10話 危機ニ髪
キャンプやってみたいです。
でも寒いからやりたく無いです。
王都ブリタリア
「ブリタリア王! 伝令です!!」
「なんだ? 騒がしい」
書斎にて、書類の束を整理していたブリタリア王の元へ、ブリタリア兵が一人慌てた様子でやってきた。
「東のブリタリ湖にて龍魔獣朧が出現いたしました!」
「なに!?」
ブリタリア王は手を止めて頭を抱える。
「チッ、バカ息子を対処したばかりなのに、次は魔獣朧。しかも龍魔獣朧が……」
「ただいま、ブリタリア湖周辺の住民は避難し、衛兵が戦闘中です! しかし、それも時間の問題かと……」
「わかった。すぐにこちらの兵も出撃させろ」
「はっ!」
伝令を伝えにきた兵は王に頭を下げると、速やかに書斎から出て行こうと振り返る──
「父さん。僕たちが行こうか?」
踵を返すとそこには半年前にエスタ領へ出向いていた、第一王子のレストが腰に刺している剣の柄に左肘を置いてドア枠に寄りかかり、その後ろに大きめの杖を両手で持った第二王子のノストが、心ここに在らずのように窓の外を見ている。
「帰ってたか……」
「レスト王子に……ノスト王子……」
兵士は口をぱくぱく動かし、尻餅をつく。
「領都一の剣士の僕と、領都ニ……いや、もう領都一の魔術師ノストなら、なんとかなるでしょ」
ニヤリと白い歯を見せ、レスト王子は王の元へ歩いていく。
「あ、あぁ、そうだな。なら、すぐに準備をし、出撃せよ。今からだったら1日で着くだろう」
「父さん。外見てよ」
王は言われたまま窓から外の景色を見る。
「!!」
そこには城の正門で整列しているほぼ全ての兵士達が全ての準備を終わらせ待機していた。
「騎士団に、魔導団、それに王子直属の近衛兵まで……」
いつのまにか、腰を抜かしてた兵士も窓の外を見ている。
「準備はとっくに終わってるよ。すぐに出発できるから半日もかからない。後は父さんの命令だけだよ」
王はフッと笑いながら王子たちを見る。
「このアーノルド・ブリダリアが命ずる! 出撃せよ!!」
「はっ! 行って参ります」
二人の王子はマントを靡かせ、書斎を後にする。
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「エル! 止まらないで、動き続けなさいっ!」
「くっ! 言われなくても分かってるよ!!」
ミスカと一対一の組み手をやり始めて半年。
思っている以上、成果が出ていると自分で感じる。
相手の呼吸や思考、癖を見切り、反撃をする。
だが、ミスカとの差は雲泥。
いまだに手加減をされている。
「ほらっ、後ろがガラ空き!!」
ミスカは俺の背後に回り込むと足首を蹴り、バランスを崩す。
「あがっ……!」
俺はなんとか体勢を維持し、急いで振り返る。
!?。いない……
「だから遅いって、言ってるでしょ!!」
すでにミスカはその場から飛び上がり、次の一手を決めていた。
「やばっ……! あれが来る……」
すぐに避けないとこのままじゃ、やられちまう。
しかし、すでにミスカの落下を避けれる暇など無い。
くそっ、せめてガードを……。
ミスカの右足の踵が受けていた手首を押し退け俺の右肩を抉る。
「がっ……!」
地面に衝突し、俺は倒れ、ミスカは華麗に着地する。
「ふぅ、『落華星石』の対処はまだまだ爪が甘いわね。糖尿病になっちゃいそう」
『落華星石』
隕石の如く落下し、相手の肩を押し潰す技だ。
組み手の初日に食らった技には名前が無かったが、この技にはしっかりとした技名が存在する。
ちなみに初日の最後に食らったフェイントには名前があるらしく、『朧』と言う厨二臭い名前だ。
「他の技なら見切れるようになったのに、その技だけは何故か見切れん」
