六十一話
しかし、体に何かが入った気がしたとは、一体……。
「それ以外にも、机のはさみが飛んできたり……手首の傷もその一つだ」
手首に張られたシップを見せてくる。
「カーテンで外と遮断していたのは視線を防ぐため?」
「ああ。意味はなかったけどな。真樹の呪いは感染していく物なのかもな」
「じゃあ、私――」
一真以外の友人の顔がよぎる。彼らも真樹と同様の呪いを受けているとしたら……。
「他の連中には目立って変わったことはなかった。ひょっとしたら、呪いのことについて話した人間だけに感染るのかもしれないと睨んでる」
一真は真樹が言おうとしたことを察した。なるほど。確かに霊障は一真や隆幸らにしか及んでいないし、他のクラスメイトには実害はない。
桐葉は?
不意に思い出す。桐葉も呪いに関連してるし、真樹の状況も知ってるはず。あんな澄ました顔をした彼女もひょっとしたら……。
「だけど真樹。お前も気をつけろ。とにかく、自分をしっかり持て」
「うん。ありがとう、一真」
真樹は心の中が暖かい物で満たされていくのを感じる。彼は、こんなことになったのに本気で心配してくれる。
「……好きだよ、一真」
「ん? どうした?」
「なんでもない。じゃ、そろそろ帰るね!」
ベッドから降りると、ギシギシとスプリングが音を立てる。顔が熱い。
「おう。また来てね」
「うん。……ありがとう、一真」
真樹は病室を出る。
「絶対に、呪いを解かないと」
一真をこれ以上苦しませない。スマホに表示された、隆幸とのラインの画面。
絶対に、これ以上の絶望を味あわせない。
一真のために。
絶対に。
なけなしの、だけど確かな決意を抱き、真樹は病院から出た。




