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デスターン  作者: 春川立木
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1.5話 魔人王ギルデルト


「どこだ、ここは」


気がつくとそこは薄暗い石造りの建物の中だった。


「ついに完成した。魔人の力を超え、神の領域にさえ肩を並べることのできる魔人が、魔人王が!」


目の前には私を見下ろす黒髪赤眼の青年が不気味な笑みを浮かべている。

その背後には5人、膝をついて頭を下げている。


そうか。

私は死んだんだったな。

ならここは地獄か…。


撃ち抜いたこめかみを触る。


「……!?」


あるはずの穴がない。それどころか少し固い。

まるで鎧を触っているかのような感覚。

不思議に思い両手を見る。


「私の手、だよな…」


そこにはあるはずの自分の手ではなくまるで小手のように硬く真っ黒、それでいて鋭い両手だった。


「どうした魔人王よ。自分の姿が気になるのか?」


体中を隈なく見ていると黒髪の青年が私に語りかけてくる。

黒髪と言うよりかはどちらかと言うと紫に近い色をしている。

後ろの奴らもよく見れば人と言うにはあまりにもおかしい体つきをしていた。

こいつらは一体誰なんだ?

そう思った私は質問をしてみる。


「誰だお前」

「「!!」」


別に喧嘩を売りたいと思って言った訳ではない。

ただ単に青年が、後ろの奴らが、誰なのかを知りたかったために言った一言。

それなのに後ろの5人は、一斉に立ち上がり私を襲い飛び掛かかる。


「やめろ!」


拳が当たる寸前のところで青年が5人の手綱を締めるように一言言い放つ。

すると野蛮な5人はぴたりと止まり、元の配置へと戻っていく。

しかし、一人は気に食わなかったのか、まだ私の正面に立ち、拳を振り上げている。


「ですが、ガットレイ様。こいつはガットレイ様を侮辱する言い方をしました。始末しなくては俺の腹が煮えたぎって、仕方ありません」


振り上げた拳は怒りでプルプルと震えている。


「シルバリ!!やめろと言っているんだ」


青年の怒号が飛ぶと、ビクッと体を動かし恐る恐る元の位置に戻っていく。


「お前たちは魔人王を作る途中に出来た副産物に過ぎん。たかが早く生まれたからと言って威張るのではない」


ゴホンと咳き払いをし、私の方につま先を向ける。


「失礼したな。我は魔界の神、ここ魔界を作り出した魔神のガットレイだ。後ろの奴らは先程言った通りお前を作り出す過程でできた魔人どもだ」


………。


魔界の神? 

ここは地獄ではないのか?

しかも私を魔人王とか言っていたな、頭がおかしい奴らなのか?


「ほう。この我に頭がおかしいと言うなんて、根性が座りきってるな。まあ異世界から連れてこられて混乱してるだろうから、理解できないのも仕方がない」


ガットレイは不敵な顔のまま鼻で笑う。


「やっぱりこいつは殺しましょう」

「シルバリ。お前じゃ絶対に殺せないぞ」


シルバリと呼ばれる者は私のことを気に食わないのか、時々舌打ちをしながら俺を睨んでくる。

怖い怖い。

そう思っていたらガットレイがシルバリの頭をペチンと叩いた。


「ところでナットレイくん。魔界とはなんなんだね」

「ガットレイだ」

「ガットレイ様やっぱり…」


今度は鳩尾に肘打ち。

苦しそうに悶えるシルバリを尻目にガットレイは話を進める。


「愚問だな。簡単な話、魔界は人間どもに迫害された魔族どもの衣食住を安定させるため、世界樹の根元に作った物だ」


全くわからん。

簡単な話なのかこれは。

……まさか!新手の詐欺かなんかなのか!?

オレオレ詐欺みたいなマジンマジン詐欺的な


「詐欺とは失礼だな。この世界を間近で見れば納得するはずだ」


あれ……?今私、口に出しちゃった?

いや、出してないよな。

ならなんで……!まさか…


「……?もしかして私の思考読んでます?」


もしやと思い私は口に手を当て恐る恐る聞く。


「うむ。はっきり聞こえるぞ。我は人の考えていること、過去全てがわかるのだ」


思ってることが全部筒抜けってことなの?

