第20話 葵の気持ちの芽生え
まだ、中学二年生の夏休みのお盆の頃、紬とで海で遊ぶ約束をしていた。
「つむぎちゃん、迎えに来たよ~!」
「わかった、今い・・・ごめん・・母さんに見つかった・・・」
「あら、葵ちゃんごめんなさいね~この子ったら夏休みの宿題一切手を付けてなくって、全部真っ白なのしばらく、お部屋から出さない様にしているの、ごめんね~。また誘ってね」
「お母さん、もう泳げなくなるよ~」
「紬、・・・何か言った?」
「いえ、なにも・・・葵ちゃんごめんなさい。」
「うん、・・・頑張ってね。」
そんな訳で遊ぶ約束をしていた紬とは遊べなくなった。しかし海で遊びたい・・・
澪姉は今日大人達と一緒にお寺の掃除で夕方まで帰ってこないし、男子とは一緒にはさすがに恥ずかしい。
しかも、自分は泳げない、俗に言う(カナズチ)であるし、そんな中ふと浜辺を散策していると、男子達がよく使っているゴムボートがあった。
これなら泳げなくても問題ないし、いつも楽しそうに使っていたので気にはなっていた。
「少しならいいかな」
そんな好奇心からゴムボートを借り、漕ぎ出した。最初の頃は四苦八苦しながら少しずつコツをつかんでいった。そして夢中になっているうちに、波消しブロックの外側まで、出てしまった。
波消しブロックの外側は当然ながら、内側より波が多少高いせいかゴムボート初心者の葵が幾ら漕いでも、全く岸の方に帰らなくなっていた。
折しも風が、岸から沖の方へ吹いておりどんどんと沖へと流されていったしまった。
そして、手も痛くなってきてそのうち漕ぐことも出来なくなってしまった。
ここにきて葵はパニックになり
「どうしよ、どうしよ・・」半ば泣きそうなときに、いきなり聞きなれた声が聞こえた。
「この、バカ何してるんだ!!!」
と総一郎が泳いで駆けつけた。
男子は三人で畑の手伝いに駆り出されていたが、予定より早く終わったので海水浴をしようと海にやってたがいつもの所にゴムボートがなく、海を見渡すと、誰かが乗って沖合に言ってるのが分かり
よく見ると葵が乗っているのが分かった。
いち早く異変に気が付いた総一郎が海に飛び込み、司と陽斗が手分けして船の持っている大人を探しに行き、事情を説明し救助に向かってもらった。
船を出してもらい二人とゴムボートを回収し、無事に港に到着したが結構な大事になっており村中大騒ぎになっていた。
葵と総一朗 二人とも危ないことはしないよう、こっぴどく怒られたがこれも二人の身を案じての事だったんだろう。
お説教も終わり皆と別れての帰り掛けに葵は総一郎にお礼を言った。
「ありがとう。総ちゃん。あとごめんなさい。」
「気にするな、葵が無事ならそれでいい。何より無事でよかった。大切な人だからな。」
「え・・」
「ああごめん、母ちゃんに怒られに帰らないと、じゃバイバイ。」
「う・・ん バイ・・バイ。」
不安な時に駆け付けてくれて、一緒に怒られ、最後のセリフで、少女の心は、ほんの少し上の空になってしまった。