「見切られてたまるもんですか。たった半年でそれ以外の技をマスターされて、こっちは格好がつかなくなるのよ」
地面から体を起こし、手をついて座る。
「ちょっと休憩しようか」
ミスカはそう言い、庭の椅子にもたれかかる。
「母さん?」
「ん?」
優雅にティータイムを嗜んでいるミスカに俺はずっと前から気になっていたことを尋ねる。
「母さんって父さんといつ出会ったの?」
「ぶーーー!! な、なんで今聞く!?」
口に含んだお茶を全て吹き出し、いつにもなく動揺すると、白い髪を梳き始めた。
「子供のエルには教えませーん」
「ケチんぼ。じゃあ、いくつになったら教えてくれるの?」
「あんたは一生私の子供よ。教えないわよ」
流石に息子に自身の甘酸っぱい恋バナは教えてくれないか。
ミスカの耳も赤くなってるし。
「やばいよぅ! やばいよぅ! 大事件だよぅ!ミスカさん!!」
唐突に知らないムキムキマッチョのおじさんが家の庭に入ってくる。
「どうしたのよ。猟師B」
あぁ、収穫祭で初めて会った3人組の一人の人か。
「猟師Bって、ひどいよぅ! 俺はビーだよぅ!」
B さんは慌てている様子なのにしっかりとツッコミを入れる。
「で、要件はなんなの?」
「そうだよぅ! やばいんだよぅ!」
「なにが?」
ミスカが聞き返すとBは息切れをしながら返答する。
「西のブリタリ湖にクソデカい魔獣朧が出たんだよぅ! しかもそいつ龍魔獣朧なんだよぅ!」
「まじゅうろう……」
ミスカもそのヤバさがわかるのか、顎に手をつけオウム返しをした。
「今、ブリタリアの人らが頑張って押さえてるよぅ! でも時間の問題だと思うんだよぅ!」
「それはやばいわね……」
そんなにやばいことなのか……。
その龍魔獣朧とか言うやつは。
「この村も龍魔獣朧に滅されちゃうよぅ! なんとかしてよぅ! ミスカさん!」
両手を合わせたBは頭を下げる。
「分かったわ。で、龍魔獣朧って誰よ」
いや、知らんのかい!
「知らなかったのよぅ? とにかくデカくて強い水中のドラゴンだよぅ」
ドラゴン!?
なんて、かっこいい言葉だ!
会ってみたい。
「水中のドラゴン!! それは魚みたいなものよね!」
「よぅ? 多分魚に近い龍だと思うよぅ」
少し困った顔をしながらBは答える。
「いくわよ! 今日は魚料理だー!!」
「ドラゴンー!!」
叫びながら俺らは森の方へと走り出した。
「龍魔獣朧を食べるきかよぅ。ちょっと怖いよぅ」
あっという間に遠くなった俺らを見てBは、そう呟いた。
「絶対に、ビワ村は死守しろー!!」
ブリタリ湖中に響き渡る声は兵士たちの士気を上げた。
「うおーーー!!」
龍魔獣朧の猛攻を大きな盾を持った大柄な男たちが押さえ込み騎士隊が腕を集中的に切り込んで行く。
「ダメだ! 全く刃が入らん!」
「魔術隊! 一斉攻撃!」
一人の騎士がそう嘆くと指揮をとっていたスキンヘッドの男、ガンゾウが龍魔獣朧に大きな剣先を向け指示を仰ぐ。
「赤く燃える紅蓮、熱く焼ける陽炎。ヴァレイの炎は絶えず燃える『アーピアラ!!』」
すぐさま魔術師たちは詠唱をし、杖を龍に向け炎魔術をぶっ放す。
その衝撃で龍は少しよろけ、火傷を負う。
「まだだ! 押し通せ!」
絶え間なく魔術師たちは詠唱を繰り返し、炎の槍を龍の喉へ撃つ。
すると龍魔獣朧は危機意識なのか、それとも別の意味なのか湖の奥底へ潜る。
「───っ!」
瞬間にして、湖周辺が光に包まれる。
「やばいっ、全員ビワ村を守れぇ!!」
指揮官の声が聞こえたのも束の間、龍魔獣朧は水面から飛び上がると、デカい口をかっ開き、光の元凶である魔力の塊を村方面に向ける。
魔術師は出来るだけ頑丈で大きな壁を土魔術で生成し、タンクたちは防壁の前にて立ちはだかろうとする……が、間に合うはずもない。
