11話 絶えぬ炎
ポ○モンまじおもろすぎる。
寝不足になっちゃうよ。
「間に合ったーー!!」
銀色に光る白髪をたなびかせ、僕たちが苦戦していた龍魔獣朧の魔力波を蹴り一つで完封する。
「うひょーー、これがドラゴン! でも、ちょっと想像と違うな……」
同じく白髪の子供が凍った地面に激突した龍をベタベタと触りながら、目を輝かせていた。
「何がおこった……」
僕やブリタリア兵は皆揃って口を開け愕然としている中、龍に蹴りを入れた女性がこちらに振りかえる。
「この食糧、横取りしてもよき?」
「…………は?」
理解が追いつかない。
先程まで死の直前だったのが、急に現れた白髪が人間技では無い蹴りを放ち、こうも簡単に龍魔獣朧を地に伏して、さらにはその龍魔獣朧を食糧と呼ぶ、狂ってんじゃないのかこの女。
「どーせ、こいつの討伐に苦戦してたんでしょ。こっからは私たちが、やるからどっかで休んでて」
後ろに倒れている龍を指差してニコリと笑う。
「……助け立ち感謝します。ですがこの龍魔獣朧はこちらで対処を───」
「誰よこのハゲは」
ガンゾウが光るスキンヘッドを下げ、謝意を表すと、その言葉を遮り白髪の女が言い放つ。
「ハゲではない! これはおしゃれだ!! スキンヘッドだ!!」
頭頂部を見せ弁明をするガンゾウ。
すると龍魔獣朧に見惚れていた子供が、ガンゾウの方へと近づいていき太ももに手を置くと、暖かい眼差しでフッと笑う。
「慰めんなよ! 別にハゲ隠しでもねーよ!」
「すみません。お二方、この件は我々ブリタリアの管轄で起こったことですので我々でやるしかないのです」
僕は痛む足を、歯を食い縛ることで我慢しながら立ち上がる。
「あんたらほんとにブリタリア兵? いつの間にブリタリアは平和ボケしたのかしら」
「は?」
その言葉に少し苛立ちを覚え返事を返す。
「こんなにもボロボロになって、立つのもやっと。そんな奴らに何ができるのよ」
返す言葉が無くなる。
万全の状態から始まって、今に至る僕らはすでに体の限界がきている。
次魔力波がきたらきっと僕は死ぬだろう。
いや、魔力波じゃなくとも奴の尻尾で叩かれただけで致命傷になる。
「…………」
「だから、さっさとここから離れてなさい」
「……なら、せめてまだ動ける魔術師のノストだけでも──」
「──はぁー」
白髪の女がため息をこぼす。
「何度言えば分かるの? そんなんだからブリタリアも衰えたんじゃない?」
呆れた声で女が続ける。
「同じパーティの魔力管理をチーム内でやることも怠って、自分は役に立たないから他のやつに任せようとする。向いてないわよ指揮官に」
そう言われて我に帰り、ノストのいる方に目をやる。
そこには魔力切れで倒れ込み、真っ青な顔をしたノストがガタガタと震えていた。
「母さん! この龍再生してる! すげぇ」
「なんだって!? 再生持ちなの!? この食糧!?」
子供の声を聞くと、勢いよく振り返り、龍魔獣朧を観察する。
先程蹴り潰した額と、自らの魔力波で爆散した下顎から、蒸気の煙を上げながら元の姿へと戻っていく。
「こりゃやばいわね、エル」
「ガチやばい」
流石にこの人もこの龍の危険さに気付いたのか冷や汗を拭き取る。
「ジュルッ、食べ放題じゃない!」
「カッコ良すぎる!」
汗を拭き取っているのかと思ったら、溢れ出るよだれを拭き取っていた。
「さぁ、半年の修行の成果をここで見せるのよ! エル!!」
「おう!!」
「とりあえず、ここ半年でどこまで成長したのか、どこまでお母さんについて来れるのか試させて」
ミスカが右足を後ろに回し体重を前に落とした。
「テストってこと?」
俺はその場でトントンとジャンプをし、体を慣らす。
「そゆことっ!!」
ミスカはそう言うと光の如く龍魔獣朧の右側へと回り込む。
「げっ! 合図なし!?」
遅れをとるわけにはいけないので、俺も右足に力を入れ龍魔獣朧の左側へぶっ飛んで回り込む。
ミスカは龍の側面に近づくやいなや首元へ飛び上がる。
俺もそれに習い反対側で飛び上がる。
くっ、母さんの方ジャンプ力高ぇ。
「──ふんっ!」
間髪を入れずミスカの足蹴りが龍の首根っこを折り曲げる。
「俺もっ!」
負けずと龍の横腹に全力の蹴りを一つ見舞わせる。
「うぐっ!」
ミスカの蹴りの方が数段重く、龍を伝って足首に圧が加わり、負担がかかる。
くそっ! このままじゃぁ、俺がミスカに押し負ける!
