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15話 エルドリア王国 国王








「おーい! ルイス!」


 唐突に叫び声が聞こえ、顔を向けるとガイリックが馬車の中から手を振っていた。

 仮面をつけているのによく解るなと感心しつつ、ルイスは傍まで移動する。


「ガイリック、久しぶりだな」

「おうよ! ガキ共はどうした?」


 ガイリックは馬車から顔だけを出し、キョロキョロと周囲を眺める。


「一緒に来ているよ、大聖祭に参加させるんだ。今は別行動だけどね」

「そういえばメリッサから聞いたよ。それより乗れよ、送っていくぜ」

「そうか、じゃあお言葉に甘えて王城までお願いしようかな」


 ルイスは馬車に乗り込み、ガイリックの対面に腰を下ろした。

 ガイリックに頼み、王城に向かおうと思っていたからこの出会いは嬉しい誤算だ。


 王城に入るにはルイスのような者では不可能だろう。

 彼が勇者だと門番が知るわけもないからだ。


「王城までなら丁度いいな、俺も用があるんだよ」

「そうなのか?」

「ああ、今回の大聖祭。試験官は俺だからな」


 ルイスは目を丸くしてガイリックを眺める。

 大聖祭とは、全国にいる少年兵達の頂点を決める戦いだ。


 その優勝者は次世代の勇者になるため、挑戦する権利が与えられる。

 そんな祭りの試験管というのは、とても名誉な事だ。


「出世したな、ガイ」

「アンタのお陰さ、ハッハッハ!」


「ところで試験の内容を教えたりとかは……?」

「セコッ! でもまぁいいか。今回の試験は一次試験、そして二次試験の二つ。そして最後に本戦だ」


 大聖祭に参加する少年兵の数はとても多い。

 そんな彼らが全員戦えば、観戦しているほうがまいってしまう。


 だからこそ王都側で試験を与え、参加者を振るいにかけるのだ。

 そしてその振るいに残った者だけが、本戦に参加できる。


「二次試験までか、少ないな」

「今回は俺が試験官だからな、ダラダラやるのは性に合わねえ。ああ、試験の内容についてだが、俺とアンタの仲だ。二次試験はチーム戦だというのも、教えておいてやるよ」

「そうか、それはよかった」


 読みが当たった。

 チームで戦うための訓練を、生徒達に与えてきた。

 内容によるが、良い試験内容であれば全員が本戦に出場できるかもしれない。


「お、着いたぜ。王城だ」


 ガイリックの言葉に窓から顔を出すと、そこは既に王城外壁の中だった。

 関所で止められた気配がないのを見るに、ガイリックは顔パスなのだろう。


「ところで、誰に会いに行くんだ?」

「王様と、後は軍務大臣だな。それと商業大臣にも顔は見せておくよ」


「そう言えば、お前アポは取ってんのか?」

「取ってるというか、取れると思うか?」


 会えないなら会えないで別に構わない。

 そのつもり出来ていた。


 ルイスが先ほど言った三人は、ルイスが勇者になる際口利きをしてくれた人たちだ。

 英雄になれなかったが、それなりに恩がある。


「まぁそんな事だろうと思ったぜ。まぁ王様はわかんねえが、他の大臣には会わせてやれるから付いてきな」


 そう言ったガイリックは馬車を降りて、城の門を潜って中へと入る。

 その後ろをルイスも続き、仮面をつけたまま城内を歩いた。


「軍務大臣はともかく、商業大臣と接点あったのか?」

「まぁね、彼は色々と話の合う人間だった」


 エルドリア王国の政治体制。

 まず王を一番上に置いた王国であり、その下に政治方面の成否を決める二十六室というものがある。二十六室とは王国中から集められた賢者と裁判官からなる組織で、王が決めた政策を通すべきか通さないべきかを話し合って決めるのが目的だ。


