八十話
時刻は遡る。昼を過ぎた頃、真樹は家にたどり着いた。そこまで歩いたわけではないはずなのだが、どっと疲れで制服のままベッドに転がった。
ポケットの中で紙が擦れる音がした。桐葉のバッグから取り出した、ぐちゃぐちゃになった紙を取り出す。
「つい持ってきちゃったけど、何が書かれているのだろう」
開いてみると、そこには過去学校であった事件について書かれていた。翠や隆幸のものではない。初見の事件。
そう言われれば、隆幸が四ページの事件が記載されている紙から、二ページ目が抜け落ちていたと言っていた。……まさか。
『五年前、三度目の事件が起こった。狙われたのは今岡仁という三年の男子生徒。彼も肝試しで一年四組に侵入し、そして首をつった女の霊を見たという。病弱な体質だったからか、呪いに耐えられず数日後に投身自殺。打ち所が悪く病室で死亡した』
今岡仁。初めて見た名前だ。
抜き取られた紙を桐葉が持っていたということは、破り取ったのは彼女と言うことだ。何のために? あの冷酷無比な桐葉が隠したがるほどの人なのか?
それに。
真樹はわずかに眉をひそめた。
桐葉は間違いなく福田先生の弱みを握っている。ゲームというのもわからない。そのままの意味なのか、何かの比喩なのか。
「御堂さんにも連絡しておこうかな」
ひょっとしたら、何かが分かるかもしれない。そう思って真樹はラインに送ろうとしたが、なぜか隆幸のライン画面が表示されなかった。スクロールしてみたり、やや強くタップしてみるも、全く開けられない。
「どうなってるの?」
試行錯誤したものの、結局最後までつくことはなかった。別手段で隆幸に連絡を取ろうかと考えたが、電話番号も家も知らない。ライン画面が出ない限り、彼とは接触できない。
真樹はちらりとカレンダーを見ると、一月六日。明後日の八時。何かが起こる?
なぜか隆幸との通信手段を切られたのも相まって、漠然とした嫌な予感が胸を燻った。