「毎日走り込んでんだ! こっちはぁ!!」
纏魔の魔力量を増やし筋肉の内側を補わせ、無理やり筋力を数倍上げる。
「くだばれぇーー!!」
ミスカと俺の蹴りのパワーが互角に龍魔獣朧の体に加わる。
その瞬間、龍魔獣朧に与える荷重のちょうど中心の軸に回転の力が生じ、氷に刺さった下部は引き抜かれ、横向きに回転する。
それは強風を起こし、砂埃が舞う。
「エルっ、ちょっと肩借りる!」
上から降ってきたミスカが俺の両肩に足を置き、さらに高く飛び上がる。
「えっ! ちょっ……」
俺はミスカの踏み台となり、その反動で龍を引き抜いた時に出来た凍った湖の大穴に落とされる。
「ぶはっ! 冷た!!」
上空では回転している龍魔獣朧より高く飛び上がったミスカがニヤリと笑う。
「さぁ、いくわよ巨大魚!」
上空のはるか先、太陽の逆光に照らされたミスカが右足の踵を高速回転する龍魔獣朧の中腹部にぶつける。
「堕ちろ! 『落華星石』!!」
Vの字で折れ曲がった龍が凍った地面へ落ちてゆく。
「へ? 俺の方に落ちてきてない?」
分厚い氷によじ登りながら俺は真上を見上げていた。
ミスカが真下へ龍魔獣朧をたたき落とすってことは、真下に落っこちた俺の方へ落とすってことだもんな。
そりゃ当たり前だな。
何疑問に思ってんだよ俺、全く馬鹿だな。
……ん?
落下地点が、俺……?
ってことは下敷きになっちゃうってコト?
「じゃあ、やべーじゃん!!」
「おいっ! 小僧、手ェ掴め!」
俺の危機に颯爽として現れた丸い玉……ゲフン、ガンゾウが手を差し伸べる。
「しっかり握っとけよ! オラぁ!!」
ガンゾウは一本背負で掴んだ俺を草木の生い茂った方へ投げつける。
「おいっ、おまっ──べブッ!」
投げつけられた俺はそのまま中木に頭から突っ込む。
それと同時に空から龍魔獣朧がものすごい速さで降り込み、凍った地面を割る。
「さぁ、これでも再生できるもんなら、やってみなさい!」
レストはいかに己が無謀な事をやっていたのか今、理解した。
自分らが知っている戦いではないものを見せられ、その張本人はヘラヘラとしている。
それだけじゃない、その技を喰らってもなお再生を続けている龍魔獣朧。
勝てるはずがない。
こんな怪物は何をしようと無駄に終わる。
「しつこいわね、この魚」
「母さん、俺ごと潰そうとしたでしょ」
体についた木々を払いながらアズエリックがミスカの隣に立つ。
「でも、避けてるじゃない。結果オーライよ」
地面に突っ伏し再生を続ける龍を見ながら親子が話す。
「でも、お陰でわかったわ。この魚の再生が」
「何が?」
「こいつ、無意識で再生してるってこと」
「いや、分からん」
ミスカはため息をこぼし頭を抱える。
「エルは反射って分かる?」
「ん? 跳ね返るやつ?」
「違う、熱いものを触った時のあれ」
手をついてアズエリックが納得する。
「そっちか、それがどうしたの?」
「反射的に手を離すじゃない、火傷しないように」
アズエリックはうんと頷いた。
「あいつは条件反射で再生をしてるの、ガードするよりも先にね」
アズエリックは顎に手をやり、頭をひねるとミスカは腕を組んで答える。
「普通は攻撃したら条件反射で避けるか、防御するなのにこいつは何もせず喰らってる。おかしいと思ったのよ」
「そゆことか。でも、どうやって倒すん? 条件反射で再生するならもう詰みじゃん」
「そうでもないよ。人間置き換えてみて」
ミスカは腕を組んだまま指を立て続ける。
「熱湯に触れた時ヒトは思考せず咄嗟に手を遠ざける」
「うん」
「もしも、その遠ざけた先に同じく熱湯があったとしたら?」
「また手を遠ざけるでしょ」
アズエリックは率直に答えると何かに気がついたのか、ハッと顔を上げた。
「そう。じゃあ、また同じことが無限に起こったとしたら?」
「火傷する」
「大正解。つまりはそう言うことよ」
組んでいた腕を解き腰に手をやる。
「ってことは、再生してる最中も攻撃をし続ければ勝機がある」
拳を握りしめたアズエリックは、背中の奥から湧き上がる熱に気がつくと、ぽつりと言葉を溢した。
それを聞いていたレストは、心の奥底で不可能と決めつけると、死を受け入れる覚悟を始めた。