 そして二十六室と並ぶのが、四人の宰相。


 軍務を一手に引き受ける軍務大臣。

 商業や経済を担当する商業大臣。

 そして民の思想・信仰を監視する治定大臣。

 貴族を代表し、二十六室を統括する貴族大臣。


 この四人を宰相と呼んでいる。

 王。

 二十六室の全員。

 四人の宰相。


 それぞれ三つの派閥は政治の上では平等とされており、彼らの決定が今日のエルドリア王国を作っている。

 ルイスは知らぬことだが宰相の内二人、そして二十六室の多数が彼を英雄にすることを拒否したために、彼は英雄として扱われなかった。


 複雑に思えるこの統治体制だが、簡単に言えば『王・二十六室・宰相』の三つが多数決で国の方針を決めている、というだけの話だ。


 この中でも表立って活動するのは、王と宰相だけ。

 だからこそ、国民にも顔が知れ渡っている。


「ルイス、着いたぜ」


 ガイリックの声に顔をあげると、豪華な扉のついた一室の前についていた。

 ここが会議室だろうか。


「今日は大聖祭の最終確認の為に、宰相のほとんどが来てる。だからまぁ、言いたい事があるなら言ってやれよ」

「フッ、考えておくさ」


 そう応えてルイスは、ガイリックと共に室内へ入った。




 ××××




 二階層をぶち抜いているのではないかと思える天井の高さ。

 幅は左右三十メートル以上あるだろう。


 その中心には長方形の巨大な机があり、そこに三人の男が腰を下ろしていた。

 国王、商業大臣、軍務大臣、そして貴族大臣だ。


「やぁガイリック殿、遅いではないか。して、そちらの方はどちら様ですかな?」


 仮面をつけるルイスの姿を見て、まず最初に口を開いたのは貴族大臣だった。

 肥えた腹を煌びやかな服で抑え、白し長髪を縦ロールにした老人。

 ルイスの記憶ではもう五〇を超えているはずだ。


「アンタもよく知っている人だぜ、宰相さんよぉ」


 ガイリックの言葉に、国王、そして軍務大臣が反応した。


「お久しぶりですね、皆さん。何年ぶりでしょうか」


 静かに語るルイスは、ゆっくりと仮面を外し素顔を見せる。

 そして、その顔を見た瞬間、その部屋にいた全員が息を飲んでいた。


「ルイス=アドレルト……なのか!」

「貴族大臣、久しぶりです。あいかわらず汚物を見るようなその視線は、お変わりないようですね」


 その言葉に、貴族大臣は表情を青ざめる。


「おい衛兵! その者を今すぐつまみ出せ!」


 彼が叫び、周囲に居た衛兵はお互いに顔を見合わせていた。

 一体ルイスが何者なのか、判断しかねるといった様子だ。


「ジャンパーノ、少し黙れ」


 とても静か、それでいて透き通る声が室内にこだました。

 名前を呼ばれた貴族大臣は、その一言で委縮してしまう。


「久しいな、ルイス」


 そう呟いた男。

 短く整えた黒い髪に縦長な瞳孔。

 整えた髭を顎に蓄え、うっすらと皺が浮いている。


「英雄になれなかったことに腹を立て、復讐にでも来たか?」

「まさか、それなら別の方法をとりますよ。王様」


 ルイスが話す相手はエルドリア王国の国王。

 名はレガリア=フォン=エルドリア。

 かつて勇者になる際、口利きをしてくれた男だ。


「そうか、なら何の用できた?」

「長らく会っていませんでしたし、顔見せにでもと思いましてね」


「なるほどな」

「国王! あんな者と言葉を交わすのはお止めください!」


 二人の会話を割るように、貴族大臣であるジャンパーノが大声を出した。


「半魔などという汚らわしい存在と、国王が言葉を交わしたなどと民に知られれば一体どのような事になるか分からないアナタではないでしょう!」

「聞こえなかったのか、ジャンパーノ。余は黙れと言ったはずだが?」


 今度の声は、先ほどよりも尖っていた。

 わずかながらに怒りを混ぜた言葉に、ジャンパーノはたじろぐ。


「ジャンパーノ、貴様は少し出ていろ。大聖祭の最終確認の会議ならお前はもう必要あるまい」

「ですが国王!」

「二度言わせるな、出ていけ」


 睨みを利かせたレガリア王に、ジャンパーノは何も反論できなかった。

 やがて彼は諦めたように溜息をつくと、ルイスの脇を通り過ぎて部屋から出ていった。


「あ~らら、あんな事言ってい良いんですか?」


 ジャンパーノを見送ったルイスは、王を見てそんな事を呟いた。


「知らん、余が決めた事だ。文句は言わせん」

「まるで暴君の口ぶりですね」


「実際余は暴君であろう、国に尽くした者に何も褒美を与えなかった暴君だ」

「その点なら私は否定しませんよ」


 ルイスの嫌味のような言葉に、レガリアは何も答えず小さく笑うだけだった。

 そんな二人の会話を眺めていた残りの軍務大臣、そして商業大臣も同じように笑う。


「久しぶりですねルイス=アドレルト。自分を覚えていますか?」

「もちろんですよ、ヴォルビオッサさん」


 ヴォルビオッサ、彼が商業大臣である。

 オールバックの髪に、咥えた煙管、そして全身黒尽くめの服に身を包んでいる。

 彼もまた王と同じようにルイスが勇者になる事へ、口利きしてくれた内の一人だ。


「前は大臣補佐だったと思いますが」

「ええ、出世しました。今は俺が商業大臣ですよ」

「それはおめでとうございます」


 そこで会話を区切り、残る一人に目を向けた。

 軍務大臣。

 ナルニアレイ=ラストゥード。


 かつてのパーティーリーダー、ジェイクの叔父にあたる人物だ。


「久しぶりだな、ルイス」

「ナルニアレイさんも、お久しぶりです」


「元気だったか?」

「それなりにですね」


 当たり障りのない会話を繰り返していると、レガリア王は立ち上がりルイスを見つめてきた。

 その目でルイスを見つめる事数秒、やがて彼は溜息と共に肩を落とす。


「会議は中止としよう、ルイス。着いてこい」


 そう言って王は、そばに居た侍女を連れて足を進める。


「お前に話しておきたい事がある」










作者に学がないので分かり辛かったかもしれないので後書きで解説を。

この国を作った人の末裔で、一番偉いよ『国王様』


色んな人が集まって意見を出し合うよ『二十六室』


他国との戦争や魔物の討伐を含め、兵士を使う仕事は大体決めるよ『軍務大臣』

お金儲け大好き、寄付をするから政治に口出しさせてよ『商業大臣』

王政を批判する人がいたりするけどそれを黙らせるよ『治定大臣』

いっぱい税金払っているんだし貴族にもっと口出しさせて『貴族大臣』


これが雑な解説です。

『王・軍務大臣』は基本的に世襲制。

二十六室は世襲だったり、宰相による指名であったりとバラバラ。

商業大臣は商業組合が決めた人がなります。


この人たちが王政の大まかな舵取りをしています。


正直あんまり重要でもないっスけど、軍務と商業は三章で割と活躍するので覚えておいてくださいな。


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こちらが完結したのでよければ見てください。
ビカム・ヒーロー
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