耳はやはり気になるらしい。

貴族様でもこの反応か。


子どもたちだから無邪気なものだが、今後のことを考えると、帽子でもかぶったほうが良さそうだな……。



すると、隣に座る本当の御者役がガサガサと袋を探して、俺に何かを差し出してきた。


「ほら、これでも良ければ……おらの日除け帽なんだけど」


「いいんすか!? ありがとう!」





城門が見えてきた。

隣の御者役と話した。


なんでも、馬車に領主家のものとわかる貴族の紋章がついているから、中は確認されないらしい。


ただ、行きにいなかった俺は、「冒険者証を見せた方がいい」とのことだ。




冒険者証を見せようとしたら、貴族様のご威光のお陰で、ノーチェックで城門を通り抜けられた。

ラッキーである。


賑やかな街並みが続く大通りを抜けて、中心部の領主館へ。


というか、城だった。

大貴族様であり、辺境とはもはや別格である。


「お、大きいな~!」


俺は完全にお上りさんになっている。

この世界に召喚されてから見た中で、一番大きな街であり、城であった。





ミラビリスたちの馬車も、少しして城に到着した。


「すみませんが、まずは盗賊の引き渡しからです。屋敷の騎士たちが来ますので、引き渡し願います」


見習いの執事という感じの青年が俺たちに恭しく声をかけた。


「はい。承知しました」


そして騎士たちがやって来ると、ミラビリスにキリッとした敬礼を向けてくれる。


「こちらが捕えた盗賊たちです」


「おう、こんなに生け捕って下さったのか!」


執事の青年が言い添える。


「報酬は後でお支払いたします。今晩は、お屋敷にお泊まりください。これからお部屋に案内いたしますが、夕食の前にはお呼びいたします」



「今日は歓迎の宴かな」


ミラビリスも機嫌が良さそうだ。


対してアロニアは、あまり都会慣れしていないのか、緊張しており、顔が少し青いくらいだった。


セラフは目をキラキラさせている。

興味津々というところか。



さすがに竜の剥製はないようだが、ワイバーンの剥製が壁に飾られている。


俺は惚れ惚れとしてそれを見つめていた。


他のシャンデリアとか、なんかの宝剣らしきものも目の端には入ったが、俺は特に興味はない。


セラフが見つめていたようだったが。やはり竜人の子だな。


「では、お客人はこちらへ」


客間の並ぶ離れに案内される。


「ミラビリス殿は、お部屋でお召し変えいただいたら、ご主君……弟君様の元にお越し願います」


「うむ。了解した」


執事の青年とミラビリスがそのように小声で話している。


ミラビリスの弟が、ここの主君!?

まあ、双子のミランダとダイエリアナの父ってことか……。



(ミラビリスの視点)


久しぶりの弟との再会だ。

1年毎に、北まで人材発掘の旅に出ているが、領都に寄ることはあまりない。


昔は仲の良かった1つ下の異母弟は、ここの領地に封じられてからは、人が変わったようによそよそしくなった。


我がいち騎士となり、そして、騎士団の中で階級を上げてからは、便利な存在と思ってくれたのか、たびたび手紙を寄越して来るようにはなった。


ほとんどがこの領地の有力者である平民、つまり商人たちとの縁談の手紙であった。


我にちゃんと縁談を寄越してくれるのは、この弟くらいだ。

だがちょっと、薄気味悪い。


弟が受ける利益ありきで、我の相手としては、父ほどの年齢差のある御仁ばかりなのだ。


せめて同年代にしてほしい、と言ってみたいのだが。ダメだろうか?





我は弟のいる執務室の戸を叩き、中に呼ばれた。

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