なにそれ恥ずかしいじゃない。


「そう恥ずかしがるな、むしろ誇るべきことだぞ。その欲望的な性格に」

「欲望的?」

「好きな女のために周りをも巻き込み、さらには自分自身すらも投げ出す。よほどのことじゃないとそんなことはしないのだ」


なんかちょっと照れるな。

黒歴史を漁られているみたいだ。


「その独占欲、さらには強い自信、それがあったからこそお前を死ぬ前にこちらに呼んだのだ」


そうだ。

会いに行かなくては、約束したんだ

あの世であみちゃんに会おうって、誓ったんだ。


私は座っていた椅子から立ち上がり部屋から出ようとするとガットレイが呼び止める。


「まあ待て、まずはお前に名前を与えなくてはな」

「え?本庄ですけど」

「いや前の名前ではなくこの世界での名だ」


この世界での名前って……

なんか勝手に話が進んでいってるよな。

これガチの詐欺なんじゃないのか?


「そうだな…何にしようか…」


こいつ…。

思考を読めるくせに無視しやがった…。


ガットレイは私のことなど眼中にないか考え込む。


数秒ほど沈黙が続くと閃いたかのようにポンと手を叩いて指を立てる。


「そうだ。ギルデルトにしよう。なんかかっこいいし」


「おい。勝手に話を進めるなよ。しかもなんだよ理由がかっこいいからとか、中学生かよ」

「ついてこい。ギルデルトよ」


また無視か、

泣くぞ私。


肩を落としながらも言われるがまま、私はガットレイの後に続いた。





額縁に飾られたでかい絵やわけわからん形をした土偶が飾られている廊下を進んでいく。


魔界とは言っていたが、今歩いているところは豪邸の廊下っぽいよな。

私が目を覚ましたところも王座みたいなところだったし。

しっかし趣味悪い物ばかりだな。


「この絵は上位者100年戦争の絵だ。で、そっちの土偶は魔人1号君だ」


少しだけ嫌悪感を抱きつつ引き気味で見ているとガットレイが自信あり気に口を開く。


忘れてたこいつ思考が読めるんだった。


「魔人1号君?」

「ああ、初めて魔人を作る時に参考までにと模型を作ったのだ。よくできてるだろう」


いや、幼児でももうちょいマシなのできるだろ。

もはや地面に叩き落とした粘土だよこれ。


「着いたぞ」


廊下を抜けバルコニーのような場所に出る。


「すご……」


目に映ったのは紫色に染まった小さな街。

小さい分、家と家がくっついており、まるで迷路のようになっている。


「ここが魔界だ。住んでいる奴らはみんな魔族だ」

「ほんとだ!よく見ればツノが生えてる奴がいる!あっちには、手足がいっぱいある奴もいる!」

「周りを見てみろ。紫色の石と世界樹の根っこでで埋め尽くされているだろう」


ガットレイは街ではなく街の角を指差した。


ガットレイの言う通り街の周りは紫に発光する石によって楕円形に囲われており所々にでかい根っこが張り巡らされている


こんなものを見せられたら納得するしかなくなる。

ここが異世界だということを、認めるしかなくなってしまう。


「さっき言った通りここは世界樹の根元。地下空間に私が1000年、いやそれよりもずっと前に作った世界だ」


なるほど地下だから薄暗かったんだな。

しかしなんで紫色に発光してるんだ?


「紫色になってるのは魔力の色だ。我の髪も紫がかってるだろう。魔力の影響が強くなると紫色になるんだ」

「へぇー。でも暗すぎないか?もう少し明かりがあった方がいいと思うが」

「魔人王を作る前はもっと明るかったけどな」


なにそれ私が光を濁しているってこと?

私は被害者ですよ。何にもしてないです。


「違うぞ、悪いのは失敗した我の方だ。魔力の計算を間違えたのだ」

「失敗?さっきお前は成功したとかなんとか言ってたよな」


ガットレイは真っ直ぐ魔界の街を見ながらため息をつく。


「あぁ成功したさ。最強の魔人王を作り出すのには…」


じゃあいいじゃん。

なにが問題なんだよ。


「いや、世界樹の魔力を使い果たしてしまったのだ」


ガットレイは指を真上にある世界樹に向け、私を見る。


「元は少しだけ魔力を借りようとしたのだ。だが

、いざ使ってみると思った10倍も使ってしまったのだ」

「それのなにが失敗なんだ?」

「この魔界は持って20年なのだ」


持って20年?

その口振りからすると20年後には魔界が滅びるってゆうことか?


「察しがいいな。流石は魔人王だ」

「それほどでも」

「そもそもの話、魔界は世界樹の魔力を媒体にしていたんだ。その魔力がなくなって仕舞えばこの世界も滅びる」


じゃあどうするんだ?

20年のタイムリミットまでダラダラ過ごして死ぬしかないのか?


