第一話 しろとくろ
高校一年生真雪しろと雨夜くろは小学四年生の時からの大親友。
しろはふんわりとしたレイヤーボブの白い髪に、青みがかった灰色の目のまさに白っぽい見た目で、くろは黒髪ロングで黒い目のクールそうな見た目の女子高生である。
二人が仲良くなったきっかけはゲーム。そして二人は毎日のように「あるもの」を賭けてゲームをしているのだ。
くろは真剣な表情で、しろはどこか余裕のある表情で…
ところで、しろは小学四年生の当時とあるゲームがクリア出来ずその事をクラスメイトに話していた。
するとその子が「ゲームなら雨夜さんが得意だよ」と教えてくれ、しろは表情をぱあっと明るくしてすぐさまくろの席へと駆け寄って行く。
「あーまーやーさん! ゲーム上手なの?」
「わ…! 真雪さん…⁉︎」
突然声をかけられたくろは戸惑った。三年生の時に同じクラスになったとはいえ、この一年ほとんど話した事のないしろが自分の席の前で無邪気な笑顔を振り撒いているのだから。
しかし「ゲーム」という言葉を聞いたからには黙ってはいられない。
「まあ…クリア出来なかったゲームは無いし、対戦でもほとんど負けた事は無いかな?」
「えー! すごいね! すごいね! じゃあ今日あたしの家に来て! ゲームクリアして!」
くろの両手を取って嬉しそうに上下に振るしろに、まんざらでもない表情のくろ。
こうしてこの日二人の(特にくろの)運命の歯車が回り始めた。
そして現在しろの部屋。
本日は落ちものパズルの対戦でくろは劣勢に追い込まれていた。
「く…ここで巻き返さないと…私の平穏な学生生活が…!」
コントローラーを握る手に力が入るくろ。自分のフィールドに積み上がったブロックを何とか消しつつ持ち堪える。
その横でしろは鼻歌混じりに軽やかにボタンをポチポチ。
「くろちゃん、もう諦めたら?」
ドスンとくろのフィールドにお邪魔ブロックが降り注ぐ。
ニヤリと横目で見てくるしろに、くろは歯を食い縛り声を絞り出すように言葉を漏らした。
「ここで負けたら…私の靴下が…!」
くろの姿は学校の制服に右足素足、左足靴下…本日は一戦負けており右足の靴下はすでにしろの横に置かれている。
そう、二人が毎日賭けているものとは「靴下」。くろは靴下を取り戻そうと必死だったのだ。
「家にもう靴下が残って無いのよ! 勝って靴下を取り戻さないと明日から裸足登校だわ!」
切実なくろの叫びが部屋に響く。コントローラーの指捌き、視線の移動、ブロックをどこへ置くかの判断力、思考力。全てが極限にまで高まる。
その時であった。
「あ…置く場所間違えた…」
しろが発したその言葉にくろの心に光明が差し込んだ。
しかし…
ぽん♪ ぽん♪ ぽん♪…
しろのフィールドから小気味良いテンポでブロックの消える音が鳴り響く。
その音はしろにとってはファンファーレ、くろにとっては裸足登校への足音…
くろの心に差した光明はほんの一瞬のうちに消え去り、絶望のお邪魔ブロックがフィールドを埋め尽くした。
「はーい! あたしの勝ち〜!」
しろは満面の笑みでくろの左足ににじり寄ると後ろへとコロンと転がし、何の躊躇いも無くスポーンと左足から靴下を奪い取った。
「くろちゃん裸足登校決定〜♪」
「あんたゲーム苦手なくせになんでそんなに強いのよ!」
「え〜? あたし強くないよ? くろちゃんが弱いんだよ」
そう、しろはくろ以外と対戦すると全敗。一方くろはと言うと猛者の集うオンライン対戦で勝率8割超え。
しかしくろはなぜかしろに対しては滅法弱い。手を抜いている訳でも無く本気でやってもどうしても勝てないのだ。
打ちひしがれるくろに、しろはニシシと歯を見せ悪魔の提案をする。
「じゃあくろちゃん、次は別のゲームでこの靴下取り戻すために『負けるたび裸足登校一日追加』を賭けて勝負する?」
「いいわよ! 望む所よ! 絶対取り戻してみせるわ!」
…意気込んで勝負に挑んだもののくろは当然のように連敗を喫し、見事一週間裸足登校となった。
ところで靴下を奪い続けるしろはと言うとすでに裸足であり、たとえくろが勝負に勝ったとしても奪うもクソもない状態である事を二人ともに気付いていない…




