時にはバカも風邪をひく
体育祭を控えた日曜の朝のことや
「ハックション! ……あかん、風邪ひいてもたで」
(もうすぐ体育祭やから、気合入れな思うて水風呂に入ったのが悪かったんかな?)
とりあえず寝ようとした時、太郎との約束を思い出して電話をかける
「もしもし、太郎か、わいや……」
「声、ちょっとおかしいけど、大丈夫?」
「あぁ、すまんな、ちと風邪ひいたみたいや」
「熱は有る? ……見舞い行こうか」
「かまへんかまへん、熱は大した事ないし……おかん居るから、見舞い来んでも大丈夫や」
「うん」
「……すまんな、昼から会おて、わいから誘ったのに、すまんな」
「別にいいよ、それよりも早く治るように祈ってるよ」
「ありがとな……ほな、今から寝るわ」
これで良しと、目を閉じて、ええ感じに寝とったら……玄関の呼び鈴が鳴った
起き上がろうとする前に、おかんの足音と、玄関を開ける音がした
「は~い……ってあんただ! ……」
靴やら何やらが、ばたばた落ちる音がした!
ただ事や有れへんと、急いで起きて、部屋のドアを開けた
「おかん、どないしたんや、大丈夫か!」
「だっ、大丈夫やで、そやから、降りて来んでええで、ちゃんと寝とき」
「うん、分かった」
部屋に戻って、さっきの事が気になって横になっとったら……今度は、台所から、いそいそと料理をする音が
(あんまり匂い無いな、おかゆか……こないな時でもわい、肉ほしんやけどな、しゃあないか)
と、少し香ばしい焦げた匂いが
「わぁ!」
おかん? いや、なんか聞き覚えのある声したけど……多分おかんやろう、人って驚いた時って、いつもと違う声、出るからな
目を閉じて、ちょいうとうとし始めた時、にかぎって……おかんがドアをノックする
(昼飯作ってくれたんか)
「おかんか、今起きるわ」
立ち上がったと同時にドアが開いた……で、顔を上げたわいは、びっくり仰天や!
「真弓ちゃん! なんで」
「太郎君からメールが来て、風邪だって」
「なんで」
「なんでって……あたしと、太郎君と、あんた、三人で遊ぶ約束してたでしょ?」
「いや、そんな約束、わい、して、して……してたな! すまん、忘れとった」
「だと思った……まったく」
「もしかして、見舞いに?」
「それ以外なんに見えるって言うの」
「弱ってるわいにとどめを」
「するわけないでしょ……もしかして、してほしかったの?」
「いやいや」
「体育祭で負けた時、体調不良が原因なんて、言い訳聞きたくないからよ……でも意外、あんたも風邪ひくのね」
「どういう意味や」
「だって、バカは風邪ひかない、って言うじゃない」
「あぁ、いうとおもった……ってそれ、おかんの飯、持ってきてくれたんか?」
「これ、あたしが作ったの」
「えっ、やっぱとどめさしに来とるやないかい!」
「失礼な……食べさせてあげないわよ」
「すまん、すまん、冗談や……ありがたくいただきます」
テレビの前のテーブルに置かれた土鍋を見て、座って思う
(そういや、おかんや、近所や親戚のおばちゃん以外で……女の子の手料理なんて初めてやな)
ふたを開けてまたびっくり
「これ、なんちゅう料理?」
「雑炊よ……ちょっと失敗しちゃったけど」
(一瞬、変わり種の炊き込みか、おこげご飯と思た)
「ありがとうな……いただきます」
まずくはない、しかし、その複雑な、筆舌に尽くしがたい味に箸が止まってしもた……もちろん真弓ちゃんが、それを見過ごすわけなく
「ごめん……おいしくなかった? ……だったら食べなくても」
(なんや、その弱気な声は、言葉は……似合わん)
「いや食う! たしかに旨くはない……けどな、わいの為にわざわざ作ってくれた、その気持ちがこもっとると、思うだけで、嬉しいんや」
ただ、とにかくがっついとる、わいに、真弓ちゃんが笑いながら、言葉を返す
「何顔に似合わない事言ってんの……あっ、風邪ひいてるからか」
「うるさいわい…………おし、まぁうまかったで、ごちそうさん」
「おそまつさま……それじゃ」
土鍋をのせた盆を持ち上げ、そのまま部屋を出ようとする真弓
「もう帰るんか?」
「うん、うつされなううちに帰るわ……もしかして寂しいの?」
「そんなわけあるかい!」
「ははは……風邪、ひどくなくてよかった……それじゃ、また学校で」
「おう、おうきにな」
下から何か、話し声とか、笑い声が聞こえる
(下で、真弓ちゃんとおかんが、何か話しとる……変な事しゃべらんといてや)
気になるけど、今すぐ降りて行きたいけど……我慢して布団かぶって、まるうなる
玄関が閉まった音が聞こえてすぐ、おかんが駆け上がってきて、「なあなあ、あの子誰よ、お父さんには言わへんか」て、わいに根掘り葉掘り聞きに来たのは
言うまでもないわな
しかし、真弓ちゃん、ほんま厄介な女屋で…………ほんま!
読んでいただき、ありがとうございます。
『山田太郎たちの恋物語・Boys Meets Girls?』
第三十四部『時にはバカも風邪をひく』
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by.メガネ君(作者)




