九十一話
「貴方の眼は、空虚に見える。怯えと絶望とか、そういうもの。犯罪者じゃない。桐葉ちゃんは、何を恐れてるの?」
そんな目の人が、計画なんて遂行したって無理に決まってる。
楓はただ憐れむように桐葉を見つめた。
……気に入らない目だ。歯を食いしばり、感情の高ぶりを鎮めようとする。
「うるさい。黙らないと刺すわよ」
鞘を抜き取り、ギラギラした刀身を見せても、楓には無意味だった。
「だけど、貴方はどうなるの? 仮に計画が成功したら、貴方はどうするつもりなの」
「それは……」
言葉が出てこない。
「それは?」
「その時はその時。もう黙って」
「やだ」
「殺すわよ!」
声を荒らげ、ナイフを一閃した。宙を切り、風が唸る。
人生で二度目だった。ここまで声を荒らげたのは。それほどまでに楓の言葉は魔法か何かのように鋭かった。
「貴方に私の気持ちなんてわからない! しゃあしゃあぬかしてんじゃねぇババァ!」
「分からないわ。だけど知ろうとすることはできるはず」
イライラする。その憐れみを込めた眼差しが。何もかも見透かしているような目が。いつも誰もが向ける私に対し恐怖を持つ、その目をなぜお前はしない!
「過去に何があったの? 教えて」
「知るか!」
空き教室から出る。心臓がバクバクと音を立てている。ありえない。この冷静な私がここまで取り乱す結果になるなんて。
まあいい。どうせ拘束されている。私の計画には邪魔にならないはず。桐葉はそう念じるように繰り返し言う。
「……兄さん」
失敗なんてありえない。
仇をとるんだ。
十二月八日。
私の計画〈復讐〉は完結する。




