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第33話:何か特別なもの-Poslední Sobectví-

「ねえ、お姉さま。お紅茶をいれてくださいます?」

眩い輝きがわたしの目を刺す。

どこか幼い声がわたしの中を響いた。

目の前で微笑むのはどこか優し気な女性。

わたしは彼女を知っていた。

ううん、知らないはずなのになぜかその名前が頭の中に浮かんだのだ。

ステュアート・アナベルさん。

ブリタイキングダム北部の王家ステュアート家の長女。

彼女はステュアート・リザベルさんのお姉さんだった。

「あらあら、またお紅茶?」

「はい! わたくし、お姉さまのいれるお紅茶が大好きです!」

「それでは淹れてきますね」

アナベルさんが穏やかな物腰で戸棚へと手を伸ばす。

その時、扉をノックする音が聞こえた。

「失礼します……」

部屋に入って来たのはどこか気の弱そうな少年。

ううん、違う。

短い髪と男の子のような服装から少年のように見えたけれど彼女は――

「あらミーガン! よいところにきましたわ!」

「リザベル様……?」

「ミーガンもお紅茶をいただきましょう!」

「お紅茶、ですか?」

「ええ。お姉さまのいれたお紅茶よ! ミーガンも好きでしょ?」

ミーガンさんは一瞬、明るい表情を浮かべた。

けれど我に返ったように表情を引き締める。

「遠慮、させて頂きます。僕の仕事はお掃除なので……」

「ミーガンのお仕事はわたくしのお世話でしょ? いっしょにお紅茶をいただくのもわたくしのお世話でなくて?」

口が達者なリザベルさんにミーガンさんは困った表情を浮かべる。

「あらあら、一本取られたようね。ミーガン、リザベルの言う通り一緒にお紅茶を飲んでいきなさいな」

「それでは……頂きます」

「お姉さまのお紅茶、とってもおいしいわ!」

「あらうれしい。ミーガンはどうかしら?」

「はい、おいしい……です」

それは何気ないひと時。

とても穏やかで、とてもやさしい時間。

リザベルさんはそんな時間がとても大好きだった。

「わたくし、ずっと3人でいっしょにいたいわ! わたくしとお姉さまとミーガンと!」

けれど、そんな日々はいつまでも続きはしない。

激しい嵐の明けた朝。

アナベルさんは遺体となって見つかった。

原因は嵐の中、外に出たことにより氾濫した川に攫われたせいの事故死だという。

そんな日にアナベルさんがどうして外に出たのか、外で何をしていたのかは全くの不明。

そしてリザベルさんはそれが嘘だということを薄々勘付いていた。

「姫様、また泣いておられたのですか……?」

アナベルさんが死んだ日以降、ミーガンさんはリザベルさんを「姫様」と呼んだ。

アナベルさんの死去により、第二王女であるリザベルさんが正当な姫となったからだ。

「わたくし、ダメなお姫様ね……。わかっていたのに。わたくし達ステュアート家は南の方々からは疎ましい存在だということを」

彼女は確信していたのだろう。

姉であるアナベルさんを事故に見せかけ殺したのは南部の王族――その一派であることを。

「姫様……」

気まずい沈黙。

それに耐えかねたかのように、ミーガンさんは戸棚へと手を伸ばした。

「ミーガン?」

「姫様、しばしお待ちを」

ミーガンさんは不慣れな手つきでミルクを火にかけ始める。

「えっと、ミーガン……何を?」

「何でも、世の中にはミルクティーというものがあると言います」

ミーガンさんは低い身分の出自で教養は全くと言っていいほどなかった。

それは、ステュアート家が好意で雇わなければきっと死んでしまっている程の。

「私は不安な時には暖かいミルクを飲みます。そうすると、落ち着きますから」

その所作はきっとアナベルさんが紅茶を淹れるところを見様見真似で辿っているのだろう。

ミーガンさんのぎこちなさ、暖かさ、そして重なる姉の姿にリザベルさんは思わず笑みを浮かべた。

