65話 人間性
私の服はもはや血で濡れていて殺人を起こしてきたかのように見間違うだろう。
「千尋……」
「ああ、ものすごくたのしいなぁ」
「楽しいかもしれないが……人間を殺したんだぞ!!!」
「そうだ、本当は許されないことだ。だけどこいつは私たちを殺そうとした、正当防衛じゃあないのか?」
「正当防衛かもしれない、だが殺すのは違うだろ」
綾瀬さんは私の眼をみてそう言った。
「本当はな……千尋に堕ちてほしくなかったんだ。でもここに踏み込んだ以上、仕方なかった」
「ごめん……」
「いやいいんだ、こういう仕事上、こういう事が起こりまくる」
綾瀬さんはどことなく寂しそうな雰囲気だった。
「いやほんと……なんだろうな」
「いやいいんだ、謝らなくて」
(これ綾瀬さんは私が闇落ちしないようにしてくれてるのかな……)
「大丈夫、私は綾瀬さんの弟子だから」
「そうか、そう言ってくれると助かるよ」
綾瀬さんから負のオーラが少しだけ消えた。
「しかし人を斬ったときの感触がなんか生々しかった」
「そりゃ人を斬ってるんだもん、だが……なんでもない」
綾瀬さんは何かを抱え込んだまま話そうとしなかった。
「綾瀬さん、どうしたんですか?」
「……何でもない」
そして依頼を済ませ、現実世界に戻ってきた。
「なぁ千尋、ちょっと寄りたいところがあるんだ」
「山奥じゃないよね」
「山奥じゃないけど山に近いね」
そして私たちは山のそばにある道路でやっているおでん屋に入った。
「私はな、いろいろなものを食べてきた。高級料理店のお寿司やお肉、だが一番うまいって感じるのは90円のおでんなんだよ」
「そうなんですね」
「ああ、商売としてやるんだったらこだわりはあるかもしれないが高い、だがここはこだわりすぎていて安いんだ」
「なるほど」
「やっぱこのおでん美味しいな」
「お客さん、その血は?」
「ああ、ちょっと道で盛大にこけちゃってこうなった」
「やんちゃだなぁ~」
そしておでんを食べ終わった後、綾瀬さんはおでんのテイクアウトも頼んでいた。
「あいつらにも買っていかないとな」
そして私たちは寺に帰ることにした。
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