「方法ならある。この真上にある地上を征服するのだ」


ほう。

世界征服というやつか。


「そうだ。だからお前を呼んだのだ」


なにそれ、かっこいいな。

私が救世主になるってことか。


「いや、違う人を殺す兵器になるのだ」

「なるほどな。私が救世主ではなく、兵器になり領土を増やすって寸法か」


でも私にできるのかそんなことが……

私は別になんの力もないけどな。


「大丈夫だ。お前の力なら腕の一振りで何千人と殺せるだろう」


何千人!?

私にそんな力があるのか……。

末恐ろしいな。


「この世の全ての人間を殺して我は世界一の神となりあの世にいる忌々しき男にギャフンと言わせてやるんだ」

「待てよ、私は全ての人は殺さない」


そう言った途端ガットレイの眉間に皺がよる。


「どういうことだ?お前はただ我の命令を聞けば良いのだ」

「だってお前言ったじゃん、思った10倍魔力使ったって。なら私のあみも呼んだんじゃないのか?」

「…!!」


ガットレイの瞳孔がカッと開く。


「まさか…!」


今度は肩を震わせて不気味にケタケタと笑い出す。


「そうか、そうだよな、それなら合致がいく。我の長年の実験は間違ってなかったのか!」


バッと、マントを勢いよく靡かせ両手を開き天を仰ぐ。


「ああ、そうさ。我は魔神のガットレイ!失敗などしないのだ!」


おいおい、急にどうしたんだよ。

怖いぞ。

とりあえず落ち着けよマットプレイくん。


「ガットレイだ」

「大丈夫か?」


興奮気味のガットレイに、心配をするが、手のひらを見せ大丈夫だと深呼吸をする。


「確信した、今まで誰も成し遂げれなかった、複数召喚魔術を完成させた。これで我は世界のてっぺんをとれる!1000年前の屈辱も晴らせる!」


なんか一人で盛り上がってるところ悪いんですけど、わたしのあみはどこにいるのでしょうか?


「おい!お前ら!よく聞け」


ガットレイは待機させていた魔人たちを勢いよく指差し叫ぶ。


「こいつの言う、あみという人をここへ連れて来い!きっと地上のどこかで生まれているはずだ!」

「「はっ!!」」


魔人たちは返事をすると、早々に何処かへと行ってしまう。


「私のあみになにするつもりだ!」


もし、こいつがあみを使って人体実験でもしてみろ、私はこいつを殺す。

死の直前まで激痛を与えて殺してやる。


「落ち着け、ギルデルトよ。別に我にそんな趣味はない」

「じゃあ、なんであみちゃんを探すんだ」

「お前への褒美だ。我は失敗したと思い込んでいたからな。気づかせてくれた礼だ」


なんだ。安心した。

人体実験はしないのか。


「お前の大事な人なのだろう?必ず見つけ出すからな、楽しみに待っていろよ」


なにこの人、カッコいい。

待ってます!ずっと待ってます!


「そうだ。ギルデルト、この世界について何もわからないのだったな。このクソみたいな本を読むといい」


そう言ってガットレイは一冊の本を取り出し私に渡す。


「文字読めないぞ私。なんて書いてあるんだ?」


本の表紙には掠れた字で何か文字のようなものが書いてあるが、見たこともない言語で書いてあるため全く読めやしない。


それにしても意外と分厚いなこの本。

何ページまであるんだ?


ペラペラとページをめくっているとガットレイが口を開く。


「その本はクソ男アズエルの話だ。子供はみんなこれを読んで言葉を覚える。お前の頭脳なら半日でマスターできるはずだ」


アズエル……

ああ、英雄譚的なやつか、

なんか異世界っぽいな、面白そうだ。


「わかった。出来るだけ早く言語をマスターしておく」


パタンと本を閉じガットレイを見る。


「言語さえわかれば魔界城の書庫にあるものはほぼ読めるようになるはずだ」


好都合に私は愛読者だからな、本を読むことは大好きだ。

家に何万冊と言うほどの本があるぐらいにはね。


「我はこれから戦力の準備をしてくる。準備ができ次第我らは真上にある北央大陸を制圧する」

「どのくらいかかるんだ?」


「うーん」と顎に手を当ててしばらくの間考え込む。


「ざっと6年ぐらいか?もしかしたら7年かかるかもな」


ながっ、

準備期間長すぎだろ。


「仕方ない。それほど慎重にしないと失敗するからな」


そう言うとガットレイはテラスの柵の上に立ちフードを被る。


「困ったことがあったら城の中にいる魔族に頼れ」

「ああ、わかった」


ガットレイは頷くと軽く飛び真下に落ちていく。

あれ?ここって何階だったっけ、


1.5話とは書いてますが、1話とほぼ同時進行してます。

ギルデルト同じ誕生日だねアズエリックくん。やったね。

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