「私は、姫様の笑顔が大好きです。ですから、どうぞ」

ミルクで煮出された紅茶をカップへと注ぐミーガンさん。

「ミルクティーです。姫様」

その表情があまりにも真剣なものだから、リザベルさんはついに耐えきれず吹き出してしまう。

「ど、どうしたのですか姫様!?」

「ありがとうミーガン。けれど、一つ勘違いをしてますよ」

「勘違い、ですか……?」

「ミルクティーはね、普通の紅茶とミルクを混ぜるものなのよ」

「そうなのですか!?」

驚くミーガンの表情を見ていると、気づけば涙なんてすっかりかわいていた。

「すみません姫様。すぐに淹れなおします!」

「いいの、ミーガン」

ミーガンの淹れたミルクティー。

その深い味わいはリザベルさんの心を温める。

「なんだかとっても、ロイヤルだわ」

もう涙は無い。

それと同時に強い決意が胸に宿った。

「わたくし、もっと強くなるわ。この国を変えるために」

優しかった姉の顔を思い出す。

太陽のように暖かく、輝いていたアナベルさんを。

彼女のような光を消してしまわないように、リザベルさんはこの国を変えたいと、そう思った。

「ミーガン、あなたはついてきて来れますか?」

ミーガンさんは傅く。

「今は、貴女について行くとは言えません」

断固とした言葉。

自分の信念を持ったミーガンさんの言葉。

「私ももっと強くなります。その時は、私も貴女の夢へとついて行きましょう。ですが今は一緒にいることしかできません。今までと同じように」

「一緒に、いてくれるのですか……?」

「それは約束しましょう。私達はずっと一緒です。リザベル様とアナベル様とそして私で」

「そうね。お姉さまもきっと、わたくし達と一緒にいてくださるわよね」

「はい」

「では一緒にいましょう。わたくしの騎士ナイト


一瞬の眠りから覚めたような感覚にわたしはハッとする。

目の前には装騎アヌの姿。

「今の、は……?」

「セッカさん、今、あなた……」

さっき確かに見ていたアレはなんだったのか。

リザベルさんの、過去?

「セッカ、どうしたの!?」

「お嬢様、ご無事ですか!?」

心配したようなアマユキさんの声。

それにわたしは頭のもやもやを振り払った。

「だ、大丈夫です!」

「ミーガン、こちらには構わないで。あなたはアマユキさんを」

そうだ。

今は試合中。

ドヴォイツェ・サムシングエルスとの戦いの最中だ。

わたしは装騎スニーフの態勢を立て直す。

それは装騎アヌも同じだ。

「どうやら仕切り直し、みたいですね」

「はい。リザベルさん……行きます!」

わたしは片手剣ヴィートルを閃かせる。

その一撃を回避しながら装騎アヌはアズルの刃ロイヤルセイバーで隙を突いてくる。

下手に動けばあの一撃で串刺しにされるか――そうでなくても、ロイヤルバリツで組み伏せられてしまう。

「どうこの状況を打開する……?」

わたしは自問した。

きっと正攻法ではダメ。

なんとか相手の不意を突かないと。

わたしの能力で相手の不意を突くのなら……。

「そうだ……」

今までの戦いが頭の中に過る。

もしかしたら、あの手ならできるんじゃないか。

「もっと自分に、自信をもって……」

タイミングを計る。

不意の一撃を入れる為に。

念には念を――その為には立ち位置も重要だ。

相手に悟られないように、少しずつ、少しずつ。

「アズルバースト!」

盾からアズルの輝きが噴き出る。

「ロイヤルフィールド」

ロイヤルフィールドの能力は、ただ単にロイヤルバリツの力を増すだけではなかった。

あのフィールドの中では装騎アヌが滑るように動くのだ。

まるで反発する磁力を利用しているかのように。

ううん、そういう能力だ。

一種の磁場のようなものを発生させる――その応用でロイヤルバリツの受け身とカウンターの力を増しているんだと思う。

それでもきっと、不意打ちには対応できないはず。

わたしが狙うのは、その隙!

