第八十八話 来栖と華花実の修行(二)
三日目、変わり目が出てきた。
「ふっ!」
来栖が矢を振り落とした。
「やっと対応できましたか」
(これは少し上げてもいいかな)
その心の声、華花実は拾っている。
(強くなる)
(分かりました)
それを来栖に伝える。
でも聞いたところで対応できることはなく…
「くっ」
だが、次の日にすぐに対応可能となった。
その間、無理やりに華花実を気にしないようにしていた。
そのためか、華花実にも攻撃が当たるようになってしまった。
それでも華花実は我慢した。
今だけは気にしないで欲しいと。
そして来栖は少しずつ変わっていく。
それは来栖が分析したことを『確率』に含めることを可能した。
さらに塞がれていたかのように気配察知が可能となった。
ただまだ不十分だと来栖は思っていた。
これは蓄積された情報の上で対応している他ならない。
だから変えた…確率を。
『確率変動』
来栖は確率を変えた。
その能力はまだ未熟だが、それでも+−10%変えることができる。
つまりは矢を振り落とすのに確率を上げ、身体に当たりそうになると下がる。
まぁ、相手が相手なのでその効果も下がってしまうのだが、その変える幅が広がれば広がるほど強くなる。
「はぁぁぁぁ」
来栖は槍を投げる。
森の中を飛んでいき、一矢がいた木の上に刺さった。
(適当に投げたと思ったのにこんなにも正確に…)
一矢は驚いていた。
確かに来栖は適当に投げた。
別に一矢に向かって投げた訳ではないのに。
それは何故か。
それは対象を一矢にし、当たるように確率を上げた。
まぁ、100%という訳じゃないし、頑張っても20〜30%しかないから当たらない。
でも、方向とか付近とかに行く。
だから、一矢のいた木の上に刺さった訳だ。
「今日はこの辺にしましょうか」
来栖は槍を投げてしまったので、続行不可能と判断した。
どちらにしても一矢は来栖を合格とした。
しかし、華花実は六日目まで変わらなかった。
限度となる七日目。
力を身につけた来栖は華花実を守ることも難しくなくなっていた。
それで問題の華花実は何もしていなかった訳ではない。
能力は変わりつつあった。
能力で一矢の位置を分かっていた。
でもそれは求める答えではない。
それでは来栖のサポートでしかならない。
求める答えは来栖の隣に立つ存在になること。
つまりは敵に通用するような能力。
(どうせ聞いてると思うけど、貴女まだ気づかないの?)
一矢は心の声で華花実に話しかけた。
華花実はビクッとする。
(ごめんなさい。貴女の能力は知ってるけど、貴女の声が聞こえる訳じゃないよ)
事前に華花実の能力を知っていたために言ったからであって、別に一矢が華花実の心の声を聞こえる訳ではない。
(少し間、貴女には狙わないわ。今から貴女に二つほど助言を言うわ)
そう言い、来栖に集中的に狙う。
「今から来栖さんしか狙わないから、華花実の方は気にしなくてもいいですよ。でも、少し変えます」
その瞬間から来栖に向かって同時に二本や三本と飛んでくる。
来栖は最初こそ信用していなかったが、すぐに自分に向かっている分かり、華花実から離れる。
この方が万が一華花実に当たらないだろうと言う判断。
一矢は来栖についてはもう単純に戦闘能力を上げるだけで十分だと考えて、このようにしている。
(では一つ目。一つ目は貴女の能力についてです。事前で『解放者』の者が調べたところ『テレパシー』だと聞きました)
調べたなら華花実が『テレパシー』だと分かるだろう。
それについて何かあるということだろうか。
(ですが、残念ながらそれは違う可能性がありました。正確には『テレパシー』は能力の一つなのではないかとこちらは判断しました)
もちろん、本人や来栖、迅澄達、先生方が『テレパシー』だろうと判断し、現状ではそうとしか考えられていなかったからだ。
それを『解放者』の者達は調べた上で違うと判断したわけだ。
(『テレパシー』という能力は「自分から相手に心の声で話すことができる」、「自分が許可した者と話し合えることができる」、「自分は相手の心の声を聞くことができる」。あとこれはどうか分からないけど、「相手の話している声を聞くことができる」の四つとなります)
