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デスターン  作者: 春川立木
2/67

第1話  アズエリック・フォール

語彙力無いのはご容赦を

v(^^)

目を覚ますとそこは見慣れない家の中だった。

家というよりかは小屋に近い感じの木造建築。



俺の意識がなくなったあの後、何があったのだろうか。

他の奴らが救急車を呼んでくれたのだろうか。

でもここ病院ではないよな。

でも傷口はしっかりととまってるし、痛みも感じない。

むしろ清々しい程元気が有り余ってるぐらいだ。

見てみろよ、この手を小さくて小回りが効くだろ?

ほれほーれ、ん?……あれ物が掴めない。

俺こんなにも不器用だったっけか。

それとも後遺症か?


「…………」


ベッドのシーツをつかもうとした手を見て一つの疑問が生まれる。


あれ?

手がいつもより一回も二回も小さい?


そう、まるで赤ん坊の手のように…


「あう」


なんだ今のは俺の声か?

まるで赤ん坊の声…見たい…?


みたいではない。

よく見れば手だけじゃなく足も腕も何もかもが、いつもの大きさじゃなかった。

よく見れば今寝ているベッドだって赤ちゃん用だ。


これはもう後遺症というレベルではない。

そう、これはつまり生まれ変わったということだ。



『嘘だろーーー!!』



待てよ…。て言うことは…俺は、あの時撃たれて死んだってのか!?



「おぎゃああぁ!おぎゃああぁ!」

「あらあら、どうしたの?お腹すいたのかしら」


びっくりして声を上げていたら白髪の美少女が駆けつけて、俺を軽々と持ち上げる。


なんだなんだ、なんで急に俺を持ち上げたんだ?

この人が何言ってるのかわからねぇ。


「おむつか?」


今度は青髪の男。

年齢は20ちょっとだろうか、ローブを着ている男がひょっこりと顔を出した。

こっちも美青年だ。


「にしてもエルはかわいいなぁ。この子はきっとイケメンになるだろうな」

「えぇ、そうね。かの大英雄様みたいにかっこよくて優しい子に育ってほしいわね」


だから何言ってるのかわからないんだって、急に知らない言語で話されても頭、混乱しちまうよ。

俺は海外にでも転生しちまったのかよ。


二人は満面な笑みを浮かべてこちらを見ている。

なんか怖い。


にしてもどっちも整った顔をしてらっしゃることで。

この人たちは俺の両親なのだろうか。

なら俺もイケメソになっちゃってるってことですかい。

鏡はどこだ!どこにあるんだ!


当たりを見渡すが鏡のかの字も見当たらない。

なんなら家電も水道もない。

もしかしたら貧乏な家に生まれちゃったのかもしれない。


スマホ依存症で現代っ子の俺からしたら死に直結しちゃうレベルになっちゃうよこれは。





こっちに来てからひと月がたった。

特にすることがないし、動けもしないからずっと寝て起きてミルク飲んで寝る、そんな生活を続けていた。


食っちゃ寝のニートだって?