「3、2、1っ!」

わたしは思いっ切り片手剣ヴィートルを振り払う。

それはどう見ても致命的な隙。

実際、この手は賭けだった。

もしも失敗すればわたしの装騎スニーフはなすすべもなく機能を停止させられるだろう。

「どういう、ことです……?」

装騎アヌは一瞬動きが鈍る。

きっとわたしの作った隙を攻撃を誘うためにわざと作ったものだと思ったのだろう。

「ですけど、攻撃を誘っているにしては――隙が大きすぎますか」

さすがはリザベルさん。

装騎アヌは一瞬で気を取り直し、ロイヤルセイバーの刃を突き出した。

けれどリザベルさんの一瞬の"勘違い"――それだけあれば十分。

わたしは素早く片手剣ヴィートルを盾ドラクシュチートに仕舞うと、腰のストックから徹甲ライフル・ツィステンゼンガーを装備し構える。

「お願い、ツィステンゼンガー!」

「――っ!!」

そして、撃つ。

徹甲ライフル・ツィステンゼンガーの一撃は装騎アヌのロイヤルセイバーよりも早い。

そう、武器の早持ち替えによる奇襲攻撃。

それがわたしの作戦!

「さすがセッカさんです!」

リザベルさんの声は思いのほか余裕。

素早くロイヤルセイバーを解除すると、霊子扇グラストンベリーを開いた。

「ダメージは最少に、避けられなくても……致命傷にならないところなら――」

ロイヤルエールにロイヤルフィールド――そして霊子扇グラストンベリーにリザベルさん自身の装騎センス。

それらすべてを駆使していることが見ていたら分かる。

結果――わたしの徹甲ライフル・ツィステンゼンガーの一撃は全て凌がれた。

「まだ、ですっ!」

だけどわたしにはまだまだ手はある。

徹甲ライフル・ツィステンゼンガーをストックに仕舞うと、片手剣ヴィートルの柄を握り――

「ドラククシードロ!!」

「剣と盾が――一体で斧に……」

振り払った。

「そして、ロズム・ア・シュチェスチー!!」

更に相手を吸い寄せるP.R.I.S.M.能力で、装騎アヌを一気に装騎スニーフの元へ引き寄せる。

これで相手の動揺を誘って、わたしのドラククシードロの一撃を入れるのだ。

「ロイヤル――」

しかし装騎アヌに動揺は見えない。

一撃を涼し気に身をかわすと、そっとその手をドラククシードロへと触れる。

わたしの背筋に悪寒が走った。

このままだと次の瞬間には装騎スニーフは宙に浮いているだろう。

お願い――間に合って!!

「バリ――ッ!?」

間に合った!

背後からの不意の衝撃――今度こそリザベルさんは驚いただろう。

「今のは――――」

装騎アヌの足元に転がるのは石の塊。

それはこのフィールドにそびえる遺跡――その欠片だ。

「もしかして、さっきの銃撃で」

その通り。

最初に撃ったツィステンゼンガーの一撃は、装騎アヌの背後にあった遺跡の柱を崩す為。

そしてその次のロズム・ア・シュチェスチーは破壊した遺跡の石を引き寄せ、装騎アヌに当てる為!

わたしの作戦――その最大の狙いは、今!