華花実の能力である『テレパシー』は最初の二つが意識的、三つ目が無意識に、四つ目は三つ目の延長のようなものになる。
(これは今までに考えられていた能力でしたが、貴女がアメリカにいた時、敵である『母の元に』の者に対して貴女は使ったのです。『テレパシー』ではあり得ない能力を)
それが起きたのは深具が『シャドーサークル』を使い、太助と小雨を閉じ込めた時に迅澄達はそれを破壊しようとした。
一人だけ華花実は参加することはできなかった。
何故なら攻撃手段がなかったから。
しかし、あの時華花実は深具の思考に入ったと言った。
そのことだろうか。
(あの時、貴女は敵の思考に入ったと言っていたと聞く。それがどう感じなのかは本人である貴女しか分かりません。ですが、それにより敵は一瞬とはいえ、動きが止まりました。それを考えると思考を止めたということになる)
そこで何があったのかはやった本人しか分からないと思うが、そこから何があったかを推測しているのだろう。
(思考とは考えること。人は何をするしても思考は必要なことです。それがなくなれば「無」と同じとなります。つまり、あの時思考を止められた敵は次に行動することを考えることもできず、さらには行動する電波を身体に送れなかったということです)
一瞬とはいえ、思考を止められて行動できなかったということなる。
でも、その説明を聞いた華花実は説明が難しくて理解できていなかった。
(う〜ん、ちょっと難しかったかな。まぁそうね、簡単に言えば相手の思考に潜り込むことができ、もしかすると止めること以外に操ることもあり得るかもしれません。もし、あったら怖い能力ではありますが)
そんなことができてしまえば、怖く危険な能力となってしまう。
だって誰だって可能な訳ですし。
(でもその代わりにリスクもあると思われます。何故ならそんな能力を何回でも使えるとは思えないので、実際に倒れたとも聞きましたから)
強い能力にはリスクは付き物。
何回も使えることになれば思い通りになってしまう。
リスクが大きいなら使わない方がいいと思う。
そう考えるとどうしようとしているのか。
危険なら教える必要はない。
(リスクを負うくらいなら使わない方がいいとこちらも思ったのですが、自衛として使うべきではないかと判断された。それに使い方次第でリスクを減らせる可能性がある。そうすれば戦うことが可能なのではと思いました)
確かに使い方次第でリスクを減らせるなら、華花実にも戦う術があるのかもしれない。
(ですが、こちらもどのように発動するのかは分かっていません。仮に発動してもまた倒れてしまえば難しいかもしれません。どうするかは貴女次第と思っています)
まぁ、その能力自体はまだ分からない状態でどのようにしたらいいのかは分からないのだろう。
それにまた倒れてしまっては意味がない。
それでも『解放者』が教えたということは使って欲しいとは思っている。
使うかどうかの判断は華花実に託したのだろう。
(能力についてはこの辺にして、二つ目に入りましょう)
一矢は一つ目を終わらせて、二つ目を言い始める。
今回は来栖の新能力と華花実の能力についてですが、来栖の方はこんな感じでいいかなと思っています。
華花実の能力はちょっと迷いはありましたが、こんな感じになるのかなと思っています。
能力自体は強い。
熟練度の壁も(あまり)ないです。
()であまりって言ってるのは前話で熟練度の壁は数値化できるものが下がると言っていましたが、段階的な能力も入れる方がいいのではと思っています。
そう考えると華花実の能力は身体に送られる電波を部位ごとに分けて、遠いほど送られにくく、熟練度の壁があると頭、首、胴体、腕と腿…の順番に阻害されにくい。
リスクがあっても使えるだけでも強いすぎるのかなと少し思っているので、もしかすると採用するかも。
次話は一矢の二つ目の話からになります。
一矢が話す二つ目とは何か。
華花実は思考を止める能力を使うのか。
来栖が前に進むのに対して華花実は前に進むことができるのだろうか、そして一矢から合格は貰えるのだろうか。