龍が飛び上がり0.2秒の出来事、龍は最大限の魔力波を村に向け──
「押し流す龍水よ、重力は閑却され、疾走し、瀑布となれ『アクアバーン』」
突如として現れた昇る滝により、龍の顎が締まり魔力の塊が暴発する。
「……何がおこった、」
龍魔獣朧はその威力をモロに受け、下顎が湖にボチャンと落ちる。
「レスト・ブリタリア。只今見参!!」
その場にいる全ての兵士達はその声の発生源をみる。
「レスト王子っ……」
指揮官のガンゾウは涙目になりながら、微かな声でそうこぼした。
「みんな、よく耐えた。ノストも良い魔術サンキュー。ここからは一斉攻撃だっ!!」
「「ウオォぉーーーー!!!」」
王子二人の後ろから大人数の援軍が猛獣の如く雄叫びをあげ、駆けてくる。
「我が領土を守り切るぞ!!」
レストは剣を引き抜き、顎がすでに治りかけている龍魔獣朧に向ける。
「突撃ぃーー!!」
俺とミスカは森の中を、颯爽と木々を飛びながら走っていた。
「母さん、ブリタリ湖ってどんぐらいかかるの?」
「んー、普通だと半日ってとこかな。ま、ブリタリア領都よりかは少しだけ近いから、走れば1時間で着くんじゃない?」
意外と遠いな。
もっと近場にあると勝手に思ってた。
「一番近くて危ないのはブリタリ湖に隣接してるビワ村、下手したらもう壊滅してるんじゃない?」
「不謹慎だ」
それにしてもドラゴンか……。
非常にカッコええ奴なんだろうな。
楽しみだ。
興奮しすぎて涎が出てきた。
「エルも楽しみなのね」
まさかミスカもドラゴンのかっこよさに共感できるのか!
「どんな味がするんだろうね」
ですよね。
食べることしか考えてないですよね。
ミスカの後ろを走っているから、ミスカの涎が降りかかって来る。
「うえっ……」
僕らが援軍として来てどれだけの時間が経ったのだろうか。
今だこの龍に致命的な攻撃を与えられていない。
なんせ、やっとの思いで切り落とした腕がほんの数秒で生え替わる。
そもそも切り落とすのも僕が持っている魔剛製の剣でしか刃が入らない。
「魔力波くるぞ!!」
そしてなんと言っても厄介なのが、一定量のダメージを与えるとすぐに湖に潜り、全回復をした後魔力波でのビーム攻撃。
そのつどノストが『アクアバーン』で龍魔獣朧の下顎を砕きカバーをしている。
だが、それもすぐに再生し、再び暴れ出すから苦戦を強いられる。
「くっ……、このままじゃシーソーゲームと変わりない」
作戦を即興で作り上げなければノストの魔力が切れ、僕たちの敗北が決まる。
「ノスト! 次こいつが湖に入る瞬間、魔術で足止めをしてくれ! そろそろ決める!」
こくりとノストが頷くと魔力を杖に込め、詠唱する。
「ノストの足止めで蹴りをつけるぞ!」
僕はそう叫び兵士達の士気を上げ、龍魔獣朧の腕を切り落とす。
「廻りは廻向し、潤いは凝固する。結氷は全てを絶ち、遷延させる」
ノストの魔術詠唱が完成する。
「ダメージを与え続けろ!」
僕と騎士達は龍の尻尾や腕、胴を切り刻み、魔術師はできるだけ高火力の魔術を打ち込む。
「ギャァァァァ!!」
龍魔獣朧は雄叫びを上げ水面下へと潜ろうとする。
「今だ! ノスト!!」
「『アイスバーン』!!」
ノストの叫びで湖一帯、氷で覆われる。
「畳みかけろぉ!!」
剣先を向け指示を仰ぐ。
「「しねぇーー!!」」
僕は龍の懐へと駆け、真上、高く高く垂直に飛ぶ。
「恨みはお前には無いが、領民の平穏のためだ。ここで殺すっ!」
持っている剣を鞘に納め、呼吸を整える。
「くらえ!『グレイライト流奥義、飂獸居合』!!」
鞘から剣を引き抜いたその刹那、龍魔獣朧の口が開き眩しく光る。
は……?