「ヴィートル!!」

わたしは盾ドラクシュチートのロックを解除し、片手剣ヴィートルを抜き取る。

そして――

「スターライト・ハートビート!!」

流星の斬撃で装騎アヌを機能停止にさせた。


「ローゼスペタル!」

ロゼッタハルバートの斬撃が装騎カムロスを襲う。

「ナイツカーム」

私の一撃を装騎カムロスは短槍ルキウスを横薙ぎに払い防いだ。

あれから何撃打ち合っただろうか。

さすがは今まで1人で戦い抜いてきただけはある。

ミーガンの実力は間違いなく本物だった。

「セッカは――がんばっているようね」

チラリとサブディスプレイに目を移す。

装騎スニーフは健在、一生懸命装騎アヌと戦っている。

尤もそのことは、画面を見ずとも身体で分かった。

装騎アヌの放つロイヤルエールの重圧をほとんど感じないからだ。

「余所見をしていていいのか?」

「ふん、アナタの攻撃は単調すぎて飽きちゃうのよ」

「口が達者だ」

今のところ勝負は互角。

この膠着した状況を打開するための手が必要だ。

きっとミーガンも同じように策を考えているだろう。

「ドーン・オブ・ザ・ナイト……」

装騎カムロスから放たれた気迫。

今にも短槍ルキウスの一撃が放たれそうなその重圧――しかしそれは錯覚。

「2度も通じると思わないことね!」

本命はその次の一撃。

私はそれをロゼッタハルバートで打ち返す。

「流石だ。だが、対応して貰わないと困る」

装騎カムロスは再び短槍ルキウスを構えた。

まさかまたドーン・オブ・ザ・ナイトを?

