1. 恥の多い生涯
別に恥の多い生涯を送ったわけではない。私は人間の営みというものを、実によく理解している。幼い頃、周りの大人たちはいつも人生の価値を説いていた。家族、愛、夢、名誉、金。語られる価値は人それぞれで, たとえそれが品のないものであったとしても、私にとっては人間が多様な価値を追い求めるということ自体が不思議でならなかった。
だから、私もできればその『価値』ってやつを見つけられるよう願っていた。まあ、それが叶わなかったからこそ、結果的にここにいるわけだけど。
「それで, どうしてあの村へ向かっていたんですか?」
助手席に座っていた女性が私に尋ねた。
「ただの……好奇心、といったところでしょうか」
「変わった方ですね」
女性はくすくすと笑った。彼女は運転席の男性にお菓子を食べさせながら言った。
「物騒ですよ。女性が一人でこんな道を歩くなんて」
私は「レテ」へと向かう途中だった。郊外でバスに乗り、しばらく揺られていると見知らぬ田舎で降ろされるのだが、そこからは通行が禁止されている。そのため、見捨てられた道路を延々と歩いていたところで、この二人に出会ったのだ。
「危ないのはあなたたちも同じじゃないですか。こんなに堂々と車で来るなんて. 見つかったらどうするつもりです?」
「はは、ただの脅し文句ですよ、そんなの」
運転中の男が口を開いた。
「あの廃墟と化した都市がどれほど広いと思ってるんです。あそこをこっそり出入りする人間を一人残らずチェックしてるわけないでしょう」
私が何も言い返さないので、疑っているとでも思ったのか、男はこう続けた。
「こう見えても、僕と彼女はオカルトの専門家なんです。ここを訪れるのも、もう六度目ですよ」
だから私の隣にカメラの部品が置いてあるのか。どうやら、こうした場所を渡り歩くのが彼らの仕事であるようだった。彼らは私もまた、自分たちと同じような理由でレテを訪れるのだと考えているようだった。
「レテ」
もともと計画都市だったこの場所は、本格的な移住が始まる前に突如閉鎖された都市であり、その理由が明確にされていないため、あらゆる陰謀論の中心となった場所だ。地下に秘密施設があるだとか、社会実験が行われているだとか……。
私は、自称オカルト専門家コンビをちらりと盗み見た。そうだ。いかにもこの手の人種が好みそうな場所だ。しかし、私はそんな目的でレテに近づいているのではなかった。私は自分の目的を果たすための道具が入ったカバンにそっと触れた. オカルトなどと一緒にされて誤解されるのは心外だが、あえて説明する必要もないだろう。
それでも、この二人のおかげで、本来なら延々と歩かなければ辿り着けなかったはずのレテに、すぐ着くことができた。私は車から降り、レテを見渡した。オカルトコンビは、どんよりとした曇り空と調和するこの奇妙な光景に見慣れているのか、カメラを取り出して組み立て始めた。女性が私に話しかけてきた。




