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四十一話

 「ねえ、一真」

 「なんだ?」

 目が合う。……どこか無理して笑っているのに、今更ながら真樹は気づいた。口元は確かに口角が上がっている。しかしその目はどこか、ひどく衰弱しているように見えたのだ。

 胸が少しだけ苦しくなった。やめようとした質問を、真樹はせずにはいられなかった。

 「この前、塾の帰り道さ、男の人とぶつからなかった?」

 彼の表情に動揺の色が見えた。ビンゴだった。

 「なんでそれを知ってるんだ」

 「その人とは知り合いだったから」

 隆幸のことについては触れなくたって構わない。問題なのは。

 「その人ね、貴方が焦っていたように見えたんだって」

 「ふ~ん。それが」

 声が上擦った。やはり、何か隠してる。彼は隠し事がとても苦手だ。疑念が確信へと一発で変わる。

 彼と隆幸がぶつかった時間帯は、およそ十時ごろだったという。塾が終わっている時間帯だ。

 「一真……何か、隠してることとかないよね」

 「別にない。どうしたんだ? 真樹」

 隆幸と話した時、一真が電車に遅れそうだったからと説明した。しかし本当は違う。

 彼が通っている塾から帰るのに電車は必要ない。おまけに夜の十時だ、この後に予定なんてあったとは思えない。家の用事ならそれまでだけど、この反応と言い、真樹の中には形容しがたい不信感が渦巻いていた。

 「ねえ、一真。正直に答えて」

 一真のベッドに座りこむと、ベッドのスプリングがギシリとなる。明るいはずなのに、どこか空気が悪い。そんな気がした。

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