「フールズソニック」

いや、違う。

その一撃は確かな一撃。

私はその一撃を受け止めた。

でも、それで終わりなはずは――

「速い!?」

なかった。

装騎カムロスは短槍ルキウスのブースターを全開。

超高速で短槍ルキウスを手元に戻し、そして、間髪入れずに二撃目を放つ。

「くぅ……っ」

衝撃が私の体を揺らす。

「仕留めきれなかったか」

ダメージは浅い。

装騎ツキユキハナの右脇腹を掠めた程度だ。

それよりも驚愕だったのは今の技。

フェイクの一撃で相手の防御を誘い、高速の二撃目で隙を突く。

基本的な流れはドーン・オブ・ザ・ナイトと同じ。

けれど違いは、錯覚であるドーン・オブ・ザ・ナイトの初撃と違いこの技の初撃は確かな威力を持っていた。

それこそ、最初の一撃すら必殺の一撃となるほどの。

「短槍ルキウスのブースト機能。そしてマーズスタンスの騎体強化を利用した神速の二連突き……」

「そう。それが私のフールズソニック」

そしてその二撃は両方とも的確に私の隙を突いてくる。

ただ闇雲な連撃ではないのだ。

「これがアナタの打開策ってワケね……ッ」

「一撃必殺――とはいかなかったが」

「そして次は――私の番!」

アズルの輝きを身に纏う。

「この光は……」

装騎ツキユキハナはそのアズルを極限にまで高めた。

無限に近いアズルを生み出す、装騎の高み。

「ツキユキハナ、限界駆動クリティカルドライブ!」

それが限界駆動クリティカルドライブ

装騎ツキユキハナの力はそれによって更に後押しされる。

これだけアズルの力が充実すれば――

「ローゼスソーン!」

左腕を強く固め、アズルの棘を作り出した。

ロゼッタハルバートを薙ぎ払ったその反動を利用し、左腕の加速を増す。

「くっ……」

短槍ルキウスにアズルを纏い、装騎カムロスは私の拳を受け止めた。

そのまま一気に、上体を捻る。

拳を相手によりめり込ませるように。

だけど本命はソレじゃない。

そのまま右手に握ったロゼッタハルバートを装騎ツキユキハナの背後から――

「…………ッ!!」

警告音が鳴り響く。

理由は分かっている。

「仕方ないわね……」

けれど相手の意表を突くのなら、新技を決めるしかない。

「シークレットブルーム!!」

私はロゼッタハルバートを手放した。

「!!」

装騎ツキユキハナの背後から放たれた一撃をミーガンは咄嗟に見て取っただろう。

ローゼスソーンの一撃による陽動――そして、その動作を利用したロゼッタハルバートの一撃。

それは装騎ツキユキハナの影から放たれる。

私の投げたロゼッタハルバートは弧を描きそして――

「背後からか!」

敵を引き裂く。

「だけど――」

装騎カムロスは躊躇なく跳んだ。

装騎ツキユキハナの拳と、短槍ルキウスの力が拮抗するその中心を軸として、装騎ツキユキハナの背後に潜り込むように。

やっぱり――捉えられなかった。

「背後は取った」

「そう簡単に、取られるとでも!?」

戻ってきたロゼッタハルバートを私は掴み取る。

その勢いで装騎ツキユキハナを反転。

ロゼッタハルバートと短槍ルキウスが激しくぶつかり合った。

やっぱりあの程度じゃダメだ。

あの程度の捻りでは。

けれど、あれ以上装騎の身を捻れば――。

「最悪、自滅するわね」

一番の問題はフールズソニックで受けた右脇腹のダメージ。

その一撃で外装が上半身と下半身を繋ぐ駆動系に食い込んでいた。

普通に戦う分は問題ない程度のダメージ――けれど、全身を捻じりそれをバネとして利用する技の多い私にはその影響は少なくない。

シークレットブルームの一撃だって、もっと上半身を捻ることができたら……。

「勝てる」

そうだ。

例えここで装騎ツキユキハナが動かなくなっても――この技を成功さえさせればいいのだ。

私は左手を強く固める。

「ローゼスソーン!」

「また同じ手か?」

再び装騎カムロスは短槍ルキウスで装騎ツキユキハナの拳を受け止めた。

そして上半身を思いっ切り捻る。

「同じ手が二度も通じるとは思えないが」

「ふん、そのとおりね!」

そもそも一手目だって通用しなかったのだ。

でも、一手目が通用しなかったからこそ突ける意表もある。

警告音が鳴り響く。

けれどまだだ。

限界まで上半身を捻る。

拳をもっとめり込ませ、右腕をもっと後ろに回して、身体全体をバネにする。

「頼むわよ――ツキユキハナ!! シークレットブルーム!」

その反動の勢いのまま――ロゼッタハルバートを投げた。

「また背後――いや、これは……」

シークレットブルームは装騎ツキユキハナの騎体で相手の視界を遮った影からロゼッタハルバートを投げ放つ技。

それは間違いない。

ただこの技はさっきみたいに回りくどく相手の不意を突く技ではない。

真のシークレットブルームはもっと速やかに敵を切り裂く。

開いた装騎ツキユキハナの左脇。

その下からロゼッタハルバートの刃が伸びる。

捻りが足りず大回りになってしまった初撃とは違う。

弧は最小限に。

「威力は最大限に!」

装騎ツキユキハナの一撃は装騎カムロスを引き裂いた。

と同時に右半身の機能が大幅に低下する。

「ダメージが……っ。けれど」

勝った。

装騎カムロスは動かない。

けれど――何かが、おかしい。

「ッ!!」

私は咄嗟に身をかわす。

その瞬間、短槍ルキウスの一撃が虚空を穿った。

装騎カムロスはまだ動けたのだ。

「でも、確かに私の一撃は入った。アレだけのダメージを受けて動けるはず……」

「私は騎士だ。不屈の忠誠、不屈の意志――それが私のP.R.I.S.M. Akt.2ステイン・アライヴ!」

どう見ても装騎カムロスは満身創痍。

けれど動いている。

そういう――能力!