「と言うことで、エル。あいつも復活したことだし、そろそろ魔光弾がやってくる。一人で阻止できそう?」
目線をアズエリックから龍魔獣朧に向けると、指を指して軽々しく言う。
「まかせろ、こんなもん昼飯前だ」
右手の拳を左手のひらで受け止めるとニヤリと笑い、龍魔獣朧へ駆け抜ける。
「威勢がいいね。今日のお昼は魚の丸焼きよ」
ミスカがアズエリックに聞こえるよう大声で叫ぶとレストの方へつま先を向ける。
「さて、あんたずっと私たちが負けるかもって思ってるでしょ」
「え……」
図星を突かれたレストは頬を掻きながら目を逸らす。
「私はソロ冒険者と主婦の肩書きしか持ってないからあんまし分かんないけど、あんた指揮官に向いてないわよ」
ミスカの呆れた声がレストの鼓膜を震えさせる。
「僕は指揮官じゃない。ただのブリタリアの第一王子だ」
「そう。だったら尚更王族やめろ。こちとら必死にお前ら守って、戦ってんだ。少しは私らを信じなさい」
ミスカの怒号がレストの肌をくすぐる。
「周りの兵たちはとっくに私たちに賭けてんだ。つまんない事考えるな」
睨みつけるようにレストの顔を見下げ、踵を返す。
「母さん! 魔光弾塞いだ! ついでに気絶中!!」
空高くから着地したアズエリックが、割れた氷の上にぷかぷかと浮く龍魔獣朧を指さす。
「さすがうちの子! どっかの誰かとは全く違うわね」
レストの眉がピクリと動く。
「さぁ、蹴り付けるわよ!」
駆け抜けるミスカは地面に放置したままのブリタリア騎士団所有の剣を立ち止まる事なく足で蹴り上げ、右手でキャッチする。
掴んだ剣を槍投げフォームに切り替え、力一杯龍魔獣朧に投げつけた。
投げた剣先は龍の目へ直撃し、貫通。
いつのまにかその向かい側へ走っていたアズエリックの方へ剣が飛び、タイミングよく柄を掴むと上になげる。
「ナイス! 最高の位置ね」
投げた剣はすでに空中に飛んでいるミスカの手に渡る。
「そろそろ死になさい! 不死魚!」
落下の威力と纏魔で固めたその剣はまるで彗星の如く青く光り、龍の首を切断する。
「「うおーーーーー!!!」」
それを見ていた兵士共は大きな歓声を上げ、抱き合う。中には涙を流すものもいた。
「なによ。意外と簡単に切れるじゃない。テキトーなこと抜かしやがって」
剣を放り投げると地面に倒れた生首を足で動かし、龍魔獣朧の顔を見る。
「嘘……。本当に倒したのか……」
「レスト王子! やってくれましたよ! あの女性!」
ガンゾウが泣きながらレストに抱きつく。
「やめろ、暑苦しい」
そうレストがぼやいた時、死んだはずの龍魔獣朧が辺りを淡い光に包む。
「───!」
その次の瞬間、ミスカを見つめていたいや、睨んでいた龍の口から魔光弾が放たれた。
「母さん!!」
魔光弾の衝撃にミスカは耐えられず空を高く舞い、放物線を描きながら森の中に落ちてゆく。
笑い合っていた兵士たちも、涙を流したガンゾウも、安堵していたアズエリックも、皆絶望の波に押し流される。
「嘘……。母さんが首を切り落としたんだぞ……」
龍の生首から無数の肉の糸が、胴体の断面にウヨウヨと向かいくっつき始める。
「ダメだろ、お前は今ので死んだんだ。なんで、なんで、なんで未だなお再生するんだ……」
完全に再生しきったその龍は怯えるアズエリックを見下ろし蔑む。
「あ……ぁ、また死ぬのか俺」
光を放ち、アズエリックをここで仕留めるため、最大の威力を溜め、腰が抜けたガキを睨み続ける。
「ハハ、動けねーや怖すぎて」
アズエリックは乾いた声で笑う。
周りの兵士たちも、一瞬の喜劇が悲劇に壊された苦しみから言葉も、やる気も無くしてしまう。
ただ一人、折れた足を庇うことなく全力で子供の方へ駆け抜けて行く一人の青年を除いて……。
溜め終えたその魔光弾はアズエリック顔面目掛けて放たれる。
その寸時、青年がアズエリックを抱え、龍魔獣朧の真後ろへ回り込む。
「あんなこと言われて、やる気にならねぇー奴はいないよね、エルくん!」
レスト王子がニカっと笑い、アズエリックを下ろすと、肩に手を置いた。
「さぁ、エルくん。こいつどうやって倒そうか」
「首を切断しても再生をするって、結構やばいね」
第一王子はそう吐き捨てるとミスカが捨てた剣を拾い、地面に突き刺す。