魔力波?!
水面下での回復なしの魔力波。
それはブリタリア兵も、王子二人も、誰も予測していなかったイレギュラー。
咄嗟に居合いの型から防御の構えに変える。
「───っ!」
龍魔獣朧から放たれた魔力波がモロで剣身にあたり刃が砕け、その衝撃で数十メートル先のノストの近くに生えている木にぶつかる。
「──がはっ……!」
「レスト王子!」
慌てたガンゾウが僕のそばに駆けつける。
嘘だろ……、この剣金貨2枚もするんだぞ……。
それをこんな木っ端微塵に……。
「ぐっ……」
立ちあがろうとすると右足に力が入らず地面に倒れ込む。
「足の骨が……」
「無理しないでください! 今すぐ応急処置しますから!」
ガンゾウが手のひらを僕の脚に向け回復魔術を発動させる。
「僕はいい、早くみんなを……」
龍魔獣朧はこの須臾を逃さなかった。
水面下での全回復、あえてのパターン化した攻撃方法。
それ全ては今、ここでの反撃手段のブラフ。
その全ては今、ここでの勝負の決定打。
そしてそれはインターバル無しの魔力波。
もう一度眩い光を発しながら僕とノストのいる方向を睨む。
「逃げ───」
「総隊王子達を守れぇー!!!」
僕の声を遮りガンゾウが叫ぶ。
近くにいた騎士、タンク、魔術師はそれぞれ王子の前に立ちはだかり、肉の壁を作る。
「何やってんだ! 僕はいい! 早くノストを連れて逃げてくれぇ!!」
だが、俺の声は彼らには届かず皆覚悟を決めた顔をして龍魔獣朧を睨み返す。
「なんで……、なんで……皆逃げない……」
龍はここで全員殺すため、今までの魔力波のチャージを遥かに超えるほどの魔力を溜める。
クソっ、これが実の弟を悪魔呼ばわりをし、迫害行為をした罪なのだろう。
ツケが回ってきたんだ────
「何言ってるんですか。王子達は死ぬのが仕事じゃないでしょう。王子達は民衆を導くのが仕事。なら、私たちは民衆を守り、喜んで戦死する。それを誇りにしてるんです」
ガンゾウはニカっと笑うと目線を戻し、険しい顔に変わり、自ら先頭へ躍り出てでかい剣を地面に突き刺す。
────もし、もしも神が今見ているのなら、全ての天罰は僕が受けよう。
死よりも辛いことを進んで受けよう。
だから、だから、今僕を守ってくれている兵士達、ビワ村の人達、我が弟を救って下さい。
龍魔獣朧は最大威力の魔力波を溜め切り、肉壁に向けて放った。
終わった……。
ここで僕らは死ぬしかないんだ。
ゆっくりと僕は目をつぶる。
すると遠くからものすごい速さで足音が聞こえてくる。
「エル! 急げぇー!」
「うおーーー! ほんもんドラゴーン!」
その足音はどデカい爆発音を生み地面が揺れる。
なんだ……、誰かいるのか……。
僕は閉じた瞼を再び開ける。
次に見たのは無惨に散りゆく兵士達……ではなく、高く飛び上がり、宙を舞っている白髪の女性。
そいつは龍魔獣朧の額目掛けて踵を落とし、龍を氷の湖に叩きつける。
「!?」
「間に合ったっーー!!」
今回チラッと魔剛製が金貨2枚ってレストが言ってますが、金貨3枚で城建ちます。
ちなみに金貨以外にも貨幣が存在するらしいです。
アズレット通貨というらしいです。
これがアズレット通貨
↓
金貨 100万
↓ 金貨の1/5
銀貨 20万
↓ 銀貨の1/20
聖貨 1万
↓ 聖貨の1/5
銀玉 2千
↓ 銀玉の1/20
聖玉 100
↓ 聖玉の1/2
銅貨 50
↓ 銅貨の1/2
銅玉 25
右の数字は分かりやすくした数値です。
ゲールの給料は聖貨2枚って愚痴ってました。