「フールズソニック」

そして間髪入れずに放たれる短槍ルキウスの一撃。

さすがにダメージは大きいのだろう。

その一撃は先の一撃と比べると緩慢で見切るのは容易かった。

ただ――

「装騎が……動かないっ」

満身創痍なのはコッチだって同じ。

風花ブルーム開花ウィンド!」

装騎ツキユキハナをP.R.I.S.M.で吹き飛ばし、フールズソニックの一撃目を回避する。

だが、

「追撃する」

フールズソニックには2撃目がある。

最初の一撃はなんとかかわせた――けれど、もう一撃かわすには、

「ダメージが、大きすぎるっ」

「ロズム・ア・シュチェスチー!!」

不意に装騎ツキユキハナが何かに引き寄せられた。

この能力は――

「セッカ!」

「まっ、間に合った!!」

「装騎スニーフ……ということは、お嬢様は……!」

装騎アヌは機能を停止。

そうか……セッカは勝ったんだ。

装騎アヌに。

「セッカ、装騎カムロスのダメージは大きいわ。きっと、あと一撃で……っ」

「はい! スターライト・ハートビート!!」

セッカは間髪入れずに一瞬の連続突きを放つ。

それはセッカがずっと特訓していた新しい必殺技。

「完成、したのね」

スターライト・ハートビートの連続突きは確かに装騎カムロスを貫いた。

だけど――

「ステイン・アライヴっ!!」

ダメだ。

装騎カムロスは機能を停止しない。

「どうして……」

「アマユキさん――さっき、わたしが一撃を入れた時なんですけど」

「どうかした?」

「アズルの光が普通よりも強かった、ような……」

「アズルの光」

確かに装騎に攻撃をすれば、アズルの放出が確認できることがある。

特にP.R.I.S.M.能力はアズルを利用した演出能力――となれば、P.R.I.S.M.を発動した装騎を攻撃すれば派手なアズルが散るのは当然だ。

「なんか、そういうのじゃない気がして。カムロスの中にアズルの塊があるような光というか」

「アズルの塊……」

私はジッと装騎カムロスを睨む。

アズルを利用し、物を持ち上げたり固定するのは難易度こそ高いが不可能ではない。

ということは、

「アズルを利用して装騎を無理矢理動かしている」

「なるほど……」

そう。

それこそがステイン・アライヴの能力。

恐らくそのアズル量は観客からの注目度――S.T.E.L.L.A.の数値による。

装騎カムロスは満身創痍の状況で私たち2騎を相手にしている。

ということはそれだけ人々の注目を浴び、応援を受けているということだ。

そしてそれは、装騎カムロスの力になる。

「物理攻撃は――効かない、ですね」

セッカが何度か攻撃を加えるが装騎カムロスの動きは止まらない。

「ならば、アズルブースト!!」

ドラクシュチートから放たれるアズルの奔流。

今の装騎カムロスに当てることは容易。

けれどやはり、

「倒せ……ない」

「並みのアズルでは装騎カムロスの機能を停止させるには足りない。かといって、通常技では効かない。どうする? セイジョーたるもの思慮深くあれ……」

せめて、私が満足に戦えたら。

「アマユキさん」

「何か手が?」

「装騎カムロスはアズルを使って装騎を保たせているんですよね」

「そう考えるのが自然ね」

「なら、アマユキさんのブロウウィンドを使えば」

アズルを吹き飛ばす私のP.R.I.S.M. Akt.2。

確かにあの技を使えば装騎カムロスのステイン・アライヴを打ち破ることができるはずだ。

けれど――

「わかってます。アマユキさんのツキユキハナがまともに動けないことは」

セッカは言った。

その言葉には強い決意が秘められているのがわかる。

「ですけど、わたし達は2人(ドヴォイツェ)です」

「ドヴォイツェ……」

装騎スニーフが私の傍に立つ。

動かなくなった右半身に、装騎スニーフが左手を添えた。

「わたしが、こんなことを言うのはおこがましい――ですけど、もしもアマユキさんが困ったらわたしが助けたい。わたしもたくさんアマユキさんに助けてもらったから」

いつの間に彼女はこんなに強くなったのだろう。

最初に会った時はとても弱々しくて、おどおどしてて。

「倒しましょう。わたしが支えます!」

「フン。仕方ないわね。やってあげるわ!」

P.R.I.S.M. Akt.2

「次で決める――そういう事か。ならば私も、力を振り絞る!!」

「来なさい! 勝つのは私たち――スニェフルカよ!!」

BLOW WIND

私の――私たちの力を合わせた一撃は、装騎カムロスの機能を停止させた。

『勝者、ドヴォイツェ・スニェフルカ!!』


挿絵(By みてみん)

ステラソフィアTIPS

「ロイヤルミルクティー」

紅茶にミルクを入れるのではなく、紅茶をミルクで煮出したミルクティー。

その起源はとある王室に仕える従者がミルクティーを作ろうとしたが作り方が分からず、茶葉を温めたミルクの中に入れてしまったのがはじまりだという。

それを飲んだお姫様が大層気に入ったことから今日までロイヤルミルクティーの名で愛されている。

嘘だけど。

ちなみにロイヤルミルクティーという言葉は和製英語で、海外ではシチュードティーと呼ばれる。

チャイなども同じ部類。


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