ニールのその後 「君の想う人は……」
春うららかな午後のある日、レジーナ・マティス主催で優雅なお茶会が開かれた。
招待された女性はレジーナがより選んだ淑女達と、彼女の愚息、そして国境警備団団長のナイデラだった。
三ヶ月前、アヤーテ王国に新しい王妃が誕生した。
それから一ヵ月後、ニールが突然砦に訪れた。
それはあの時の礼をするためらしく、彼はナイデラに単刀直入にお礼は「女か酒か」と聞いてきた。
独身であり、彼女も数年単位でいないナイデラはすかざす「女」と答えた。するとニールは、更に彼の好みを確認した。
自分の好みの女性を紹介してくれるのかと嬉しくなった彼は、「美人で胸がでかい。でも性格はおとなしい」と素直に彼の希望を話した。
それからしばらく音沙汰がなかったが、二週間前、ナイデラの元に招待状が届いた。
それがこのお茶会だ。しかも、嬉しくないことに煌びやかな礼服まで一緒に送られてきていた。
「ニール。これは礼。礼だよな?嫌がらせにしか思えないのだが?」
「礼だぞ。礼。ほら、皆おとなしそうで、美人だろ。しかもあの胸、でかいぞ。かなり」
小声で話しかけてくるナイデラにニールはすかさず返す。
「なんか、君の母上の目がすごい怖いんだが?」
「そうか?まあ、気にするな。家柄もいいし。付き合って、結婚するにはちょうどいい女性ばかりだぞ」
「……というか、これはもしかして君の見合いなのか?」
「そうとも言うな」
「ぶちのめしてもいいか?なんで、俺を呼ぶんだ」
「だって、お前、「美人で胸がでかい。でも性格はおとなしい」がいいんだろう。母上にそう言ったらすぐに候補者を選んでくれたぞ」
「……やはり君の母上は最強な気がする」
「そうか」
「ああ」
ナイデラは脱力をしながらも、このお茶会を無事に乗り切った。しかも、のちのち彼はこの見合いの場に招待された淑女の一人と結婚することになる。
けれども当のニールは、アヤーテ王宮に王子が誕生しても、まだ独身を貫いていた。
「……馬鹿な男だな」
国境警備団団長から、警備団団長に鞍替えしたナイデラは、時折ニールと飲むことがあった。その度に、彼はニールのことをそう言って詰る。
街に王妃が下りるとき、決まってニールが同行する。ナイデラはその様子を遠くから眺め、嘆息するしかなかった。
「陛下とシズコ様の二人が好きなんだ」
ニールが一年半前に砦で放った言葉は嘘ではないだろう。けれども、ナイデラは部下になった警備兵からニールが結婚の儀の前日に街で自棄酒をあおっていた話を聞いていたし、彼が静子を見る眼差しがとても甘いことを知っていた。
「本当、馬鹿な男だ」
「うるさい。あの時の条件に「胸がでかい」が入っていたことを、かみさんにばらすぞ」
「言ってみろ。ぶちのめす」
「お前に俺がぶちのめせるか?」
こうして、今夜も酒場では男どもがどうでもいいことで喧嘩は始める。
ニールが伴侶を決めるのがいつになるか。それは誰にもわからなかったが、彼はそれなりに充実した日々を送っていた。
番外編まで読んでいただきありがとうございます。
これにて静子編は完結になります。