「もしかして、本体は頭かな?」
一方的に喋り続ける王子はさっきまでとは違い、無邪気な子供のように楽しそうな顔を浮かべている。
「大丈夫だよ、お母さんはまだ諦めてない。すぐ駆けつけてくるよ」
俺の不安な顔を見て安心させてくれているのか、王子は頭を撫でてくる。
わかっている、わかってるんだ。
ミスカはこんなもんじゃ死にやしない。
それよりか、さらに熱を上げてやる気を出す人だ。
でも、俺はそんなことできない。
さっきまではミスカが居たから考えずにやつを殴れた。
ミスしてもミスカがカバーしてくれるからだ。
だか、今はここにミスカは居ない。
一ミリのミスが死に繋がる。
力の入らない右手を前に出し、見つめる。
それに、手が震えてるんだ。
恐怖で頭がいっぱいになり、絶望で鼓動が早くなってるんだ。
この王子がどれだけ俺を励まそうが俺は何にもできやしない────
『パン!!』
震える右手を挟むように王子が両手で叩く。
「え……」
「その歳で怖がらない人はいないよ。いや、幾つになっても恐怖ってのは付き纏うものなんだ。それが普通、当たり前」
挟んだ右手を握り締め、暑苦しく俺に言葉をぶつける。
「でも、でもね、エルくんはそんな当たり前なことを平気で乗り越えて来たんだよ。現に僕ができないあの魔力波……魔光弾だっけ、あれを一人で防げたんだ。気絶までさせたんだ」
レスト王子がアズエリックの絶望と言う大きな壁をぶつけた言葉でぶち壊す。
「倒そう! お母さんが居なくてもやれるってことをここで見せつけよう!」
頭の中にあった恐怖というストッパーが勇気に化ける。
レスト王子は刺した剣を引き抜くと、龍魔獣朧に笑って剣先を向け、エルの背中を力強く叩く。
「さぁ、やってやろう。最終ラウンドだ!」
それが最後の一押しに繋がり消えかけていた火が再び赤々と熱を放つ。
「おう!!」
「いてて、どこまで吹っ飛ばされたんだか」
地面に衝突したミスカが肩を叩きながら起き上がり、辺りを見回す。
「首切っても再生するとかキモ過ぎじゃない? あそこまで行くと食欲なくなってきたわ」
それにしても、大丈夫かしら。
向こうはエル一人だし、他の奴らは当てにならないし、早く戻らないとやばいかもね。
ジャンプして体を慣らすと、足を踏み込み鉄砲のように飛び出した。
「王子さん!」
「レストでいいよ」
「レスト王子、さっき頭が本体かもっていいましたよね」
「多分だけどね」
いや、多分じゃない。
十中八九本体だ。
さっき首を切り落とした時、体はピクリともしなかったが、頭はその後も動いていた。
だからミスカに魔光弾が撃てたんだ。
「もしも、頭を潰せば再生しなくなるとしたら?」
「できるの?」
「……いや、力だけじゃ無理がある」
現にミスカの蹴りを受けて潰れることはなかった。
きっと、物理だとほぼほぼ潰れたり、ちぎれたりはしない
「じゃあ、どうする?」
レストが俺の顔を見る。
「その剣で頭から胴体まで真っ二つにするしかない」
「真っ二つって、ただの鋼でできた剣だと刃が立たないのは検証済みだよ」
龍魔獣朧が振り向き様に頭で攻撃を仕掛けるのを蹴りで跳ね返す。
「いや、それは大丈夫。母さんが切ってたし」
母さんは教えてくれなかったけど、おおかた剣も魔力を纏えるんだろな。
纏魔ならミスカよりかは俺のが上だ。
俺でも出来るだろ
「貸してみて」
俺はレストから剣を拝借すると纏魔の要領で剣に魔力を伝わせた。
「うん、やっぱりできた」
「すごっ! それってどうやるの?」
鮮やかな青色に輝く剣を見てレストは言葉をこぼした。
「ん? 魔力を剣の周りに纏わせるだけだけど」
「魔力を纏わせる? 聞いたことないな」
頭を捻り、光る剣を見つめる。
「これならあいつをぶった斬れる。それに龍も俺らのイレギュラーに混乱してるはず。さっきから動きが単調になってきてる」
「うん。まあ、その案でやってみようか。僕はあいつを切れないから、攻撃を防ぐことだけ考える」
落ちた盾とその横にある剣を拾い上げ、装備する。
「龍の攻撃を俺が弾いてカウンターします。そっからは援護お願いします」
「うん」
剣を構えて龍を睨む。
左足を踏み込みスタートダッシュの準備をする。
心を落ち着かせ、纏魔を発動。
キタ!
