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七十四話

 一方真樹は学校に向かっていた。時刻は十一時を回っている。寒いし、普段ならちらほらいるはずの、制服を身につけた生徒がいない。本当に休みなんだな、と実感する。

 そんな高校に行く理由は、たった一つしかない。

 保高桐葉と話すためだ。

 呪いに関連しているならば、何かしら手立てが見つかるかもしれないという淡い希望を持っていた。

 どうせ彼女は資料室にいるだろう。ならば直接赴けばいい。

 「早く行こう。……ここは凍える」

 一層早歩きで、真樹は学校の校門をくぐった。


 数日ぶりの学校は閑散としていて、教室のほとんどは消灯していた。廃校のような静けさの中、時折思い出したように教員とすれ違った。

 空は暗雲としており、今にも雨が降り出しそうだ。暖房も利いてないため、マフラーはそのまま付けておく。

 資料室の電気はついていた。予想通り桐葉はここに訪れたのだろう。

 しかし、桐葉の他にもう一人いるようだった。ガラス張りの窓からちらちらと二人の人影が見え、おまけにぼそぼそと会話が耳に入ってきた。

 「どう言い訳しようが、諸悪の根源は先生、貴方です」

 歌うように、女性――桐葉は手前にいる男に言う。

 「この呪いの根源は二十八年前の自殺が原因です。怨嗟は霊魂となり一年四組にとりついた。それを止められなかったのは、紛れもない罪ですよ、先生」

 「それはもう何度も悔いた。……夢に出てくるまでにな」

 しゃがれた声で頷いたのは、福田先生だった。背中越しだけれど、その掌は固く握りしめられ、赤く充血していた。


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