寝る子は育つって言うだろ

こちとら赤ん坊なんだよ。


1ヶ月たってわかったことがいくつかある。

どうやら俺の名はアズエリック・フォールと言うらしい。

周りからはエリックではなく「エル」って呼ばれている。

2人曰く昔の大英雄アズエルから取ったためエルとよんでるらしい。別に甘党とかではないし、探偵でもない。

意外にも言葉の理解が出来るのが早くて大体のことは分かるようになった。


そしてあの白髪の女性はミスカ・フォール、青髪の男性はゲール・フォールと言う名らしい。

やっぱり俺の両親だった。

そしてここはココ村とかいうどっかの国のど田舎らしい。

外を見ても畑が続いているだけで電線や車もない。


大体それぐらいのことしかわからなかった。

まあずっと寝てたからな。

だか、ひとつだけ疑問がある。

料理をするときに火をつける瞬間ゲールが手をかざしただけで着いたことだ。

まさかとは思うが気のせいだと思う。

だって今じゃあ火なんてなくても料理ができる時代だからな。

急に火がついたところでこの俺はビビらねぇぞ。




こっちにきて半年がたった。

だいぶ体が動けるようになった俺は、はいはいができるようになり、家の隅から隅を這い回っていた。

さらに言葉が話せるようになった。

毎晩大英雄アズエルとか言う英雄譚を読み聞かせて貰ったおかげで言葉は前よりも分かるようになったし、文字も簡単なところは読めるなあようになった。

話せると言ってもまだ途切れ途切れで滑舌もあまり良くないが。

「まんま」とか「ぱんぱ」ぐらいは言えるぞ。



うーん。

真っ青な空を見上げて

この6ヶ月間である説が浮上している。

もしかしたらここは異世界なのかもしれない。

根拠はある。前にゲールが火をつけたとき火起こしも火打ち石も何も使わず手をかざすだけで火が着いたことだ。

さらには家の書斎で見たあの魔導書だ。隣には魔術教本まであった。

まあ大体、体術の本の方が圧倒的に多かったけど。

それかただ単にそういう趣味があるだけなのかもしれないが。


「あからん」


ふと俺は両親を見る。

仲良く家事をしているいつもの光景だ。

そういえば両親はなんの仕事をしているんだろうか。

いつも家にいる気がするけど…はっ!

もしかして無職!?

なら俺はいつか売り飛ばされてしまうんだろうか

転生したら奴隷になった件的な感じになっちゃうんじゃ…

いやそれはないな。こんなにも愛情をもらってんだからな。

ただ単に育休取ってるだけだろうな。

しかし気になるな、生活費の出所が。




明くる日ある農家の一人が訪ねてきた。

どうやら最近雨が降らなくて土地が干ばつしているらしく畑やら田んぼやらの作物に影響が出てるらしい。

父さんに頼んだところでどうこうできる問題じゃないだろうに、この農家は何を言ってるんだろうとこの時は思っていた。


「それぐらいなら全然いいですよ」


父さんはそれだけ言うとローブのまま外へと出て行く。

俺は不思議に思い母さんの方を見る。


「いい機会ね。お父さんのすごいとこ見ましょうか」


そう一言言うと母さんは俺を抱いたまま父さんの後を追うように家から数分歩いたところにある畑へと向かう。


「ゲールさん頼みますよ。ド派手にやっちゃってください」


畑のど真ん中に立ち止まり父さんが両手を天へと掲げる。


「本当にド派手にやっちゃいますよ」

「はい、お願いします。本気でやっちゃって下さい」


最終警告する様に農家の人に確認する父さんは得意げにニヤリと笑いながら手のひらに何か力を溜める。


なになに!?

なにがはじまっちゃうの?

急に父親が自信満々に両手を広げちゃって、息子として恥ずかしい…


その瞬間、カラッカラだった空があっという間に真っ黒の雲に覆われる。

さらに父さんが手を振りかざすと、その雲は大量の水を吐き出した。

雨というより滝に近いその威力はものの数秒で田んぼを、畑を、川を、池を、雨水で溢れ返した。


「…………」


俺は目を見開いたまま空を仰いでいた。

声が全く出なかった。というより声を出す余裕がなかった。

とにかくすごい。それしか感想にでてこない。


「すごいでしょ、お父さん。こう見えて王国の宮廷魔術師なんだから」

「こう見えてってなんだよ」

「ちょっとちょっとこれはやりすぎですよっ!」

「サルノさんが本気でって言ったんじゃないですか」


慌てふためく農家に父さんが正論をぶつけると、農家は何も言い返せず「そうですけど」とため息を吐く。


「雨の中に魔力が入ってるから枯れはしないと思うので大丈夫ですよ」

「そうね、むしろ去年よりも立派な作物が育つわね」

「うーん…ほんとでしょうね?」

「「…………」」


さっきの雨といい、この人たちの発言といい、俺の勘は、俺の仮説は、間違ってなかったんだ。


ここは本当に異世界なんだ!

あの本は本物だったんだ!

もしかして俺もあんなカッコいいやつができたりするんだろうか。


「びしょびしょになっちまったな。帰って風呂に入るか」

「そうね。洗濯しないとだし」

「ちょっと待って下さいよ。ほんとに枯れないのでしょうね!」


農家が不安な顔をしながら質問してくるのを尻目に俺らはその場から逃げるように踵を返した。


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