龍が大きな口を開け、俺を噛み砕こうとする。
俺は瞬時にしゃがみ込み龍の顔面を蹴り上げ懐に入り込む。
「まずは右腕ぇ!!」
青色に剣身が綺麗な弧を描き、龍の腕を切り落とす。
「次は左ぃ!」
足の向きを変え、素早くステップを踏む。
「ぎぁぉぉぉ!!」
龍のしっぽが俺の背中に回り込む。
「させないよ!」
うまいタイミングでレストがパリィを入れてくれる。
お陰で楽に左腕を切断できる。
「よしっ、次!」
龍を真っ二つにするため高く飛び上がり、眉間を狙おうとした時俺は何かに顎を殴られる。
「──がっ?!」
その正体は再生する部分を一箇所に絞ることにより生まれる肉の塊だ。
「こいつ! 再生を違う使い方してきやがった。」
無数に飛び交うその肉塊は腕に、肩に、鳩尾に、足首にぶつかり狙いをずらしてくる。
「そんなもんじゃ怯みやしねぇーよ、死に損ない!! 薪割りで鍛えた俺の一刀両断食いやがれ!」
「行けぇ!! エルくん!」
龍魔獣朧は竹割りのように真っ二つに裂け、両サイドに倒れる。
「今度こそやったか……」
「再生できるもんならやってみろや!」
「…………………………」
分かれた龍はどちらともピクリとも動かず帰ってくるのは静寂のみ。
「本当に死んだのか?」
剣先でツンツンと俺は龍を突く。
全く動かない。
倒せたのか、俺の力で……。
ミスカが居ない中で、倒したのか俺が。いや、俺とレストで。
「やっ………………たぁーーーー!!!」
「「おぉーーーーーー!!!!」」
俺の叫びに共鳴して黙ってみていた兵士どもが雄叫びをあげる。
「おまたせ! お母さんが助け……に……あれ、何これ?」
走って戻ってきたらミスカは叫ぶ俺と兵士たちをみて困惑した顔を見せる。
「あっ、母さん!」
「えっ、お魚さんは?」
キョロキョロと龍を探すミスカをみて少し面白くなり、俺はケタケタと笑った。
「もう倒したよ。 俺とレスト王子で」
「は?! どゆこと?」
戸惑うミスカにレストが近づき、頭を下げる。
「僕の導火線に火をつけてくれてありがとう」
「?」
感謝される記憶がないミスカは腕を組んで首を曲げる。
「龍魔獣朧の討伐報酬なのですが、一度ブリタリア城に来ていただけませんか?」
「いやだ」
腕を組んで首を曲げたままきっぱりと言う。
「その代わり、この魚ちょうだい」
「いや、魚は差し上げます。それにプラスして報酬を──」
「いらん」
レストが目をぱちぱちさせて俺を見る。
すみませんね、こんな親で。
息子として恥ずかしいよ。
「あ、なら報酬一個いい?」
「なんなりと」
「今から大量の薪持ってきて」
「他には?」
ミスカは目線を上に向け、考える。
「んー、なら酒とかある?」
「ビワ村になら沢山あると思います」
「じゃあ、決定ね。ビワ村の人たちも集めてこの巨大魚を振る舞おう」
「え……僕らも食べるんですか?」
「当たり前じゃない。たらふく食わせてあげるわ」
レスト王子はひきつった顔をして苦笑いを浮かべた。




